鉄筋コンクリートを蝕む3つの要因

鉄筋コンクリート住宅の寿命は100年以上と言われています。しかし鉄筋コンクリート住宅の多くは100年に満たない時期に取り壊されており、実際には理論的な寿命までもたないと考えられます。そこで今回は鉄筋コンクリート住宅の寿命に影響する、コンクリートに起こる3つの現象を解説したいと思います。

マンションの寿命は何年か

諸説ありますが、70年を超えてマンションを使い続けるのは難しいと思います。日本最古の鉄筋コンクリート住宅は、軍艦島にある30号棟です。1916年に建設され、1974年まで使われていました。実に58年間も使ったことになります。また戦前に建てられた同潤会アパートの三ノ輪アパートメントや上野下アパートメントは、後年はボロボロでしたが実に80年以上も存在していました。しかしこの2つは同潤会アパートの中でも長寿の方で、他の多くはこれより早く解体されています。

以下の図は早稲田大学の小松幸夫教授が、2002年に建築雑誌で発表した建物の寿命です。住宅の平均寿命を残存率が50%になる年月を調査して示しています。この図だとマンションは50年ちょっとで、約半数が解体されるなどして存在していません。もちろん再開発などで寿命が来る前に解体されたマンションもあるでしょうが、100年以上の寿命を維持することは困難だと考えられます。

鉄筋コンクリートを蝕む要因

①中性化

アルカリ性のコンクリートが中性化することで鉄筋がサビて膨張し、コンクリートを破壊する現象です。鉄筋コンクリートに使われる鉄筋は、酸化することでサビが発生します。しかしコンクリートはアルカリ性のため、酸化(サビ)を抑制するので鉄筋コンクリートは安定して強度を発揮できます。しかしコンクリートが中性化することで鉄筋がサビてしまうことが発生します。

コンクリートの中性化の原因は大気中の二酸化炭素です。二酸化炭素がコンクリート中の水酸化カルシウムと結びつき、炭酸カルシウムと水になることでコンクリートが中性化して行きます。コンクリートが中性化すると鉄筋の不動態皮膜が破壊され、鉄筋がサビていきます。鉄筋はサビると最大3倍程度まで膨張するため、コンクリートを破壊するのです。

※中性化によって起こった爆裂の例

中性化は健全な鉄筋コンクリートであっても、経年劣化によって発生します。そのため鉄筋コンクリートにとって避けられない事態で、全ての鉄筋コンクリートで中性化は起こります。中性化の進行を遅らせるためにタイルや塗装などの外壁の仕上げがありますし、かぶり厚(コンクリートの表面から鉄筋までの深さ)が重要になります。

②アルカリ骨材反応

コンクリートが膨張して躯体を破壊するのがアルカリ骨材反応です。コンクリートの材料に使われる骨材に含まれるアルカリ反応性鉱物と、コンクリート中の水酸化アルカリ(ナトリウムやカリウム)がアルカリシリカ反応を起こすことで起こります。「コンクリートのがん」とも呼ばれ、今でも未解明の部分があるため研究が進められています。

※アルカリ骨材反応

アルカリ骨材反応は1940年代にヨーロッパで発見されて、研究が始まりました。日本でも50年代に文献で紹介されています。つまり古くから知られたコンクリートの劣化現象でした。日本では起こることがないと思われていましたが、1980年頃に阪神高速道路公団の関連施設でアルカリ・シリカ反応によるひび割れが発見された時です。これ以降、アルカリ骨材反応の原因や発生後の対応などの研究が続いています。

アルカリ骨材反応が起こると、コンクリート全体にひび割れが発生し、亀の甲羅のような模様が見られることもあります。現在はセメントや混和剤に含まれる水溶性のアルカリ量を測定したり、骨材判定を行うようになっています。そのため近年のコンクリートで発生することはほとんどなく、数十年前のコンクリートで見つかることがほとんどです。

③塩害

一般的に塩害は海岸線に近いマンションが、潮風にあたることから起こります。しかし古いマンションではコンクリート自体に塩分を含んでいたことから、海から遠く離れたマンションでも塩害の被害を受けることになりました。主にコンクリートに使われる細骨材(砂)に塩分が含まれていたために発生しました。

高度経済成長期の初期、神武景気が始まった1954年頃にはコンクリートの需要が急激に高まったため山砂の採取が間に合わなくなり、海砂が使用されるようになっていました。塩分がコンクリートに与える影響が懸念されたため、日本建築学会は1957年に細骨材中の塩分の許容量をNaCl換算0.01%とJASS5の中で定めました。しかし当時は塩分測定器が十分になかっただけでなく、基準そのものがあまりにも厳しかったため守られないまま海砂が使われていくことになりました。

このままではコンクリートが危ないと危惧した日本建築学会は、1975年に規制を緩和して条件付きながら塩分量を最大細骨材の0.1%まで緩和しています。さらに日本建築学会は研究を重ね、1986年に塩化物総量規制を設けることになりました。このため60年代から70年代前半のコンクリートでは海砂の使用はほとんど野放し状態で、60年代後半から70年代半ばにかけて建設された山陽新幹線の新大阪ー岡山間では、後にコンクリート内の鉄筋腐食が多発して大問題になりました。

まとめ

コンクリートを蝕む要因3つを挙げました。この中で現在の新築マンションでも問題になりそうなのは①の中性化と海岸線に近いマンションでの塩害です。アルカリ骨材反応や海砂の使用は現在では皆無と言えるでしょう。特に中性化は今後も問題になる可能性が多く、ある時期から定期的に検査をする必要があります。中性化に関しては別の機会に詳しく書きたいと思います。

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