切断された鉄筋 /修理に来て壊す人達がいます

※参考写真

台風による突風で、バルコニーや廊下のアルミ手摺りが飛ばされたマンションからの相談です。管理組合の理事の方が私の知人に相談し、私が紹介されてマンションをお伺いしました。アルミ手摺りの取付に 瑕疵 があったことを ゼネコン が認めたので、そのゼネコンが補修工事を行うそうです。その補修内容をチェックして欲しいという相談です。切断された鉄筋が大きな問題になりました。

マンションの概要

都内にある分譲マンションで、総個数は300を超える大きめの物件です。12階建てで横に長く、廊下の手摺りも数十メートルに及びました。 デベロッパー は全国に展開している大手不動産屋で、施工会社は準大手ゼネコンでした。築6年目ということで、まだまだ外観は新しく見えます。駅から少し離れた住宅街ですが、戸建てが密集しているエリアではなくマンションが多い地域でした。

事故の概要

2年前の台風で、10階のバルコニーの手摺りの一部が破損して落下しました。すぐに管理会社に連絡して、手摺りの修理をお願いして完了います。しかし翌年の台風の際に、再び別の2箇所で手摺りが破損して落下しました。これに不安を覚えたマンション理事会の面々は、自分達で廊下の手摺りのチェックを行なっています。その結果、7箇所で大きなグラつきと11箇所で小さなグラつきを見つけました。

マンションの欠陥ではないかという話になり、管理会社を呼んで調査と破損した手摺りの修理を依頼しています。管理会社もグラつきが大きい事に疑問を感じ、施工したゼネコンに調査を依頼しました。ゼネコンの調査の結果、手摺りの取付方法に問題がある事がわかり、ゼネコンの費用負担で全ての手摺りを交換する事になりました。

理事会を訪問

理事会には、管理会社の担当者とゼネコンのアフターサービス担当者が来ていました。資料を拝見すると、手摺りの支柱とアンカーの飲み込み深さが不足していて、明らかな施工ミスだとわかりました。そして手摺りの交換方法ですが、同じ工法だと同じミスを犯す可能性があると考え、ゼネコンは別の工法を提案してきました。コア抜きと呼ばれる方法でコンクリートに穴を開けて、アンカーを打ち込む工法です。

※コア抜きした穴

そしてこのゼネコンは、キチンとした施工計画書を用意していました。手摺りメーカーの工事仕様書も添付されていて、全く問題はありません。施工計画書には、車両の搬入から手摺りの取付、 モルタル 埋めや塗装、さらに撤収方法まで記載されていて、口を挟む隙のないものでした。見事な施工計画書で、ゼネコンの誠意を感じます。私が質問したのは以下の2つだけでした。

①破損して既に修理が終わった手摺りも交換するのか?
②コア抜きの際に鉄筋が出てきたらどうするのか?

①に関しては、既に修理した部分も含めて交換するとのことでした。②に関しては、事前に超音波で鉄筋の位置を調べているので、鉄筋が出てくる事はないとのことです。それでも出てきてしまった場合は、周囲のコンクリートを壊して鉄筋が当たらない場所に支柱を取り付けるとのことでした。問題ない回答です。そしてゼネコンから質問が来ました。「横筋は切断してもよろしいでしょうか?」

廊下やバルコニーの床に走っている縦筋は、構造を支える重要な鉄筋です。しかし手摺りを埋め込む部分にある横筋は、縦筋の間隔を揃えるためだけの鉄筋で、構造には何の関連もありません。そこで「横筋は切断しても構いません。ただし切断時は写真を撮っておいてください」と注文しておきました。理事会の皆さんには、施工計画書に問題がないこと、ゼネコンが誠意を見せていること、担当者は若いがしっかりしている印象を受けたことを説明し、私の仕事は1時間で終わりました。

突然の電話

それから1ヶ月が過ぎ、そろそろ手摺りの交換工事が始まっている頃だと思っていたら、理事の方から電話をもらいました。ゼネコンが既に修理してある手摺り部分の交換を拒否したと言うのです。約束が違うので、私も驚きました。急いで現場に駆けつけると、ゼネコンの担当者が待ち構えていました。「約束が違う」と言う私に、担当者は困った顔で現場を見るよう言います。そして修理された手摺りを外した部分を見せられました。

なんと構造的に重要な縦筋が切断されていました。修理業者が手摺りを交換する際に、縦筋が邪魔になって切断したのだと言います。新築工事の時に切断したかもしれないじゃないかと私が言うと、いくらなんでもそんなバカなことはしませんと断言しました。押し問答をする気もないので、管理会社に連絡して修理業者に確認をとってもらいました。するとすぐに管理会社の担当者と修理業者の社長さんが、やって来ました。

問題意識のない工事

修理する際に鉄筋を切断したか?という私の質問に、社長さんは「はい、しました」と、あっさり認めました。ゼネコンの担当者は「安全性が損なわれていて工事保証ができないので、私達はこの部分の工事を辞退させていただきます」と主張します。「なんてこった・・・」と唸る私を見て、社長さんはポカンとしています。なぜ切断なんかしたんですかと私が言うと、笑いながら「切らなきゃ手摺りがつけられないでしょう」と言います。

「鉄筋を避けられなかったんですか?」
「無理無理。真ん中に来てるんだから」
「それなら工事を中止すべきでしょう」
「何バカなこと言ってるんだ。こっちは2日もかけるほどの金はもらってないんだよ」
「あなたはマンションを壊したんですよ」
「あのな、鉄筋が出てきたら切るのは普通の工事なんだよ。切らなきゃ仕事にならないんだよ」

この手摺屋の社長は、自分が犯したことの重要性を全く分かっていませんでした。どこの現場でも、鉄筋が出てきたら切っていたのでしょう。自分達の仕事を終わらせること以外は考えず、マンションの構造に無知ですし知る気もないのです。これ以上は議論しても無駄なので、帰ってもらいました。

理事会と管理会社の打合せ

管理会社と理事会に、修理業者が切断した鉄筋が廊下を支えるのに必要な鉄筋だと説明しました。ゼネコンが工事を拒否するのも妥当な判断で、意地悪をしているわけでもないことも説明しました。理事の皆さんは激怒し、管理会社の担当者は会社に戻って対応を協議すると答えました。

最終的に切られた鉄筋部分に関してはゼネコンに補強工事を行なってもらう事になり、その費用負担は管理会社がすることになりました。管理会社は鉄筋を切断した手摺屋に費用を請求すると言っていましたが、きっと揉めたでしょう。あの社長は自分が何をしたか分かっていないですし、金額はかなりの額になるはずですから。

残念なことですが・・・

この手摺屋が特別悪質な業者かと言うと、実はこの手の業者は大量にいます。手摺屋は手摺りを取り付けることで、利益を得ているのですから、他の業者の工事に興味がなくて当然なのです。そして修理を専門に行なっている業者は、建築の専門家に工事をチェックされることもないので、鉄筋を切っても問題になることはありません。

しかしゼネコンの現場で縦鉄筋を切ったとバレたらゼネコンが激怒し、補修費用を工事費から差っ引かれてしまいます。もちろん大した管理をしていないゼネコンの現場もあるので、ゼネコンの仕事をしていれば信用できるというわけではありませんが、修理を専門にしている業者では、なかなか気がつかないことなのです。

修理を依頼して壊されてしまうケースは、私も多く見てきました。特に構造に関する部分は、壊してしまうと補修するのに莫大な費用がかかることがあります。修理をする際にも専門家の立ち会いが必要な場合がありますので、お気軽にご相談ください。

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