Dr.TaCのマンション診察室 /後天性管理不全症候群

この診察室では、マンションで起こっている問題を診察しています。今回の患者さんは、管理組合の理事長に困っているようです。同じ人が長年勤めていると、独裁的な運営になってしまうことはありがちです。それでは早速診察してみましょう。

症状

マンションの理事長ですが、もう8年も同じ人が勤めています。修繕の際に自分の知り合いの業者を使い、他の理事が他からも見積書を取るように提案しても拒否して独裁のようになっています。先日も共用部分の照明をLEDに変更したのですが、総会でも価格が高すぎるのではないかと不満が出ていました。理事長の独裁を止めるには、どうすれば良いでしょうか。

問診票

年齢:築21年
性別:分譲マンション
身長・体重:9階建 68戸
本日はどうされましたか?:理事長による独裁的な理事会の運営に困っています。
症状はいつ頃からですか?:気がついたら、今のような状態になっていました。
過去に手術の経験はありますか?:築14年目に大規模修繕を行っています。
過去に同じような症状が出たことはありますか:なし
治療中の他の病気はありますか:2年後に大規模修繕をするような話をしています。

診察

蛍光灯が生産中止になるということで、共用部分の照明をLEDに交換することになったんです。理事長が知り合いの業者1社だけに見積書を依頼して、総会にかけて決めてしまいました。

他の理事の方は、それで納得したんですか?

他からも見積書を取るように提案する理事もいたのですが、「それなら自分でとってきてくれ」「信頼できる業者かどうやって見分けるのか」などと言って押し切ってしまいました。

そして1社の見積書だけで、総会では可決されたと。

住民の中には別にマンションを持っている人もいて、そちらのマンションのLED化に比べて高すぎるという意見も出ていました。その方は反対したのですが、理事長が押し切って可決してしまいました。

そういうことは、しょっちゅうあるのですか?

はい、前にも排水管の洗浄を行うのに、理事長が知り合いの会社にやらせていました。この時も他から見積書を取るのを拒否して1社だけしか取っていません。

管理会社は何も言わないのですか?

なんというか、管理会社は理事会で決めたことに従いますしか言わないので、頼りにはなりません。

少なくはない理事長の暴走

以前にもこのブログに書きましたが、理事長の暴走は善意から始まることが多いのです。多くの人が理事になるのを嫌がり、強制性がないと拒否をします。そのため同じ人が理事や理事長を何期も勤めることになり、何年もその人がマンションのために自分の時間を割いて活動を行うのです。1期だけならまだしも、何年も自分だけが活動を続けるようになると、なんらかの見返りを求めたいと考えるようになっても不思議ではありません。

また多くの理事は初めて理事として活動しますから、右も左もわからずに理事会に参加します。そんな中、何期も勤めてきた理事長の発言力は大きくなっていき、反対意見も出にくくなってしまいます。そうなると、理事長は自分が支持されていると感じ、独裁色を強めていくようになります。そんなことが続き、さすがにこの状況はマズイと感じた理事が反対意見を言うと、何年も黙って従っていたのになぜ今更反対するんだと激しく抵抗するようになります。

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診察の続き

先程の別にマンションを持っている方は、そこで使っている業者さんを紹介すると言っているのですが、理事長は信用できるかわからないと言って拒否するんです。それで何人かの理事が怒っていて、理事長と対立するみたいなことになってしまいました。

理事長が何かしらの利益を得ている可能性を考えたことはありますか?

総会の時に、そんな話をされている方がいました。理事長が業者からお金をもらっているんじゃないかって。今、理事長に反対している理事の中にも、同じことを言う人がいます。ですが支払いは管理組合が業者に直接払っているので、理事長がお金を抜くなんてことはできないと思うんですよ。

ああ、それは簡単なんです。業者に自分の取り分を含めた見積書を出してもらうんです。例えば業者の見積もりが100万円で、自分の取り分が20万円なら120万円の見積書を作ってもらうんです。そして工事代の120万円が入金されたら、業者から20万円をもらうんです。

それってよくあることなんでしょうか?

ひどい話ですが、案外多いんです。

私のマンションでも、そういうことが起こっているんでしょうか?

それはわかりません。ですが一人が理事長や理事を長年勤めると、そいういうことが起こりやすくなるんです。ですから理事は定期的に入れ替わる方が良いんです。

じゃあ理事長を交代するには、どうしたら良いのでしょうか?

交代してもらうには、理事長に辞めてもらわなくていけません。理事長に辞めてもらうには、いくつかの方法があるんです。

理事長を辞めさせる方法

①理事会による解任

理事長を理事会で解任することはできないと思われていましたが、2017年(平成29年)12月18日に出た最高裁の判決で、理事会で過半数の賛成があれば理事長を解任できることになりました。理事長は解任されても理事として残りますが、最小限の人数で理事長の解任が可能になったのは画期的な判決でした。

②臨時総会による解任

最も基本的な方法です。総会を開催して理事長解任の決議をとります。議決権数の1/5が集まれば臨時総会を開催できるのですが、議長が理事長というのがネックになります。自分の辞任を要求する臨時総会の開催に理事長が協力するとは思えないので、ハードルが高いと思います。

また議決権数の1/5が集まらない場合でも、幹事が臨時総会を招集することができます。ただしその場合には条件があり「管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるとき」とされています。理事長が不正をしているとなれば、臨時総会を幹事が招集できるのです。

③違法行為が明白な場合

違法行為が明白な場合は、裁判所に訴えることになります。裁判所に訴えることで理事長の解任が可能です。裁判所に訴えるのは理事でなくとも区分所有者ができます。違法行為が明らかな場合というのは多くないとは思いますが、最終的にはこのような方法があることも覚えておいて良いと思います。

まとめ

理事長の独裁化はあちこちで起こっている問題です。その根底には、理事のなり手がないという問題があります。多くの人が理事をやりたがらず、何かと理由をつけては理事を断るので、一部の人が何期も理事をやらなくてはならなくなっているマンションは多くあります。何期も同じ人が理事を続けていくと、その人の意見が通りやすくなっていき、やがて独裁を招いてしまいます。理事会は定期的な会議に出席できなくても業務を分担できるような工夫が求められていますし、忙しいという理由で理事を断る人はマンションに住むべきではない時代を迎えています。マンションの住み方や管理組合の考え方を、見直さなくてはならない時代になっています。

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