アコースティックギターをマンションで弾くんですが・・・

この診察室では、マンションで起こっているさまざまな問題を診察しています。今回の患者さんは、メールを頂いてからzoomで相談を受けました。アコースティックギターの練習を始めてから、騒音の苦情が来るようになり困っているようです。どんな状況なのか、さっそく、診察してみましょう。

症状

マンションでアコースティックギターの練習を始めてから半年ほど経ったある日、ポストにギターの音がうるさいという手紙が入っていたそうです。無記名で誰が書いたのかは不明で、その後はさまざまな防音対策を施したようです。しかし再び苦情の手紙が入り、相手が神経質過ぎるのではないかと考えています。

問診票

  • マンション年齢:築16年
  • 性別:分譲マンション
  • 身長・体重:10階建て 264戸
  • 本日はどうされましたか?:騒音問題で悩んでいます。
  • 症状はいつ頃からですか?:今年の夏頃からです。
  • お薬などは服用されていますか?:防音対策を色々試しました。

診察

コロナ禍の巣ごもり生活が続く中で、学生時代に使っていたギターが家にあったので、もう一度弾いてみようと思ったのが昨年の夏頃でした。

防音対策をしているとのことですが、具体的には何をされましたか?

最初はサウンドホールにカバーをつけました。もともと消音用の道具ではないのですが、ある程度は音が抑えられます。

ギターホールに取り付けるやつですね。あれはハウリング防止用ですから、ほんの少しだけ音が小さくなる程度ですよね。

はい、そこで弱音器というのをつけました。弦をスポンジで挟むような道具です。

それで変わりましたか?

はい、少しは音が小さくなりました。

それでも苦情が来たのですね?

ですから部屋を防音室に変えようと思い、ネットで紹介されていた段ボールで作る防音室というのをやってみました。

それはどういうものですか?

段ボールを短冊状に切って、部屋の壁に凹凸を作るんです。1ヶ月ぐらいかけて自分の部屋の壁と床を張り替えたんですが、それでもまだ苦情の手紙が来るんですよ。

何をやっても苦情が出る場合もありますから、これをすれば大丈夫というのはありません。しかし基本的にマンションの室内で楽器を演奏すれば、音の大きさはともかく他の部屋に響くんです。揉める時は揉めますが、大事なのは「私はここまで対策しています」と言えて、ある程度は音を抑えていることが誰にでもわかることが大事なんです。

部屋の防音対策

防音対策には遮音と吸音の両方からのアプローチが必要になります。遮音は文字通り、音を遮ることです。遮音壁というのは壁を透過する音を減らすことで、隣に音が聴こえにくくする効果があります。しかし透過する音が減ったということは、室内に跳ね返った音もあるのです。そこで吸音が必要になります。

吸音は、文字通り音を吸収することです。スポンジなど多孔質のものを取り付けることで音を吸収することが可能になります。音楽スタジオなどは、この遮音と吸音の両方を行うことで高い防音性を保っています。恐らくここに出てきた段ボールの防音室は、壁に凹凸を作ることで遮音効果を狙っているのでしょうが、段ボールのような硬い紙では吸音効果が望めません。そのためあまり効果がなかったのではないかと思います。

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診察の続き

あまり効果がないんですね。てっきり神経質な人が文句を言っているのかと思っていました。

恐らく段ボール防音室も一定の効果はあるんだと思います。ですが騒音問題は、どの程度まで音を下げれば解決するというわけじゃないんです。それに手紙を書いている人が神経質かどうかは、実際に音を聞いていない私にはなんとも言えません。

そうすると、防音室を買ったりするしかないんですかね。でも本格的な防音室を買うとなると100万円ぐらいは掛かるんですよね。そんなお金は出せません。

私の知人は、平置きの駐車場に止めてある車の中でギターの練習をしているって言っていました。時々、同じマンションの人に不審な目で見られると言っていましたが。

私のところは機械式の駐車場なんで、中で練習するなんて無理です。

ところでアコースティックギターじゃないとダメですか?例えばエレキギターにするとか無理ですか?

エレキは弾いたことないですし、興味ないんです。でもエレキの方がうるさくないですか?

エレキギターはアンプを通さないと音は小さいですし、アンプにヘッドフォンを繋いでおけばうるさくはないんです。ですからアコースティックギターよりも、エレキの方が断然静かに練習できます。

でもエレキは興味ないです。やっぱりマンションでアコースティックギターは無理なんですかね。

巣ごもり需要で楽器が売れているそうですが、マンションでは楽器の騒音問題があちこちで発生しています。特に外に出られないためストレスを感じている人がマンション内に多く、ちょっとした音にも過敏に反応する人が増えているのも事実です。しかし楽器といってもさまざまで、例えば電子ピアノのような楽器ならヘッドフォンをつけて練習すればほとんどの音を抑えることが可能です。しかしドラムなどは、ちょっとした防音設備では振動と騒音の両方を周辺に撒き散らすことになってしまうでしょう。ちなみにジャズバンドでウッドベースを弾く私の知人は、自宅で練習する際には夏でも毛布を楽器ごと頭から被って弾いています。楽器ごとに騒音対策は大きく変わってくるのです。

恐らく解決するには、ギターを買い直すしかないと思いますよ。サイレントギターってご存知ですか?

聞いたことはあります。変な形のやつですよね。

ヘッドフォンで聴くとアコギっぽい音が聴こえますし、外に聞こえるのは弦の振動音だけです。コードをジャカジャカかき鳴らさなければ、夜中のマンションでもさほど響きません。

うーん、見た目がなんというか変な気がしますけど

防音室の100万円を考えたら遥かに安いですし、とりあえず楽器屋さんで触ってみて気に入ったら試してみてはどうでしょうか。現状のままでは音が響いていることは間違いないですし、これなら音をかなり小さくすることができますよ。

まとめ

最後はまるでヤマハの宣伝のようになってしまいましたが、アコースティックギターをマンションで演奏するなら、サイレントギターが最も良いと思います。マンションで楽器を演奏すると、基本的に他の部屋にも聴こえてしまうと思ってください。それが苦情になったり迷惑になるかは、音量によってかなり変わってきます。今回の相談者はご自身でいろいろ試していましたが、何をやっても苦情が出ていたようです。しかし楽器によっては、楽器自体で対策しているものもあります。紹介したサイレントギターもそうですし、ヤマハにはサイレントブラスというマンションでも吹けるトランペットもあります。こういったものを選ぶのも一つの手段ですので、まずはいろいろとリサーチしてみてください。

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