壊れるために作られたエキスパンション・ジョイント /地震の時の強い味方

多くの建築物にはエキスパンション・ジョイントとが設置されています。2棟構成のマンションや横長のマンションの多くに設置されていて、地震の際には重要な役割を果たしています。今回はこのエキスパンション・ジョイントとは何か、そして何のためにあるのかを解説したいと思います。

エキスパンション・ジョイントとは

日本語では伸縮継ぎ手と訳されることもあり、略してEXP.Jと書かれていることもあります。今回はEXP.Jと表記していきたいと思います。このEXP.Jは構造特性が異なる建物を一体化させる場合や平面形状が複雑な建物に使われています。

建物の揺れに対する備え

地震が発生するとマンションは揺れます。1棟構成のマンションなら問題ないのですが、2棟構成のマンションならお互いの棟がぶつかることになりかねません。マンションそのものの自重が重いので、激しい揺れが発生してぶつかる時の衝撃も大きなものになります。お互いの棟が壊し合うなんてことになりかねません。そこで2棟以上で構成されるマンションは、必ずクリアランスを設ける必要が出てきます。下図のような2棟構成のマンションは多くありますが、これではA棟とB棟の間が衝突してしまうのです。

そこでクリアランスを設けると、衝突は避けられます。しかしそうなるとA棟とB棟は行き来できなくなってしまいます。そこでEXP.Jを設置することで、クリアランスを確保しつつA棟とB棟の行き来ができるようになるわけです。建物の破壊を防ぎ、なおかつ行き来ができることを実現したのがEXP.Jになのです。

雨漏れを防ぐEXP.J

これまでに説明したように、EXP.Jは建物のクリアランスに、伸縮可能な継ぎ手を設けたものです。そのため最もシンプルなEXP.Jは、以下のような造りになります。

これでは雨で上の階の廊下が濡れると、雨が隙間から滴ってきます。廊下を歩いていると上からポタポタ雨が垂れてくると歩きにくいので、雨が垂れてこない構造になっています。多くの場合は、中に雨樋がある仕組みになっていて、排水ドレンが端部に設置してあります。多くのマンションのEXP.Jは、雨漏り対策も施されているのです。

壊れるのが前提の仕組み

EXP.Jはマンションに限らず、さまざまな場所で使われています。高架式の高速道路の継ぎ目はEXP.Jですし、複雑な形の建築物では使われていることがほとんどです。そのためEXP.Jと一口に言ってもさまざまな種類があり、仕様も価格もそれぞれです。そしてマンションで使われているEXP.Jは、極めて単純な造りのもので安価なものが使用されています。高価なものを使うと維持費が管理費に跳ね返ってきますし、地震は滅多に起きるものではないのであまり高価なものは使われないのです。

そのためマンションのEXP.Jは水平方向にしか動かず、地震で垂直方向に動くとEXP.Jは壊れてしまいます。なぜ簡単に壊れるものを使っているのかという声があがることもありますが、コストを下げる意味もありますし、どんなEXP.Jでも地震の際に壊れる可能性があります。高いコストを支払うよりも、滅多に起こらない地震で壊れた際に交換する方がコストが安いと考えられるのです。

地震の度に壊れても良い

地震の度にEXP.Jが壊れるので、その度に修理代がかかると怒る管理組合の相談を受けたこともあります。EXP.Jが地震で壊れることは長期修繕計画には予定されていないため、予定外の出費になるので将来的に修繕積立金が上がるのではないかと不安があるからです。しかしEXP.Jは建物本体が壊れるのを防ぐために作られているので、EXP.Jが壊れたのは建物本体の代わりに壊れたのです。建物本体が壊れるよりも修理代は遥かに安く済むので、EXP.Jが壊れた方が良いのです。地震の度に壊れて修理代が嵩むと嘆く管理組合もありますが、建物本体が壊れるとその何十倍もの出費が必要になりかねません。EXP.Jは壊れる前提で作られているのです。

まとめ

EXP.Jは壊れることを前提に作られています。そのため地震のたびに被害が発生することがありますが、EXP.Jが壊れることで建物を守っていて、結果的に損害が少なくなっています。修繕が続くと管理組合としてはうんざりするかもしれませんが、こういったものだということを知って頂きたいと思いました。

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