紹介料は正当な費用なのか改めて考える

以前、建設業の紹介料について書きました。これに対して猛烈な反論が来ています。紹介料はどの業界にも存在する費用であり、正当な対価だという反論です。紹介料がなければ成り立たないという会社もあり、これを悪慣習だとするのは言い過ぎなのだそうです。そこで紹介料は正当な費用なのか改めて考えて見ようと思います。

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紹介料とはなにか

管理会社や工務店などが工事業者に工事を依頼する時に、依頼された業者がお客さんを紹介してもらったお礼に支払うのが紹介料です。これは建設業に限らず多くの業界に存在する費用で、会計処理の勘定科目では交際費になります。当然、違法行為でもなんでもなく、ビジネスをスムーズにするための潤滑剤と言う人もいます。

紹介してくれた人は、いくつもある業者の中から自社を選んでくれたわけですから、そのお礼の意味もありますし、今後も良いお客さんを紹介してくださいという意味がこめて紹介料を払うわけです。紹介料の相場は業界によって様々ですが、紹介してもらった仕事の利益の一部から支払うことになります。支払う側にとっても交際費扱いで節税になるので、今後のビジネスに繋げるために支払うわけです。

紹介料だけでビジネスをする人

このように違法行為でもなく、紹介といのは立派なビジネス活動です。そのため紹介料だけで食べている人もいます。ブローカーと呼ばれる人達です。映画やドラマなどでは悪人のように描かれる事が多いですが、ブローカーは決して悪徳商売ではありません。「まいったなぁ、こんな特殊なガラスをどこに頼めばいいんだ?」と悩んでいる人に良い業者を知ってますよと紹介し、「太物の圧接工事が減ったから資格を返納するかな」とぼやいている人に「圧接工が不足している現場があるから行きませんか?」と紹介するのです。

このようにブローカーは広い人脈を持ち、業界内の様々なニーズに反応して必要な場所に必要な人を紹介する人達で、困った時にはこの人に相談すればなんとかなるという、便利な人であったりします。そのため紹介そのものは決して悪いことではありませんし、紹介料そのもが悪いというわけではありません。

紹介料の問題

もちろん建設業にも上記のような一般的な紹介料もあります。しかしここで私が問題にしたいのは、紹介料という名目で見積りに含まれるお金です。見積書を作る際に管理組合や工務店から紹介料込みで作るようにと指示されることもあり、見積書の項目に紛れ混ませてあるのです。そのため見積書を見ても、紹介料が含まれているのか全くわかりません。

本来、紹介料は業者が工務店に仕事を紹介してくれたお礼に払うものですが、このやり方だと管理組合が紹介料を払っていることになります。発注額に紹介料が含まれているので、顧客に紹介料を払わせるという訳がわからない構図になっているのです。しかも払っている側は見積書に含まれていないため、顧客にはそのような費用を払っているという意識はありません。これが正当な費用だと言うなら、見積書に項目として記載するべきです。見積書に記載があるから、発注者は適切な判断ができるのです。

不透明な工事代金

建築工事の見積書はわかりにくく、複数社から見積書を取っても同じ条件で書かれていない事が多々あります。そのため最も安い金額が書かれているからと言っても、必ずしもそこが安いとは言えない事があり、その工事を熟知していないと比較が難しい事がよくあります。

また相場という言葉がよく使われますが、相場があるようでないのが建築の世界です。特に人件費は時価なので、同じ業者に同じ工事を依頼しても時期によって価格が変わることもあります。そのため管理組合が修繕を依頼して見積書に50万円と書かれていても、それが安いのか高いのかわからない事がほとんどです。そのためこのよう紹介料が上乗せしてあっても、誰も気がつかないのです。こうした事情があるのは、ある意味仕方のない面もあるのですが、これを悪用して不当に高い金額を請求するボッタクリや、ここに書いた紹介料のようなよくわからない金額が含まれている事があるのです。

まとめ

本来は業者が利益の中から支払うのが紹介料ですが、なぜか顧客に払わせる仕組みになっているのが問題です。しかもその金額は見積書の中に紛れ込まされているので、発注する側は全くわからない事がほとんどです。このような紹介料は必要な経費と言い張る業者や工務店もいますが、それならば見積書に明確に記載するべきです。もちろんこのような費用を発注者に払わせるような業者ばかりではなく、本来の形の通りに利益の一部を紹介料として支払っているところもあります。しかし見分けが付かないため、あらゆる建設業者がこのようなことをやっているという誤解も生んでいて、建設業自体に悪影響を及ぼしかねません。このような悪習は、業界の首を閉め続けると思います。

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