事故物件に慌てない心構え

最近、事故物件という言葉をよく聞くようになりました。事故物件という言葉自体は以前からあったのですが、大島てる氏の事故物件公示サイトが話題になったことに加えて、相次ぐ芸能人の自殺が事故物件という言葉を巷に溢れさせるようになったと思います。そもそも事故物件とは何なのか、そして事故物件と言われたらどうすれば良いのかを考えてみました。

事故物件とはなにか

法律上、事故物件という言葉はありません。また何かで定義されているわけでもないので、なにをもって事故物件というかは曖昧です。建物内で人が死亡すると事故物件扱いされますが、殺人や自殺ならともかく病死や事故死でも事故物件となるかは不明です。最近の風潮としては死亡要因に関係なく、大島てる氏のサイトに掲載されれば事故物件と呼ぶようになっているようです。自殺や他殺があったかなどとは関係なく、大島てる氏のサイトに掲載されれば事故物件と呼ばれる昨今の流れは、とても危険な気がしています。

法律には、心理的 瑕疵 というのがあります。雨漏りなど建物に欠陥がある瑕疵とは違い、建物に不具合はないものの「自殺があった部屋だと知っていたら契約しなかった」といった、心理的に作用するものを指した言葉です。心理的瑕疵が認められると契約不適合責任を問うことができますが、なにが心理的瑕疵にあたるか明確な基準はなく、裁判などで個別に判断しているのが現状です。

マンション内で睡眠薬を大量に飲んで自殺を図り、救急車で搬送され2週間後に病院で死亡した件では、裁判所は軽微な心理的瑕疵と認定しています。またエレベーターシャフト内の工事で転落死亡事故が発生し、買主がこれを理由に心理的瑕疵を訴えた件では、裁判所は認めませんでした。このように概要を聞いただけでは「なぜ?」と思う例も多くあり、安易になにがあれば心理的瑕疵になるかを語るのは難しい状況なのです。

大島てるの事故物件公示サイト

株式会社大島てるが運営する事故物件公示サイトが注目を集め、事故物件が多く語られるようになりました。このサイトは誰でも回覧可能で、自分が購入や賃貸契約を検討している物件で、他殺や自殺などがなかったかを知ることができます。大家にとっては知られたくない情報を世間一般に公開しているので嫌なサイトですが、不動産の購入や賃貸を検討している人にとっては有益な情報を入手することができるとも言えます。

大島てる 事故物件公示サイト

宅建業法では重要事項説明で自殺や他殺があったことを説明するように義務付けていますが、上記の心理的瑕疵の説明と同様でどこまで説明しなければならないかが明確になっていません。そのため殺人事件があった部屋でも、何年間に渡って説明しなければならないかが不明瞭になっています。そのため契約の際に告知されないことも多いので、大島てるの事故物件公示サイトが注目を集めることになりました。

このサイトでは、誰もが投稿可能になっています。殺人や自殺があったことを知る人が、自ら書き込む投稿制なのです。そのため大島てる氏も認めているように、間違った情報が掲載されていることもあり、苦情が来たら一旦は掲載を凍結して調査を行っています。調査の結果、事故があったことが確認されれば再び掲載し、間違った情報だと判れば削除することで情報の精度を保っているそうです。

事故物件公示サイトの問題点

こういった情報を掲載するサイトでは、まず集まった情報を精査して正しいものだけを掲載するのが一般的です。しかしこのサイトでは集まった情報を全て掲載し、間違っていると申し出があってから精査します。そのため間違っている情報が多数あり、大家にとってはありもしない事故情報を掲載されることが珍しくありません。

例えば94年に福岡県で起こった美容師バラバラ殺人事件では、その猟奇性によって全国的に報じられました。遺体をマンションのバスルームで解体し、あちこちに遺体の一部を捨てていったわけですが、事件現場となったマンションは噂になって福岡のあちこちで語られていました。私が聞いただけでも3つのマンションが事件現場として噂になっていて、最終的に全く別のマンションが事件現場だとわかりました(不動産の仕事の中で、同じマンションのオーナーと会うことがあって知りました)。このように噂の情報精度は極めて低く、事件とは無関係の物件が事故物件として掲載されてしまうことは珍しくありません。

そのためこのサイトからわかる情報は「自殺や他殺があったかもしれない」というレベルに過ぎません。しかしサイトが有名になったため、ここに掲載されていると事故物件だと思う人が増えて風評被害も発生しているようです。一方でこのサイトによって事故物件がメジャーになったため、以前は自殺があった部屋は半値で賃貸に出しても借り手が決まらなかったのに、最近はそこまで安くしなくても借り手が決まるようになったと言う不動産屋もいました。事故物件公示サイトの功罪とも言える点で、このサイトの評価が分かれる理由にもなっています。

事故物件と言われても慌てない

借りようとしたり購入しようとする時に、そこが事故物件かもしれないと聞くと誰もが動揺するとは思います。しかし人の噂から発生したものが大半なので、オーナーや売主または不動産屋に確認を入れてください。告知義務がなくても虚偽説明はできないですから、殺人があった部屋なのに殺人はなかったとは説明しません。もちろんオーナーや不動産屋も知らないケースがあるのですが、それは少数で大抵の場合は把握しています。

既に借りている、または購入している物件が事故物件かもしれないと聞かされたら嫌な気持ちになるでしょう。噂を確かめるべく、図書館で当時の新聞記事などを探して調査する人もいます。ここで気をつけなければならないのは過去に殺人などがあった部屋だったと分かったとしても、契約を無効にできるかは裁判をやらないとわからないということです。特に古い事件だと認められる可能性は低くなりますし、売主が知ることができない状況だったとしたら、認められても心理的瑕疵は軽微になります。

過去に事件があったのかを調べることで、ほとんどの人が知らなかった事実を掘り起こし、心理的瑕疵が認められず、物件価値が下がるというリスクがあることも忘れないようにしましょう。これは良いとか悪いという問題ではなく、リスクとして存在するということです。知らないことがリスクだと思って調べるなら、知ることによって起こるリスクも考えておく必要があるのです。

自分が住んでいるマンションが事故物件と言われても、慌てる必要はありません。今言われている事故物件の話のほとんどは、噂は憶測を元にしています。そのため信憑性が低く、誰かが言っていようが事故物件公示サイトに掲載されていようが、それが本当かはわからないのです。もし本当に自分のマンションが事故物件だとわかり、それが原因で住み続けることが無理なら、その証跡を元に売主と話すことになります。しかし心理的瑕疵の基準がない以上、裁判を行うことになる場合がほとんどです。

まとめ

事故物件という言葉は法律上には存在しないため、定義もありません。最近は大島てる氏のサイトに掲載されたら事故物件と呼ぶ風潮がありますが、あのサイトは誰もが書き込めるため信憑性は極めて低いと考えるべきです。嫌がらせやイタズラ目的で書き込んでいる人がいないとも言えず、大島てる氏のサイトと事故物件の信憑性は関係ないと思って良いでしょう。そのため自分のマンションが事故物件だと言われても、決して慌てる必要はありません。大島てる氏のサイトは疑義があれば削除依頼を出すこともできますし、調査で間違いがわかれば削除してくれます。人の噂に惑わされることなく、落ち着いて対応するようにしましょう。事故物件に慌てない心構えが大事になります。

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