秀和幡ヶ谷レジデンスと自主管理の話 /お金のための自主管理は失敗しやすい

今回はリクエストがあり、秀和幡ヶ谷レジデンス(しゅうわ はたがや れじでんす)と自主管理について書いてみたいと思います。こちらのマンションでは管理組合内でトラブルが起こっているようで、訴訟に発展するという話もあります。そしてマンションの自主管理ですが、管理費を節約するお金のための自主管理は失敗しやすいという話を合わせて書いていきます。

秀和幡ヶ谷レジデンスとは

秀和株式会社が分譲したマンションです。1957年に秀和は創業し、1964年に秀和青山レジデンスを分譲したのを皮切りに、秀和レジデンスシリーズを次々に展開していきました。南欧風の青い屋根にスタッコ調の外壁が特色で、現在もヴィンテージマンションの代表格として高い人気を誇っています。

※こちらは秀和松濤レジデンス

秀和幡ヶ谷レジデンスは、1974年に渋谷区幡ヶ谷に竣工したマンションで、SRC造10階建で300戸のマンションです。京王線幡ヶ谷駅まで徒歩7分、京王線笹塚駅まで徒歩8分という好立地に建っています。

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秀和幡ヶ谷レジデンスの報道内容

2020年8月の写真週刊誌FRIDAYに「一等地マンションで住民と管理組合『信じられないトラブル頻発』」というタイトルで掲載されました。報じられた内容を以下に簡単にまとめてみます。

・管理組合の6名の理事が、20年以上にわたり総会での議決権を独占している
・住民は「秀和幡ヶ谷レジデンスを救う有志の会」を結成し、組合と真っ向から戦う構えを見せている。
・住民の証言として
 ①友人を泊めたら入居料5000円
 ②介護ヘルパーも出入り禁止
 ③鍵の受け渡し拒否
 ④賃貸も禁止
・「有志の会」は、集団訴訟を起こすことも検討中
・理事会側は「最近、区分所有者となった一部の方が中心となって、現理事会に対する反対運動を展開しているもの」「住民らの主張はすべて事実無根」と語っている。

理事会側の話も聞いて公平な扱いをしている記事ですが、視点が有志の会側から書かれているので、これを読んで全て事実だと思い込むのは早計な気がします。理事会と一部住民が対立していて、なんらかのトラブルになっていることは間違いないように思います。

秀和幡ヶ谷レジデンスのネットの噂

以前から渋谷区の秀和マンションなのに、販売価格や賃貸家賃が安いのはなぜか?という話がちょくちょく書かれていました。そこでネットに書かれている噂を拾い出してみたいと思います。あくまでもネット上の噂話ですから、これが真実かは全くわかりません。

①入居する前に管理人の面談がある。
 面談時に年収を大声で読み上げられる。
 また、以下の人は面接で拒否されるそうです。
 ・外国人(夫婦の片方でもダメ)
 ・音楽関係の職業
 ・他人との同棲や同居
②友人を泊める際の宿泊料、荷物を出す際の搬出料など不明瞭な料金を請求される。
③引越し業者、デリバリー店、ガス会社などの多くが出入り禁止にされている。
④リフォーム工事の制限が多い。
 例:バランス型風呂釜からユニットバスへの変更が不可。フローリングへの変更も不可。

ネットの噂の信憑性

上記の話はネット上の話ですから、これらの話を鵜呑みにするわけには行きません。例えばフローリングへの変更が不可とあちこちに書いてありましたが、リノベーションでフローリングに張り替えている部屋の写真もあります。何かと行き違いもあるとは思いますが、とにかくこれらの話が全て本当だと思うのはあまりに早計だと思うのです。

また住民を名乗る方からの、以下のような書き込みもありました。

面談といっても内見や入居の時に他のマンションよりもル-ルが厳格化されてるだけで、大袈裟ではないと思います。荷物も大型の家電や家具はエレベーター内や廊下に傷がつかないように届け出が必要で、ヤマトや佐川は普通に配達してくれます。住人以外の人が管理人に止められてどこに行くか聞かれるのは、管理の行き届いたマンションはどこでもそうなのでは? 管理が厳しすぎて面倒だと思う面と安心して住めるという面、人によって感じ方がちがいますので、見学してみるのがいいと思います。(住民を名乗る方のコメント)

このマンションは管理会社を使わない自主管理を行っているため独自のルールが多く、それが厳格に運用されているのは間違いないようです。

安くするための自主管理は間違い

多くのマンションでは、マンション管理を管理会社に委託する形をとっています。そのため管理費には管理会社に支払うお金が含まれています。このお金がもったいないからという理由で、管理会社を使わない自主管理に移行するケースが稀にありますが、管理費を安くするためだけの理由で自主管理にするのは、あまりお勧めできません。

なぜそもそも管理会社に委託するのかというと、専門的な作業や煩雑な作業が多いため、それを管理会社に行なってもらうからです。自主管理をするということは、それらの作業を全部住民が行うということになります。では管理会社の業務とは何かというと、マンション管理委託契約書に記載されています。ここでは国土交通省が出しているマンション標準管理委託契約書を見ていこうと思います。

管理会社の業務

マンション標準管理委託契約書には、管理会社の4つの業務が挙げられています。

①事務管理業務
②管理員業務
③清掃業務
④建物・設備管理業務

①は管理組合の収支予算案、収支決済案の素案の作成です。収支報告書と貸借対照表を作成して、管理組合に提出します。また、毎月の収支報告を書面で行います。その他には管理組合の経費の支払いや、管理費・修繕積立金の収納、管理費・修繕積立金の滞納者がいれば督促を行います。これ以外には、管理組合員の名簿の作成、理事会の運営支援、総会の日程調整、議題の素案作成、通知と出欠の確認、議事録の作成などがあります。

②は管理人の業務になります。工事業者や引越し業者などの外部の人の受付や立ち合い、管理用備品の管理、共用部分の鍵の管理と貸し出し、建物の点検と照明の玉切れの際は交換も含まれます。マンションで管理人さんがやっている仕事全般だと思ってください。

③は共用部の清掃で、どこまでの範囲を行うのかが管理委託契約書に記載されています。日常清掃と特別清掃に分かれていて、どのくらいの頻度で行うかも書かれています。日常清掃は管理人さんが行っているマンションと、掃除専門の人が行っているケースがあります。特別清掃は年に1回か2回おこなわる、専門業者が行う清掃です。外壁の高所清掃や、石材の汚れ取りなど専門業者ならではの項目が並んでいます。

④は建物の点検ですが、管理対象部分の目視点検に加えて法定点検が含まれます。「建築基準法第12条第1項に規定する特殊建築物定期調査」「建築基準法第12条第3項に規定する特殊建築物の建築設備定期検査」「水道法施行規則に規定する水質検査・色度・濁度・残留塩素測定」「浄化槽法に規定する検査」「消防法に規定する検査」などがあります。

増大する理事の仕事

ここまで読んで「何がなんだかさっぱりわからない」と思った方が多いと思います。しかし自主管理を行うということは、自分たちでこれらの業務を行うことです。会計の知識、各法律の知識が必要ですし、何より手間がかかります。全員が年金暮らしのマンションならともかく、仕事をして子育てをしている家族が多いマンションでは、これらの業務を自分たちで行うのは大変でしょう。そのため費用をケチって、膨大な手間が増えたなんてことになりかねません。

自主管理のマンションもあるが

長年、自主管理で運営しているマンションもあり、それらのマンションで業務が大変という話を聞くことはあまりありません。では実際に自主管理を行なっているマンションはどうなっているのかというと、大体2つのパターンに分かれます。

①住民の専門知識と外部コンサルタントを活用している
②必要なことを行っておらず、住民も気にしていない

自分達の手間を惜しまず、費用も掛けて行う①は少数派です。大抵の場合は②で、先に挙げたような法定点検も行政から言われた時にやるだけで、総会を開くこともないので議事録もありません。長期修繕計画は数十年前のままで、それに沿って修繕工事をするわけでもなく、壊れたらその場しのぎの修繕を行います。こんな調子で30年ぐらいやっているマンションは、ちょくちょく見かけます。

何もしなければ費用も掛からず、理事が大変な思いをすることもありません。しかし適切な修繕や検査を何十年も行われないマンションは、静かに死に向かっています。やがて大規模な修繕が必要になった際には、修繕積立金が全く足りないことが発覚したりしますが、そういうことが起こるまでは「自主管理で不満もなく順調です」と、住民は自慢げに語っています。自主管理はそれなりの費用がかかりますし、住民全員が自分達で管理をする覚悟が必要なのです。

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自主管理物件で起こる独裁

上記のパターン②では、理事による独裁が起こることは少ないです。そもそも住民の多くがマンション管理に興味がないので、トラブルになりにくいからです。しかし住民の知識と手間に頼って自主管理を行う①の場合に、理事会の独裁化が起こりやすくなっています。なぜなら一部の住民への負担が大きくなり、何もしない人と激務をこなす人の差が出てくるからです。例えば住民の1人が税理士で、管理組合の収支報告書と貸借対照表を作成したり、毎月の収支報告を行っていたとします。他の人はわからないのでほぼ丸投げ状態で、仕事が忙しい時でも管理組合のために睡眠時間を削って無報酬で作業をすることになります。

以前、暴走する理事長の時にも書きましたが、このように特定の人に負担がかかるようになると、周囲もいつも無理をお願いしているという引け目があり、わがままを言い出しても否定できない雰囲気が出来上がるようになります。こうして管理組合のために時間と手間を掛けている理事達は、自分達が思うように管理組合の運営を決め、それが当然のことのようになってしまいます。

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そのため自主管理物件で同じ人が何年も理事や理事長を勤め、他から見ると特殊なルールを設定したりするなど、独善的な管理運営を行っているケースがたまにあります。住民が反対しても、これまでマンション管理に時間と労力を費やしてきた理事達は、何を今さらという感じで、全く取り合わずに対立することがあるのです。理事長派と反理事長派の争いは、自主管理物件だけでなく多くのマンションでみられることで、それが自主管理物件だと管理会社など客観的に意見を言う第三者がいないので、問題がこじれやすいのです。

まとめ

秀和幡ヶ谷レジデンスで起こっていることは、報道を見るだけではわかりません。理事会が暴走しているようにも見えますが、そうでない可能性も十分にあります。そのため安易な意見を述べることは、ここでは控えたいと思います。一方で、私が経験したマンションの中には理事会や理事長が暴走しているマンションもあり、深刻な対立を生んでいるケースもありました。特に自主管理物件では第三者の意見がなく、法律などに詳しい人の助言もないため、通常では考えられないルールが制定されている場合もあります。こうして管理組合内で対立が起こったマンションでは、対立が深刻化して簡単には解決しないことが多くあります。このような問題で困っている方がいましたら、ぜひ下記のメールフォームからご連絡ください。

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