長周期地震とマンション /新たな脅威となる揺れ

2021年10月7日22時41分、千葉県北西部を震源とする地震が発生しました。震源の深さは75km、マグニチュードは5.9でした。東京都は震度4から5でしたが、帰宅中の人を直撃する形で電車が止まり都心では混乱が見られたようです。そしてこの際に話題になったことの一つに長周期震動という言葉でした。今回は長周期震動について考えていきたいと思います。

長周期地震とは

地震には周期があります。周期とは揺れが1往復するのにかかる時間のことで、規模の大きい地震が発生すると周期の長いゆっくりとした大きな揺れが生じます。この周期が長い地震を長周期地震と呼んでいます。その違いは以下の地震波を比較しても明らかだと思います。

長周期地震は震源が浅く、マグニチュードが7以上の巨大地震の場合に大きくなりやすいと言われています。周期の短い波に比べて遠くまで伝わる特徴があるので、遠方で発生した地震であっても予想外の被害を受けることがあります。さらに広い平野や柔らかい地盤で揺れが増幅されやすく、揺れが長時間に渡って続くという特徴があります。新潟で起こった地震が関東平野を長時間揺らしたこともありました。気象庁では1.6 – 7.8秒の長周期地震動を観測の対象としています。

長周期地震の怖さ

①共振による揺れ

共振とは震動する物体が外部の震動と同期することで、さらに激しい揺れを起こすことです。地震によって建物が揺れている時に、同じ周期の地震動が来ることでさらに大きな揺れを発生させるのです。これは子供が乗ったブランコを押す時の状況に似ています。タイミングを合わせて同じ力でブランコを押しているのに、ブランコの動きはどんどん大きくなっていきます。これは同じタイミングで同じ力を加えることで、どんどん力が加わって揺れが大きくなるのですが、地震と建築物にも同じことが起こってしまうのです。

建築物の共振で必ず話題に出るのは、アメリカ合衆国ワシントン州で、1940年7月1日に開通したタコマナローズ橋です。揺れが激しく、それを抑えるためにさまざまな手法がとられましたが、11月7日に風速19m/sの風が吹いたのをきっかけに大きく捻れながら揺れて、橋が倒壊しました。開通時から激しく揺れていたため注目が集まり、崩壊の瞬間が記録されているため大きな話題になりました。

ただしタコマナローズ橋の倒壊が共振が原因というのは、多くの専門家に否定されています。風は振動が一定ではないため共振を起こして橋を壊すほど長時間に渡って同じ振動が続かないというのです。それでは建物に共振が起こらないかというと、そんなことはありません。以下の映像は揺れ方によって建物が大きく揺れたり、揺れ方が少なくなる様子を模型で表しています。

②高層建築物の増加

関東大震災の後に、建物の耐震強度を考える際に柳のように揺れる建物が良いのか、地震力を上回る体力を備えた方が良いのかを議論する柔剛論争がありました。この時は建築物の多くが低層だったため、建物の剛性を高めることで地震による倒壊を防ぐことが可能でした。しかし時代とともに高層建築物が増えると、これまでに考えなくてよかった長周期が問題になるようになりました。

また被災者の経験値として、高層階に住む人が激しく揺れる地震だけでなく船に乗ったようなゆっくりした揺れを感じることがわかり、長周期が問題になっていきます。そしてこれが一般の人に広く認知されるようになったのは、2004年の新潟中越地震だったと思います。新潟で起こった地震が東京都まで届き、高層ビルのエレベーターを停止させて多くの人が閉じ込められてしまったのです。

長周期地震が起こった日本の例

2003年十勝沖地震

2003年9月26日、午前4時50分頃に北海道襟裳岬東南東沖80km、深さ45kmを震源とした地震が発生しました。マグニチュード8.0で最大震度は6弱でした。津波が発生し、その津波による死者が1名出ています。この時発生した長周期地震により、苫小牧市の石油コンビナートでスロッシング(タンク内の石油の共振)が発生し、石油が溢れて火災が発生しました。

防災白書に記載された内容

2004年新潟県中越地震

2004年10月23日、新潟県中越地方を震源(震源の深さは13キロ)としてマグニチュード6.8の地震が発生しました。95年の阪神淡路大震災に続き、観測史上2回目の震度7を記録しました。

※六本木ヒルズ

東京は震度3でしたが、長周期震動により六本木ヒルズのエレベーター6基が緊急停止し、そのうち2基で乗客各1名が一時閉じこめられました。原因は地震動によるワイヤの共振と見られ、安全装置のガバナロープが本体に絡むなどしてエレベーターが止まったようです。この時に長周期地震が大きく報じられ、一般にも知れ渡ったように思います。

内閣府のページ

2011年東日本大震災

2011年3月11日、太平洋の三陸沖を震源としマグニチュード9.0から9.1で、最大震度は7を記録しました。死者行方不明者はは18000人を超え、戦後最悪の自然災害となりました。この東日本大震災では津波の影響が大きな話題になりましたが、長周期地震も広範囲で起こっていました。ただし短周期の揺れが主体だったため、長周期による建物への被害は限定的でした。

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行政の対応

国土交通省では南海トラフ地震による長周期地震の対策を発表しています。技術的な解説も別ページにありますが、ここで注目したいのは国土交通省が設定した対策エリアです。関東地域、静岡地域、中京地域、大阪地域と4つに分けてエリアを設定しています。

超高層建築物等における南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動への対策について

東京都の都市整備局市街地建築部は、リーフレットを発行して長周期地震に警鐘を鳴らしています。表紙に「超高層建築物等の所有者等の皆様へ」と書かれていますが、マンションの住民に対しても必要な情報が掲載されています。東京都では国土交通省が指定したエリアに建つ60m以上の超高層建築物(概ね20階建以上)、4階建以上の免震構造の建築物で長周期地震の影響を受けるおそれがあるとしています。

長周期地震対策を進めるために

マンション向けに室内の転倒防止対策や支援制度などについても触れていますので、マンション住民にも参考になると思います。

まとめ

長周期地震は近年になって注目されている地震です。存在は古くから知られていましたが、高層建築物の増加とともに注目されるようになりました。これまでにも長周期地震による被害は起きており、特に超高層マンションでは注意が必要になっています。国土交通省や東京都からも資料が出ているので、是非ともご一読ください。

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