勝手に開く自動ドアの謎 /施工ミスではないのにトラブルになった例

これは私がマンション デベロッパー のアフターサービスセンターにいた頃の話です。雨水ポンプが故障し、その修理報告をするために理事会に出席しました。この際だから、何が質問等があればお受けしますと言うと、理事の1人が言いにくそうに「夜、自動ドアが勝手に開くんです」と言い出しました。

続々と出てくる証言

理事の1人が自動ドアが勝手に開くと言い出すと、次々に他の理事も口を開きました。すると「自分もそんな気がしていた」「気のせいかと思っていた」などと何人もの理事が言い出し、このオカルトじみた話に真実味が出てきました。勝手に開く自動ドアなんて誰も聞いたことがないので、自分達が住むマンションにそんなものがあるとは思えなかったのです。すると言い出しっぺの理事長が「なんとなくだけど、原因がわかる気がする」と言い出し、試してみたいことがあるので全員でエントランスに行こうと言い出しました。

まさかの展開

エントランスの面の入り口は風除室とともに自動ドアになっています。しかしここのエントランスには中庭に通じる出口があり、そこにも自動ドアが設置されています。全員が、この裏口の自動ドアが勝手に開くと言います。理事長は中庭に入り、機械式駐車場の前に行くと操作パネルを触り始めました。自分の車を出庫させるようです。

理事長の車が地上に降りてきて、正面のゲゲートが上がると、なんと自動ドアが開きました。私も他の理事も「おお!」っと声を上げて驚き、その後何度もやりましたが駐車場の正面ゲートと自動ドアは連動しているように確実に開きました。

※機械式駐車場の参考写真

私はすぐに施工した ゼネコン の所長に電話して症状を伝えたのですが「ああ、近いうちに行くので見ておきます」と気のない返事でした。この所長は真面目で熱心な人なのですが、話が突飛なので私が何か勘違いしていると思ったのでしょう。そこでゲートと自動ドアが連動して開く様子をビデオに撮り、メールで送りました。メールを送るとすぐに所長から連絡があり、「明日の朝一番で伺います!」と言ってきました。

どよめく業者一同

実際に自動ドアが開く様子を確認した所長は関係各所に連絡を取り、次の日にはゼネコンの電気設備担当、自動ドアメーカー、機械式駐車場メーカー、鍵メーカー、インターホンメーカー、セキュリティ会社、電気設備業者が一同に揃いました。クレーム対応はどんな会社も嫌がるので、こんな短期間にこれほど多くの業者が集まるのは稀です。動画のインパクトがよほど大きかったのでしょう。

実際に機械式駐車場を動かして自動ドアが開くと、全員が「おおお!」と声を上げ、業者同士で検証が始まりました。普通、これほど多くの業者が集まると、検証方法の順番などを指示しないと混乱が起こるのですが、衝撃的な現象を目にしたためか、現場所長や私をそっちのけにして業者が熱心にやりとりをして原因を探り始めます。

原因の究明

丸1日かけて、原因がほぼ究明できました。機械式駐車場と自動ドアのケーブルが並走している場所があり、機械式駐車場が作動するたびに電磁波が自動ドアのケーブルに干渉していたようです。仮の絶縁体を用意して電磁波を遮断すると、自動ドアは開かなくなりました。工事用の絶縁体がなかったので、翌日改めて工事することで決着しました。

では、これは工事のミスだったのかというと、そうも言えませんでした。ケーブルの間隔距離や絶縁方法は仕様書の通りに行われていて、問題なかったのです。機械式駐車場メーカーも、開発部に持ち込んで詳しく検証すると約束してくれました。

なぜ工事中に気づかなかった?

工事中や竣工検査の時に何度も検査をしています。当然、作動確認もしているので、引渡し前になぜ気づかなかったのかと、誰もが思いました。工事中は自動ドアのスイッチを切って、ドアを開け放しにしていました。これは材料の搬入や職人の出入りがひっきりなしに行われているからで、自動ドアを作動させると時間のロスが増えるからです。また新品の自動ドアのモーターや稼働部品を消耗させることになるので、自動ドアの検査をする時以外は内覧会の日までスイッチが切られていました。

機械式駐車場も何度も検査をして動かしていますが、その時は自動ドアのスイッチが切られていたのです。自動ドアのスイッチをオンにして機械式駐車場を動かしたのは内覧会の日になりますが、内覧会では購入者の方、ゼネコンの社員、私たち売主会社の社員、管理会社の社員、工事業者、カーテンなど物販会社の社員が絶えず出入りしていたので、機械式駐車場と連動して自動ドアが開くことに気がつかなかったのです。

再発防止策として、機械式駐車場を稼働させる時には、あらゆる装置のスイッチをオンにしておくことになりましたが、機械式駐車場メーカーの改良を待つのがベターという声もありました。

複雑化するマンション

さまざまな機会設備機器が導入され、マンションは複雑化していきました。それに伴うトラブルも多く、単一のメーカーや業者では解決が難しくなっています。マンション全体を把握することはどんどん難しくなってきており、それができる人も限られています。

そこでマンションでトラブルが起こった際には、複数の人に相談することをお勧めします。見方を変えることで問題の本質が見えてくることもありますし、異なる知識が必要になる場合もあります。なかなかトラブルが解決しないという方は、下記のメールフォームからご一報ください。

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