施工不良があった時に管理組合はどうすれば良いか?

自分たちが住んでいるマンションで施工不良が見つかった時、大抵の理事会は管理会社に相談します。しかし売主か補修を拒否されることもあり、そうなると理事会が中心になって売主や施工会社と協議をします。その時にどのような点に注意すれば良いか、実例を元に考えて見たいと思います。

施工不良が見つかった物件

今回は私が経験した施工不良の事例を元に進めていきたいと思います。しかしあまり詳細に書くと物件名がバレてしまう可能性があるので、大まかな概要と発覚した施工不良の内容を書いていきたいと思います。

物件概要
住所:関東地方
築年数:8年
総戸数:100戸以上(3LDK、4LDKが中心)
構造:鉄筋コンクリート造
その他:準大手 ゼネコン の設計施工です。

トラブルの経緯

地震の際に建物の一部が壊れて、施工不良が発覚しました。幸いにも怪我人などの人的被害はなく、停めてあった自動車に傷がつくなどの物損がありました。売主とゼネコンはすぐに現場を訪問して調査を行っています。このトラブルは鉄筋コンクリートの躯体に関するもので、弁解の余地がない明らかな施工不良であることがすぐにわかりました。ちょっと普通では考えられない施行ミスが見つかったのです。

そのためゼネコンと売主はすぐに非を認め、改修工事を行うことを約束しました。またこの事故によって発生した自動車の破損などの損害についても、全額補償することを決めています。これで解決するかと思われましたが、改修工事のやり方や住民への慰謝料などを巡って、その後の交渉が長引くことになりました。

住民の意見を聞くことが重要

事故が発覚した直後に、理事会は売主とゼネコンの説明を受けています。その時点で、売主とゼネコンは施工ミスであることを認め、改修工事と損害部分についての補償を伝えました。しかし一部の理事から、他の部分にも施工不良がある可能性があるので、建物全体を検査して欲しいという要望が出ました。

建物全体の検査を行うことを売主とゼネコンは了承しましたが、検査のやり方で売主・ゼネコンの提案と理事会の提案が一致しません。さらに理事会が要望した慰謝料は、売主・ゼネコンが提案した額と大きく乖離していて、話し合いが長引いていきました。そのため売主・ゼネコンはまず破損箇所の修理を行ってから、その後の検査のやり方を検討したいと申し出ます。しかし理事会は、全てが合意してから出ないと工事を認めないと主張しました。

この間、理事会は最初にゼネコンの説明の後に、臨時総会を開いて住民に状況を説明しました。しかしそれ以降は、ほとんど住民への説明は行われていません。そのため壊れた部分の改修工事が全く進まないことに、一部の住民が強い不満を示すようになっていきます。危険性があり見た目も悪いので、交渉は後回しにして工事を優先するべきという声は多く、しかも理事会が工事を止めているという事実に怒りを見せる住民もいました。

住民の中にはさまざまな考え方をもった人がいます。そのため全ての要望を受け入れることはできません。しかし要望を聞く機会を設けず理事会だけの判断で交渉を進めていくと、住民の反発を招いてしまうことがあります。

怒鳴り散らせば結論が遅れる

この交渉が長引いた理由の1つに、一部の理事が興奮して怒鳴り散らすことが多かったというのがあります。怒鳴り出すと話し合いにならないため、どうしても会議の時間が長くなりがちです。相手が怒鳴り出した時、慣れている担当者は黙って話を聞いて気が済むまで怒鳴らせます。相手がガス欠になるのを待つのです。興奮した人を落ち着かせるための常套手段なのですが、大抵の場合は怒鳴り続けた人は疲れて話ができなくなります。その結果、結論は次回にまで持ち越されてしまい、なかなか結論が出ないことになってしまいます。

このマンション理事会では、数人の理事が何度も激昂して怒鳴り散らしていました。そのため担当者は黙って話を聞き、3時間以上も怒鳴られ続けられていました。こちらの要望通りの慰謝料を払え、払えないと言うのは誠意がないと言う主張だけで、毎回のように2時間も3時間も怒鳴り続けたため、話し合いは全く進むことなく足踏みが続いたのです。売主やゼネコンの担当者は、相手が激昂している時には新たな提案をしないことがほとんどです。理解されずに変な誤解を生む可能性があるので、ただガス欠になるのを黙って待つのです。

こういった交渉では、相手を怒鳴りつけて萎縮させることで有利に進めることができると言う人もいますが、それは相手が交渉に慣れていない経験の浅い人の場合です。経験豊かな担当者は、怒鳴られたぐらいでは動じません。また動じたように見えても、それは演技だったりします。大抵の場合、興奮して怒鳴り散らすのは話し合いの結論を遅らせるだけで、ほとんど効果がないのです。じっと相手がガス欠になるのを待ち、落ち着いたところで話を始めます。しかし怒鳴り続けた人は体力がなくなっていますし、他の理事にしても何時間にも続く話し合いは気力がなくなっていることがあります。そして何より話し合いが長期化しても、デベロッパー もゼネコンも全く困りません。困るのは管理組合なのです。ですからデベロッパーやゼネコンの担当者は、怒鳴る相手のペースに合わせることなく、自分達のペースで話し合いを続けて行きます。その結果、いつまで経っても結論が出ないことになってしまいます。

慰謝料は思ったより少ない

弁護士によると、慰謝料には相場がないそうです。慰謝料は損害賠償金の一つで、精神的な苦痛を受けたなどの損害を金銭に換算したものになります。慰謝料に相場はないですが、判例によって大まかな金額が設定されます。そして判例を見ていくとわかりますが、高額な慰謝料というのは、なかなかないのです。

このトラブルの場合、売主とゼネコンはそれぞれの顧問弁護士に相談しています。その結果、数十万円の金額が提示されました。しかし理事会はこの金額に激昂し、数百万円を要求していました。弁護士によると、裁判になればさらに安くなるとも言っていました。怪我をするなどの人的被害が出ていないうえに、施工不良が発覚してからすぐに改修することを申し出ているので、精神的苦痛を感じた時期も短いからだそうです。

大企業を相手にしているから高額の慰謝料を取れると考える人もいますが、そういうのはあまり期待できません。あくまでも本人が受けた苦痛が金銭に換算されるのです。そして大企業になればなるほど、法外な金額は払いにくくなってしまいます。なぜなら株主から追求される可能性があるからです。施工不良を起こして顧客の言いなりに慰謝料を払ったとなれば、経営者はその資質を疑われることになります。そのため大企業だからといって、高額な慰謝料を要求しても全く相手にされないことも多いのです。もちろん悪評が広まるのを恐れて高額な慰謝料を払った例もあります。それでも株主総会で株主に説明できないような、法外な金額を払うことはないのです。

住民の合意なしにマスコミに言ってはいけない

このマンションの理事会が犯した最大の失敗は、このトラブルをマスコミにリークしたことでした。理事の1人が何度も「マスコミに言うぞ」と言っていました。理事会がマスコミに話すというのは、売主もゼネコンも止める権利はありません。お話しするならどうぞというスタンスになってしまいます。自分たちの言うことを聞かない売主とゼネコンに苛立った理事会は、某雑誌に連絡して施工不良の話をしました。

その雑誌が発売されると、マンション内で大きな騒ぎになりました。その記事にはマンション名は出ていませんし、物件を特定できる情報は書かれていません。しかし掲載された写真を見れば、近所の人ならすぐにわかるものでした。部屋を売りに出していた住民は、理事会が勝手にマスコミに話たことに怒り理事長を問い詰めました。また資産価値が下がったと怒る住民もいて、マンション内では理事会の勝手な判断に対して責任を追求する人が増えました。

それまでも売主やゼネコンとの話し合いの内容を知らせず、改修工事を延期していたことに不満が溜まっていたこともあり、一部の住民の怒りはかなり強くなっていて、理事長の部屋に押しかける人もいたようです。このようにマスコミに話すのは、住民の理解がなければ思わぬトラブルを招きます。マスコミに話す場合は、住民に説明を行ってから同意を得ていないと、理事会が住民を敵に回すことになりかねません。

まとめ

何より重要なのは、住民に進捗状況を知らせたり住民の意見を聞くことだと思います。全員の希望を聞き入れることはできませんが、耳を傾けて検討したということを示さなければ、理事会が暴走していると取られるかねません。そうなると理事会は交渉相手だけではなく管理組合員とも交渉をすることになってしまい、どのような結末を迎えても感謝されるどころか嫌われることになりかねません。このような交渉は、不動産業界や建設業界に精通したプロの力を借りることも有用です。交渉に行き詰まっている理事会があれば、下記のメールフォームからご連絡ください。

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