タワーマンションに住むと流産が増えるのは本当!?

タワーマンション批判の中に、高層マンションに住んでいると流産の確率が高くなるというのがあります。また海外では小さな子供は高層階に住んではいけないという法律がある国もあり、幼児がタワーマンションに住むことによって重大な健康被害を受ける可能性があると指摘する人もいます。しかしこれらの話には誇張が多く、あまり信頼できるとは思えないのです。今回はこれらのタワーマンション批判を少し考えてみたいと思います。

高層階と流産の関係性

妊婦が高層マンションの高層階に住むと、1階や2階に住む妊婦に比べて流産する確率が飛躍的に高まるという話は、ネットでよく見かけます。そしてその根拠としてよくあげられているのは、宝島社が2010年に出版した「コワ~い高層マンションの話」という本です。著者は逢坂文夫(おうさか ふみお)さんという方で、東海大学医学部の講師をしているそうです。国土交通省シックハウス症候群対策委員や文部科学省シックスクール症候群対策委員を勤めるなど、公衆衛生の専門家のようです。

そして高層階が流産率を高めるという話は、1993年(平成5年)厚生省の「生活環境が子どもの健康や心身の発達におよぼす影響に関する研究」という報告が元になっています(発表されたのは94年のようです)。この報告をまとめたのが逢坂文夫さんなわけです。そしてその報告は以下のサイトで読むことが可能です。

生活環境が子どもの健康や心身の発達におよぼす影響に関する研究

高層階は本当に流産しやすいのか

この報告書を読むとアンケート調査をベースにまとめられていて、調査は横浜市保土ヶ谷区、港南区、戸塚区の保健所に4ヶ月検診を受けにきた母親に質問表を配布して記載を依頼しています。回収率はやく64%で461件となっています。つまりこの調査は日本全国で行われたものではなく、横浜市の461件のアンケートでまとめられているとわかります。

調査母数が少ないのもありますが、調査が横浜に限定されているため、統計上はかなり偏った調査結果と言えるでしょう。そのためこの結論を日本全国に当てはめるのは、かなり無理があるように思います。またこの調査で言っている高層階というのは6階以上の階です。93年当時の横浜の集合住宅の正確な数字を持ってはいませんが、この頃は14階建のマンションが多くあったと記憶しています。14階建が多ければ6階以上の階に住む人が多いのは当然で、そのため流産率が高まるのも当然だと思えます。

このようにデータとしては正確であっても、この報告を持って日本全国で高層階に住むと流産しやすいと結論づけるのは早計な判断だと思えます。そもそも6階以上に住んでいれば流産しやすくなるなら、今日までに大きな社会問題に発展しているはずで、訴訟も何も起こっていない現状を見ると高層階=流産しやすいというのは信憑性が低いと言えます。少ない調査母数、限られたエリア、高層階を6階以上としたこと、継続的な調査が行われていないこと、さらに調査から25年以上経った現在でも高層階で流産が増えると行った社会問題が起こっていないことを考えると、この調査の結論は早計に過ぎる気がします。

イギリスでは妊婦が4階以上に住むことが禁止

これもネット上ではよく見かける話で、イギリスでは妊婦が4階以上に住むことが禁止されているというものです。それが法律だったり条例だったりとバラバラで、ネットで調べてもどのような法律なのか条例なのかさっぱりわかりません。イギリスの知り合いに質問してみましたが誰1人知らない有様で、これも本当のことなのか怪しいと思っています。妊婦が4階以上に住めないということは、子供を作る予定がある人は3階以下に住まなくてはなりません。妊娠してから引っ越しをするのは大変だからです。このような法律や条例があればイギリス人の間では有名のように思いますが、知っていると答えたイギリス人は私の身近にはいませんでした。

しかし法律として存在していても、有名無実と化している例もあります。そのため何人かに質問して知らなかったというだけで、そんな法律はないと断言するのは危険です。日本にも一般には知られていない法律はたくさんありますからね。しかし何より次に書きますが、現在のイギリスでは高層マンションが多く作られているのです。このような法律や条例があれば、高層マンションが次々に立てられないように思います。

欧米では高層マンションの建設が禁止されている

欧米の多くの地域では、健康に害があるとして高層マンションの建設が禁止されているといった話もネットではよく見かけます。例えば某ニュースサイトには、以下のような記事がありました。

 実は、先進国の中でタワー型を盛んにつくっているのは日本だけだ。特にヨーロッパではほとんどの国が高層住宅を半ば禁止している。例えば、イギリスでは1970年に「高層住宅に住むことは子供の健全な発育を阻害する」という調査が出て以来、ほとんどつくられていない。

しかし現在のロンドンでは、タワーマンションが人気になっています。2010年頃から次々と建設されるようになり、日本と同様に社会的ステータスになっています。

Pan Peninsula

2009年竣工、43階建+39階建で総戸数786戸。2棟建のタワーマンションです。2005年の着工時から話題になり、竣工前の2007年には予約でいっぱいになったそうです。

Strata SE1

2010年竣工、43階建で総戸数408戸。電気シェーバーみたいな形状で、上層部に風力タービンがついている特徴的な建物です。1階は店舗で、2階から住宅になっています。

※前と後ろから見た写真です。

The Shard

2012年竣工、72階建で総戸数はわかりません。65階までの10フロアが住宅で、その他はオフィスや病院、ホテルなどになっています。

St George Wharf Tower

2014年竣工、50階建で総戸数は1100戸の住宅専用棟です。住宅専用としてはイギリスで最も高い建物で、ロンドンで8番目に高い建物です。工事中にヘリコプターが激突した事故は、各国に報じられました。

このようにほとんど作られていないどころかブームになっていて、次々に建設されているのです。そしてこのような記事もネットで見かけました。

マンションの上の階に住むと流産する。日本人の大部分は初めて聞く話だろうが、欧米では常識として認識されている。迷信レベルの話ではない。アメリカではワシントンやサンフランシスコ以外でのタワーマンション建設を制限しているし、フランスでは70年代に高層住宅の建設そのものを禁止している。

フランスのパリで高層住宅の建設が制限されているのは、パリの伝統的な景観を守るためです。またアメリカではあちこちでタワーマンションが建設されていて、ニューヨークのセントラルパーク・タワー(130階建)の竣工は話題になりましたし、ドナルド・トランプのトランプ・タワー(58階建)もたびたび話題になります。ワシントン(これはDCのことなのか州のことなのか不明です)やサンフランシスコ以外での建設が制限されているなんてことはないと思います。

タワーマンションで流産が増えるかは未知数

ネットや書籍に出ているタワーマンションに住むと流産が増えるというのは、かなり怪しい情報だという気がします。しかしタワーマンションの高層階に住むことで、健康への影響が全くないとも言い切れないのが現状です。私は耳が弱いせいか、30階建のタワーマンションのエレベーターで耳が詰まったような感じになることが度々ありますし、マンションの54階で仕事をしていた時は絶えず落ち着きませんでした。その部屋でお酒を飲むと酔いが早く、低層階と全く同じとは言えないと実感しています。しかしそれが健康に影響を与えるかは別です。なんら具体的な研究がない中で、低層階とは違うと感じるだけで健康に影響があるとか気のせいとか決めるけることは避けなければなりません。

どうしても気になる方は高層階に住むのを避けた方が良いでしょうが、誰でも高層階は避けるべきと言えるほどの根拠は今のところ見当たりません。曖昧なデータや怪しい見聞に惑わされないようにしておきましょう。今後、高層階と健康に関連する研究が出てきたら、改めてここで紹介したいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です