誘発目地は建物を劣化から守る大事な部分 /正しい誘発目地とは

鉄筋コンクリート造は頑丈な構造ですが、簡単にひび割れが入ります。何もしなくても必ずひび割れが生じますし、ひび割れがあるからと言って建物が倒壊するわけではありません。必ずひび割れが起こると言うと、えっ!と驚かれるかもしれませんが、必ずひび割れが発生するので誘発目地というのが大事になってきます。今回はその誘発目地について解説したいと思います。誘発目地は建物を劣化から守る大事な部分なのです。

そもそもコンクリートとは

コンクリートとはなんでしょうか。よく セメント 、 モルタル 、コンクリートが混同されて使われているので、まずこれらを整理してみましょう。似たようなものと思われがちですが、この3つは用途が異なるので建築の世界ではきちんと使い分けされています。

①セメントとは

セメントは石灰や石膏、クリンカーなどが混ざった接着剤です。このセメントがモルタルやコンクリートの材料になります。ホームセンターなどで袋に入って売られていて、灰色の粉末になっています。

②モルタルとは

モルタル=セメント+砂+水

モルタルは、セメントに水と砂を混ぜて練ったものになります。モルタルは主に 左官 工事などで使われます。壁に塗ったり床に塗ったりして、平らに仕上げる際に使われるのがモルタルです。

③コンクリートとは

コンクリートは、セメントに砂と砂利、水を混ぜて練ったものになります。厳密には減水剤なども入っているのですが、主な材料はこの4つになります。

コンクリート=セメント+砂+砂利+水

コンクリートとモルタルの違いは、砂利が入っているかどうかだと思えば結構です。コンクリートは建物の構造体になる柱や梁、壁や床を作る時に使われます。モルタルがそれらに使われることはありません。モルタルとコンクリートの見た目は同じく灰色の練ったドロドロのものですが、用途が全く違うものなのです。

なぜひび割れが入るのか

上記のように、コンクリートはセメントに砂と砂利と水を入れて練ったものです。これを型枠と呼ばれる木の枠に入れて、固めることで柱や梁が完成します。水を入れて混ぜ合わせ、水分がなくなると固まるのですから、コンクリートが乾くに従って体積が小さくなります。体積が小さくなる際に、ひび割れが生じてしまうのです。

またコンクリートは熱しやすく冷めやすいという特性があります。夏の昼間は焼けるほど暑くなり、冬の夜は凍るように冷たくなります。温度変化に敏感なコンクリートは、日が当たって暑くなると膨張し、夜になって冷えてくると収縮します。毎日、この膨張と収縮を繰り返していて、長さが50mもある横長の鉄筋コンクリートの建物の長さを測ると、昼と夜で1cm以上違うことなんてよくあるのです。このように膨張と収縮を繰り返すので、ひび割れが発生してしまいます。

住んでいるマンションにひび割れを見つけると、建物が壊れていると大騒ぎする人がいます。お気持ちはわかりますが、コンクリートは何もしなくてもひび割れが起こることを覚えておいてください。

ひび割れによる被害

必ずひび割れが発生するからと言って、放っておいて良いかというと、そんなことはありません。特に外壁のひび割れからは雨水が入り、コンクリート内部に侵入した水は鉄筋を錆びさせてコンクリートの爆裂を起こします。壁がボロボロになってしまうので、ひび割れは早期に塞がなくてなりません。

しかしひび割れが起こるたびに補修工事を行うのは、かなり大変です。外壁の高い場所では、足場をかけなくてはいけないので、費用もバカにはなりません。そこで誘発目地を入れることで、意図的にひび割れを起こして被害を最小限にしているのです。

誘発目地とは

コンクリートに溝を作ることで、あえてその部分を構造的に弱くして、ひび割れを溝の中に発生させるのです。溝の中でひび割れを発生させることで、他の場所にひび割れを発生させないようにしています。実際には誘発目地のすぐ隣にひび割れが発生したりして、誘発目地は建築屋の永遠の課題なんて言われることもあるのですが、それでも誘発目地を入れるのと入れないのでは雲泥の差が出ることが多く、必ず入れておかなくてはならないものになっています。

誘発目地はシーリングで蓋をされるので、ひび割れが生じてもすぐに雨が侵入することはありません。以前、シーリングは防水ではないと書きましたが、目地はシーリングが大活躍する場所です。シーリングを定期的に打ち直すことで、建物への雨水の侵入を防いでいます。

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誘発目地の不足と施工不良

誘発目地は3m内外に取り付けるのが一般的ですが、例えばマンションの外廊下の手摺りなどで全く誘発目地が入っていないことがあります。大抵の場合は3mから4mのピッチでひび割れが発生しています。

またタイルを貼っている外壁の誘発目地は、ごまかしてあることがよくあります。コンクリートにあえて弱い部分を作り、ひび割れを誘発するのが目的なのに、コンクリートに目地が存在せずにタイルの目地をシーリングにしてごまかしているのです。これは全く意味がなく、タイルも一緒にひび割れてしまうことになります。

上図のようにタイルの間にシールを埋めるだけの安易な施工は、あちこちで見られます。これは誘発目地でもなんでもないので、コンクリートにひび割れが生じるとタイルも一緒に割れてしまいます。

上図のように、誘発目地を入れてからシーリングでふさぐようにしないと、ひび割れ対策にはなりません。

また目地が格好悪いと思う設計者や施行者もいて、せっかくコンクリートに目地を入れたのに、それをタイルで塞いでしまっているケースもよく見かけます。確かに誘発目地は機能しますが、これではタイルが割れてタイル剥落の原因になります。タイルが縦一文字にキレイに割れている場合、その下に誘発目地が入っていることがよくあります。

誘発目地が入っていない時はどうする?

コンクリートをカッターで切り、新たに目地を設置します。後から作った誘発目地は、あまり効果がないという意見もありますが、私は後入れでも無いよりは良いと考えています。ここは意見の分かれるところでもあるので、実際に誘発目地で困っているマンションに住んでいる方は、さまざまな専門家の意見を聞いてみると良いでしょう。

まとめ

誘発目地は、ひび割れを誘発する目地で、誘発目地は建物を劣化から守る大事な部分です。タイル面の誘発目地は特に注意が必要で、誘発目地によってタイルが割れることもあります。正しい位置に入っているか確認が必要ですし、入っていなければ売主に相談することをお勧めします。

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