なぜ飛行機の窓は丸いのか?

今回は窓の話です。マンションの話と飛行機の話ではかけ離れているように思うかもしれませんが、実は耐久性に関して共通する部分があります。本来はマンションの窓も飛行機のように丸くする方が、耐久性が上がるのです。なぜ飛行機の窓は丸いのかを理解すれば、マンションに設置されている誘発目地の重要性が見えてくるのです。

世界初のジェット旅客機

1952年5月、世界初のジェット旅客機がイギリスのヒースロー空港からヨハネスブルクに向けて初飛行を行いました。この飛行機はイギリスのデ・ハビランド社が製造したDH.106で、コメットという愛称がつけられていました。イギリスの威信をかけて完成したコメットは大々的に宣伝され、高高度を高速で飛びながら振動が少ないという、画期的な飛行機として知られました。しかし初年度から事故が相次ぐことになります。

※デ・ハビランド DH.106 コメット

頻発した事故

1952年10月、ローマのチャンピーノ空港で離陸中に失速してオーバーランする事故が発生しました。さらに53年3月にはミャンマーのジンナー空港で再び離陸時にオーバーランが起こり、53年6月にはセネガルのダカール空港で着陸時に滑走路からはみ出して車輪がもぎ取られる事故が起こりました。いずれもジェット旅客機の操縦に慣れていない操縦士のミスが原因と判断されましたが、さらに事故が続きます。

※墜落したコメットの残骸

53年5月、シンガポールからロンドンに向けて飛行中のコメットが、何らかの原因で空中分解を起こしてインドのカルカッタ郊外に墜落しました。さらに54年1月、シンガポール発ロンドン行きのコメットが、地中海上空で空中分解して墜落しました。相次ぐコメットの空中分解に、テロか事故かで航空業界全体が揺れました。

国をあげての事故調査

イギリスの首相、ウィンストン・チャーチルは墜落の真相究明を最優先課題とし、資金を惜しまない考えを表明しました。一説には関係者を前に「国庫が空っぽになっても構わないから、絶対に真相を究明しろ」と命令したとも言われています。このチャーチルの全面的バッアップにより、事故調査委員会は惜しみなく資金を投入して大規模な調査が始まります。

イギリス海軍は「エルバ島作戦」と名付けられた墜落機の引き上げ作業に大部隊を展開させ、英国王立航空研究所はコメットが入るサイズのプールを作り、コメットを水に沈めて良圧が機体に与える影響を実験しました。その結果、これまで航空業界が経験したことのない金属疲労によって空中分解が起こったことがわかりました。

窓が丸くなる

高高度で飛ぶ飛行機は、室内の気圧を上げる良圧が行われるので、飛行機の中と外では気圧に大きな違いがあります。それが急速に金属疲労を起こした原因でした。そして金属疲労は、窓の角から発生していました。まどの角にヒビが入り、それが瞬く間に広がって反対側の窓から発生したひび割れにつながって、コメットの機体はポッキリと折れてしまったのです。

角の部分には力が加わり、そこからひび割れが発生するわけです。これ以降、飛行機の窓は角がなくなり、丸い窓に変わっていきます。現在の飛行機の窓が全て丸いのは、コメットの墜落事故とイギリスが国家の威信を掛けて行った調査結果によるものなのです。

マンションの窓も丸い方が良い

マンションには内外の気圧差もなく、絶えず振動を受けるわけでもありませんが、構造的には丸い窓にした方がひび割れが入りにくいのは明らかです。しかし開閉が必要で、出入りもあるマンションの窓を丸くするのは非現実的なので、四角の窓が使われています。

しかしコメット同様に、窓の角の部分からコンクリートにひび割れが入り、雨漏れの原因となっているのも事実で、竣工から数年が経ったマンションには窓の角の部分にひび割れが生じているのをよく見かけます。ではマンションの窓は、どうやってひび割れ対策を行なっているのでしょうか。

誘発目地が重要になる

窓の角の部分に目地があるマンションは、このひび割れ対策が行われているマンションです。窓の両端に目地を作ることで、ひび割れを誘発して雨漏れを防いでいます。誘発目地に関しては、以下の記事で書いていますので、そちらをご覧ください。

誘発目地は劣化から守る大事な部分

また、コンクリートで壁を作った時に、窓が入る部分の四方にパラテックスなどの防水材を塗布するのも重要です。ひび割れが入っても雨が侵入しないように防水材を塗布し、ひび割れが起こってもシーリング材の下に発生させて雨が侵入しないようにしているのです。

案外行われていないひび割れ対策

このように防水材を塗布し、誘発目地を設けるのはひび割れ対策の上で重要なのですが、行われていないマンションをよく見かけます。設計士によっては目地が入ると美しくないため、入れたがらない人もいます。しかしマンションを長く使うには、誘発目地を入れた方がいいと思うのです。

サッシの上部から雨漏れが発生したら、私はまずこの部分を疑って調査します。そして角のひび割れが原因で雨漏れが起こるケースは、驚くほど多いのです。

まとめ

窓の形は丸い方が良いのですが、マンションで丸くするのは非現実的なので、四角い窓が使われています。そこで窓の角の部分に防水材を塗布し、誘発目地を設けてひび割れが起こっても雨が漏れないようにしています。これらの対策が行われていないマンションも多く、また誘発目地は軽視されがちですが、マンションを長く使うことに関しては重要なことだと私は考えています。

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