マンションの基礎知識04 /SI住宅ってなんだ?

一時期注目されていたSI住宅は、いつしかあまり聞かなくなってしまいました。しかしここ数年、再びSI住宅の話題がでるようになってきています。今回はSI住宅とはなにか、そしてなぜ再び注目されているのかを解説しました。

SI住宅とはなにか

SIとはスケルトン・インフィルの略で、スケルトン(躯体)とインフィル(内装)を分離した住宅のことです。コンクリートの柱や梁、スラブ(床)や壁などがスケルトンに該当し、フローリング床や間仕切り壁、クロスなどがインフィルになります。従来の住宅は躯体と内装は同じ業者が一連の流れで工事を行いますが、SI住宅では躯体と内装の工事を別々に行うこともあります。

SI住宅の最大の特徴は、100年は使えるコンクリート躯体と入居する人の生活様式によって変わる内装を分離することで、さまざまなライフスタイルに合わせて長い間マンションを使えるということです。そのためリフォームの自由度は抜群で、従来のマンションでは水回り(お風呂・台所・洗面所)の位置はほとんど変更できませんが、SI住宅では自由に位置を変えることができます。例えば従来のマンションではお風呂をリビングの窓に面する位置に変更することは不可能ですが、SI住宅ならできてしまいます。

あまり見ない住宅形式ですが、その歴史は古く何棟ものマンションで実施されてきました。しかし後述する問題があり、普及には至っていません。ところが近年になって、再びSI住宅が注目されるようになってきました。

SI住宅の歴史

どこからがSI住宅なのかによって、その歴史の始まりは意見が分かれます。最も古いものでは、1958年竣工の晴海高層アパート(167戸)で、主要構造体と二次構造体を分離したことが最初とも言われています。

※晴海団地高層アパートの概念図

また1986年に旧建設省が「住機能高度化推進プロジェクト」の一環として始めたCHS(センチュリー・ハウジング・システム)が、SI住宅の原型という意見もあります。CHSは長期に渡って快適に住み続けられる住宅提供を推進する目的で始まりました。建物の耐久性が長期に渡るものと短期間の物を明確に分けることが求められたため、100年はもつコンクリートの中に30年から40年で交換が必要な配管を打ち込むような仕様は否定されました。現在のマンションでは常識になっていることの多くが、CHSには含まれています。

いつからSI住宅という名称が使われるようになったのかは私にもわからないのですが、90年代には「スケルトン住宅」という言葉が使われ出し、SI住宅が少数ですが建設されていきました。私の個人的な経験で言うと、大京が5000棟分譲記念で発売した「ヴィラッジオ5000」の一部にSI住宅があり、少しだけ関与しました。

SI住宅の概要

ほとんどのマンションのリフォームでは、水回りの位置を変えることができません。それは主に排水が原因で、洗面所などの排水溝から繋がる配水管をPS(パイプスペース)と記載されたスペース内に収められた共用の排水縦管に繋ぐ際に勾配が取れなくなるからです。下図のようにフローリングの下にある配水管は、水が流れやすいように勾配がつけてあります。

しかしPSと洗面所やお風呂の距離が長くなると、勾配をつけた配水管は床を飛び出してフローリングの上に顔を出してしまいます。そのため多くのマンションでは水回りの位置が変更できません。そこでSI住宅では床下を深くすることで、配水管を床下に納まるようにしています。一般的なマンションでは床下が10cm程度しかないのに対し、SI住宅では50cm以上あることも珍しくありません。

これによりSI住宅のPSは室内から消え、玄関の横に集約されることになりました。そのため室内は排水縦管の位置を気にせず、自由に間取りを変更できるようになったのです。

SI住宅のメリットとデメリット

SI住宅のメリットはリフォームの自由度が高いということが挙げられますが、それはSI住宅の魅力の一部に過ぎません。SI住宅の最大のメリットは長期間使える躯体と劣化が早い内装を切り離し、自由度の高いリフォームを容易にしたことで、何代もの人が使い続けることができるマンションを目指した点にあります。夫婦で入居したマンションであっても、子供が生まれたら必要な間取りは変わります。そして子供が独立すれば、再び間取りの変更が必要になります。さらに入居者が変わっても、SI住宅はリフォームを繰り返すことで様々な家族形態に対応できるのです。

一方で、デメリットもあります。最大のデメリットは床下を深くすることで階高が高くなってしまい、1棟あたりの住宅数が減ってしまうことです。普通のマンションなら10階建が建てられる土地なのにSI住宅にしたために8階建になってしまい、その結果として住宅の販売価格が上がってしまいます。これが事業主にとっては大きな問題になり、SI住宅の普及が進みませんでした。

なぜ今注目されているのか

以前から政府は日本の住宅が「スクラップ&ビルド」、壊しては建て直しを繰り返すのではなく長期間快適に使える住宅行政を目指してきました。そして明確な人口減が始まる一方で新築住宅が増えている現状を考えると、今後は全国的に空き家が問題視されるようになります。そこで長期間使うことができるSI住宅に再び注目が集まってきました。

上記のデメリットから民間の デベロッパー は、あまり積極的にSI住宅を展開してきませんでしたが、ここにきてもう一度SI住宅を見直そうという声が出るようになりました。時代は長寿命化した住宅を求めており、SI住宅の考えが合っているのです。UR都市機構は現在もKSI住宅(機構型スケルトン・インフィル住宅)として、現在もアピールしています。

※KSI住宅の概念図(UR都市機構のサイトより)

まとめ

SI住宅は100年以上の耐久性を持つ建物の骨格(スケルトン)部分と、10年~30年程度で変更する間取りや内装(インフィル)部分とに分離した住宅です。そのため住人の家族形態が変わっても快適に使えるようにリフォームの自由度は高く、長期間に渡って使用可能な住宅になっています。しかしコストの高さが問題になり、あまり浸透していませんでした。

スクラップ&ビルドを繰り返す日本で、空き家問題が深刻化することが予想されるため、再びSI住宅が注目を集めています。今後も話題になることがあるかもしれません。

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