マンション理事会の運営はなぜ難しいのか /異なる文化が集まる場所

マンションの理事会は、月に1度ぐらいのペースで理事が集まってマンションの課題を検討します。しかし会議を進めることに四苦八苦するなど、運営に苦労するケースが多く見られます。なぜ理事会の運営が難しいのか、今回はこの点を考えてみたいと思います。

会社員は業績を積めば出世できるが

私の知人は日本人の大半が知る大手企業に勤務しています。彼は新卒で入社以来、営業部と企画部で業績を積み上げてきました。入社してから約20年間、洗剤を売ることで昇進と昇給を繰り返し、課長職になりました。今でも洗剤の販売企画にはちょっとした自信を持っているそうで、その実績を買われて管理職になったのです。

ところが多くの日本企業にありがちですが、これまで非管理職として働いてきた人が、ある日突然管理職になるため勝手がわからなくなってしまいます。それまではプレイヤーだったので、上司の指示に従いながら動けば良かったのですが、マネージャーになると部下を動かして実績を出さなくてはなりません。指示を出しても部下が納得していない表情を浮かべることも多く、かなり苦戦していました。

彼はこれまでの経験で、無理難題を部下に押し付けたり、納得がいかないことを上司の強権で無理強いされるのが嫌でした。だからそういう課長にはならないようにしようと思っていたのですが、なかなか言うことを聞かない部下に対して強権を発動するようになり悩んでいました。彼は管理職になるための訓練を受けてないので、当然と言えば当然の悩みを抱えていたのです。

人事査定という武器が使えないマンション理事会

サラリーマンの多くは全員の意見を聞いてまとめたり、やるべきことを全員に説明するような訓練を受けることなく管理職になります。そのため苦手だという人も多く、以前は何かと怒鳴りつける上司がいました。今や怒鳴りつけるとパワハラになるので、そうもいきません。

しかし会社では人事考課制度があり、管理職は部下の査定を行います。この強力な武器のおかげで反論する部下を押し切ることができますし、なんだかんだ言いながら最終的に言うことを聞かせることができます。上司の言うことを聞かなければボーナスに響くのですから、不満があっても渋々従う人は多いでしょう。

しかしマンション管理組合の理事会には、人事考課制度はありませんし、理事長が理事を査定することもありません。全員が同じ立場で話し合いを行い、不満がある人は平気でぶつけてきます。会議が長引けば不満が出てきますし、何かを決定したくても強力な反対意見を述べる人もいます。ファシリテーション能力のない人、低い人はこういった話し合いをまとめるのに苦労することになります。

関連記事
本の紹介:「超ファシリテーション力」/理事会の進め方のヒント

肩書きが関係ない人間関係の中で組織を運営する

会社勤めをしていると忘れがちですが、仕事の場合は肩書きで人間関係ができています。個人よりも○○株式会社の課長といった肩書きの強さは、会社を離れて個人で仕事を始めた人なら誰もが痛感するでしょう。自分では全く意識していなくても、肩書きというのは仕事における人間関係の中に大きく影響しているのです。

ところが管理組合では、そのような肩書きはほとんど意味を持ちません。むしろそういった肩書きを持ち出す人は、煙たがられます。普段から趣味のコミュニティに出入りしている人ならともかく、会社と家庭の往復しかしていない人には、肩書きが通用しない中で何かを決定していく作業が予想外に難しく感じる場合があります。

そしてこういった付き合いは女性の方が得意としている場合が多く、そのため理事会を女性がリードしているケースもよく見られます。なぜ女性の方が得意としているかというと、子供の学校での活動やPTAなどでは、大女優もトラックの運転手も、経営者も専業主婦も「○○ちゃんのお母さん」と呼ばれ、肩書きが通用しない中で何かを決めたり合同で作業をしなくてはならないからです。

話し合いの文化が異なる人が集まる

多くの人にとって職場が社会の大部分になりがちです。理事会で話し合いをする際には、それぞれの職場で行っているやり方で行おうとします。それぞれのやり方が違うため、会議の進め方でギクシャクすることもあります。ある人にとっては、リーダー役の人が率先して意見を言って進める会議をイメージし、ある人にとっては全員がフランクに意見を言い合うスタイルをイメージします。

私がお邪魔したマンションでは60歳を過ぎた理事長が、私の意見に反対する理事が多くて困ると言っていました。よくよく話を伺うと、この方の会社では会議というのは多くの場合はトップが決定を伝える場だったようで、理事長になるとあらゆる意思決定を自分で行わなければならないと考えていたようです。これは極端な例ですが、このように会議の文化の違いによって話し合い自体が進まない、進みにくいことが起こります。

どうすれば理事会はスムーズにいくのか

私自身、どうすれば良いという結論には至っておらず、試行錯誤の最中です。そのためこうすれば良いという最適解を書くことはできないのですが、私なりに気づいたポイントをまとめたいと思います。

①時間を守る

予定時刻に始まらない、予定時刻に終わらないというのは参加者のやる気を削いでいきます。みんな貴重な休日を削って参加していて、休日の予定もあるはずです。時間を守らない理事会は、やがて欠席者が増えることに繋がります。議論が白熱して時間通りに終わらないというケースもありますが、予定時間を過ぎるのが当たり前になってしまうのは危険です。理事会は時間を守ることを心掛けましょう。

関連記事
長すぎる理事会の相談 /長引かせたい人がいるケース

②全員が発言できるようにする

発言しなくても良い会議は、どうしても緊張感が欠けてしまいます。そこで全員に発言する機会を与えることが必要になります。多くの理事会では話す人と聞く人が別れてしまいがちで、一度も発言をしないまま理事会を終える人がいます。これでは意見が偏りますし、毎回発言しない人は出席しなくても良いと考えるようになります。全員が発言できる機会を作ることは、重要だと思います。

③脱落者が出ないようにする

議論が白熱すると、どうしても何人かの人が議論についていけなくなりがちです。そこで途中で司会者などが、一度そこまでの話をまとめて説明することが重要になります。議論の途中に、それまでの話をまとめることで、議論のポイントがはっきりします。

またこれを行うことで、議論が横道に外れていくことを防ぐこともできます。要所要所でそれまでの議論をまとめることは、脱落者を出さずにブレない議論を進めるうえで重要になります。

まとめ

会社では会議を仕切れても、理事会では勝手が違ってなかなか上手くいかないという方は多いと思います。それは会議の文化が違ったり、やり方が異なるためいつものようにはできないからです。そのため苦戦するのは当然で、上手くいっているケースの方が少ないのです。ですから上手くいかないと悩むより、いろいろなやり方を試していくしかないでしょう。上記に挙げたヒントを元に、試してみてください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です