Dr.TaCのマンション診察室 /飛来落下事故

この診察室では、マンションで起こっているさまざまな問題を診察しています。今回の患者さんは、マンション理事会の理事の方です。隣のマンションからの飛来落下事故が発端で、面倒な住民間のトラブルになっているそうです。

症状

隣のマンションが大規模修繕工事を行っていて、隣の足場から工具が落ちてきた。こちらのマンション住民が怪我をしたが、怪我をした住民がマンション理事会に報告しなかったので、マンション内で揉めることになってしまった。

問診票

年齢:築16年
性別:分譲マンション
身長・体重:14階建 68戸
本日はどうされましたか?:隣のマンションの大規模修繕工事が元で、こちらの管理組合内で揉め事に発展してしまった。
症状はいつ頃からですか?:約2週間前から
過去に手術の経験はありますか?:過去に1度、大規模修繕工事を実施しています。
過去に同じような症状が出たことはありますか:これほどマンション内で揉めたことはありません。
治療中の他の病気はありますか:なし

診察

隣で大規模修繕工事をしているマンションから、工具が落ちてきたのですか?

ラチェットレンチという工具だそうで、長さが30cm以上あるものです。

※ラチェットレンチ

工事中に作業員が落としてしまったのでしょうか?

隣の工事監督さんの話だと、足場の上に置き忘れていたラチェットレンチが、風か何かで落ちたそうです。落ちてきた日は日曜日で工事がない日でした。

落ちてきた工具で1階の住民が怪我をしたんですよね。

落ちてきた工具がコンクリートに跳ねて、専用庭にいた住民の腕に当たったそうです。

謝罪や治療費、保証などはあったんですよね。

工事監督さんと社長さんが謝罪に来て、示談になったそうです。それでこの話はおしまいになったみたいです。理事会には特に報告がなかったので、そんなことが起こってたなんて理事は誰も知りませんでした。

新たな展開

この事件からしばらく経って、2階の住民が管理人にバルコニーの手すりが破損していると連絡してきました。手すりがハンマーのようなもので叩かれたように曲がっていて、現地を見た管理会社も理事長もなぜこんな壊れ方をしたのか不思議に思いました。しかし壊れているのは事実ですし、壊れている部分は共用部なので理事会で補修することを決定しました。

手すり業者が呼ばれて壊れた現地を見ると、すぐに何かが落下して壊れたと思いました。そこで管理人と共に1階に行って隣の工事中のマンションから何かが落下してこなかったか尋ねます。1階の住民はラチェットレンチが落ちてきたこと、それに当たって腕に怪我をしたこと、隣の工事監督から謝罪を受けて治療費と迷惑料を払ってもらったことを伝えます。

診察の続き

ここで初めて理事会は飛来落下事故があったことを知るわけですね。それでどうしました?

管理会社が隣のマンションの工事をしている業者に連絡をとり、壊れた手すりの写真を見てもらいました。管理会社からは破損した手すりの修理代を払ってもらうようにお願いしたのですが、断られました。

なぜ断られたのでしょうか?

ラチェットを落とした日から1ヶ月以上過ぎているので、なぜ今さらと思われたみたいです。老夫婦が住んでいるので滅多にバルコニーに出ないことや、事故があった日は旅行に行っていたので騒ぎを知らなかったと事情を話しても、こちらの破損の責任を押し付けていると思われたみたいです。

それからどうされましたか?

管理会社を交えてどうするか話し合いました。あまり高額ではないですし、すでに修理もしてしまっているので、管理組合の費用負担で終わらせることにし、総会が近いので総会の場で報告することにもしました。しかし総会で一部の住民から、ちゃんと隣の工事会社から払ってもらうべきだという意見が出ました。

理屈としては間違っていないし、そういう心情もわかります。

そして最初に怪我をした1階の人が、管理会社や理事会に届けていればこのような問題にならなかったと言う人も出てきました。

そんな事故があったと知っていれば、管理会社もすぐに点検を行ったし、こちらに有利な話し合いもできたかもしれませんね。

そうなんです。それで1階の方が一部の住民に責められていて、気の毒なことになってしまいました。隣の工事会社に強く出られない理事会や管理会社を責める人もいて、管理組合内で誰が悪いといった話ばかりになってしまいました。

今後どのようにするべきか

ラチェットレンチの飛来落下で手すりが壊れたという証拠になるものがなく、落下した日から1ヶ月以上も経過しているので、工事会社が自分達の責任ではないと言い出したら、これ以上の追及は難しいと言えるでしょう。さらに手すりも既に修理されており、壊れた手すりの状況が写真でしか見られないと言うのも不利な点です。工事会社に支払いをさせるには、管理組合として相手方の責任であることを証明する必要がありますが、それがほとんどできない状況です。

破損状況の写真を見る限り、上から固いもので強い衝撃を受けたことは明らかで、2階の手すりに上方から衝撃を与えるものは隣からの飛来落下以外はほとんど考えられないので、これを否定する隣の工事会社は不親切だとも言えます。しかし決定的な証拠がないうえに状況証拠も乏しくなってしまっているので、交渉は難しいでしょう。弁護士などに相談するという手もありますが、弁護士費用が修理代を上まわる可能性が高いので、現実的ではないと思います。

このような事故があればどうすれば良いか

ここで話題になっているように、事故があったら速やかに管理会社かマンション理事会に報告することをお勧めします。マンション管理組合として相手方に再発防止を求める必要がありますし、他に破損している箇所がないか被害状況の調査を相手に要求することもできます。また破損した部分が専有部なのか共用部なのか判断ができない住民が多いので、後から面倒なことに巻き込まれないように個人で対応しない方が良いのです。専有部だと思って修理をしてもらったら実は共用部で、管理組合から苦情がつくことは十分にあり得ます。

まとめ

マンション内で人身事故というのはなかなか起こらないので、動揺してしまい冷静な対応がとれないことが多いはずです。そこで小難しいことは傍に置いて、とにかくトラブルは管理人や管理会社、理事が知り合いなら理事に連絡しておくようにしましょう。そして誰かに壊されたものは、責任の所在がはっきりするまで修理をするのは待つべきです。証拠がなくなってしまい、賠償してもらえる可能性が減ってしまいます。トラブルが発生した際には1人で解決しようとしないで、管理会社や理事会を頼るようにすれば良いと思います。

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