防音室を設置して起こった騒動 /マンションの耐荷重

マンション内のトラブルで、相談がありました。正直、私にできることはあまりなかったのですが、騒動の内容が他でも起こりそうなことだったので、ここにまとめてみたいと思います。問題の発端は、マンション内にピアノを弾くための防音室を設置したことから始まりました。

騒動の概要

中古で購入したAさん

築18年のマンションが舞台です。Aさんがこのマンションを中古で購入し、リフォーム工事を行って入居しました。この時にAさんは室内でピアノが弾けるように、防音室を設置しています。きちんとしたメーカーの防音室で、専門業者が施工を行いました。防音室の工事そのものには、なんら問題はないようです。ピアノはアップライトピアノで、防音室としてはやや大きめのタイプでした。

真下に住むYさん

Aさんが購入してから約2年後に、真下の部屋に住むYさんがリフォームを行うことにしました。室内の汚れや痛みが激しかったことに加え、子供達が独立して夫婦だけになったので思い切ってリフォームすることにしたのです。Yさんの部屋の大部分が解体され、コンクリートの躯体が見えてくると、天井や梁のコンクリートにヒビが入っているのが見つかりました。

リフォーム業者はひび割れが多いうえに大きいものもあったので、Yさんに連絡しました。対応に困ったYさんは管理組合の理事長に連絡し、理事会のメンバーがYさんの部屋を見にくることなりました。しかし理事会もどうして良いかわからず、管理会社に連絡して見にきてもらうことにしました。

管理会社の対応

ひび割れが多いことを気にした管理会社の担当者は社内で相談のうえ、建築士に調査を依頼することにしました。建築士と理事会が協力して調査をしたところ、上階のAさんの家に設置されている防音室が、設計荷重を超えていることが原因ではないかとなりました。理事会は建築士の調査報告書を元に、Aさんと面談を行います。

責任の所在がわからなくなる

理事会で面談したAさんは、防音室は業者に確認をとったうえで設置したもので、問題ないと言われたから設置したと主張しました。コンクリートにヒビが入るようなら設置するはずがなく、責任は設置した業者にあると言います。そこで理事会は施工業者に連絡を取りますが、業者はAさんからの依頼があったので設置したに過ぎないと言います。「問題ない」と言ったのは、マンション内に設置可能か心配していたAさんに対して、マンションでも設置できるから問題ないと説明したに過ぎないと言います。業者は自らには何ら責任がないと主張しました。

Aさんも業者も責任を認めず、Yさんの部屋のリフォームは止まったままになってしまいました。そこで理事の1人がマンションの修繕積立金で補修工事を行うことを提案しましたが、大多数の理事から反対されました。責任が明確になったいない状態で、安易に修繕積立金を使うべきではないと言うのです。

設置された防音室はどんなものか?

資料を見ると、防音室は国内メーカーのものでした。カタログ重量は610kgですが、オプションの床パネルなどを加えて約680kgになっています。防音室の床面積は1.8m×2.3mになっていました。防音室そのものは標準的な仕様より少し良いものになっていて、そのためAさんがピアノを弾いていることを他の住民は知らなかったようです。

そしてピアノですが、スタインウェイというとても高価な海外製のものでした。国産のアップライトピアノと比較しても、少し重くなっていて290kgあります。Aさんは、お子さんとピアノを弾くこともあったようで、Aさんの体重を60kg、お子さんの体重を30kgと仮定します。すると防音室+ピアノ+Aさんとお子さんの体重の合計は1060kgになります。実際にはイスなどの重さも加わるのですが、1トン以上の重さが1.8m×2.3mの床にかかっていることがわかりました。これは1㎡あたり256kgの重量がかかっていることになります。

マンションの床の設計荷重は180kgf/㎡、つまり1㎡あたり180kgの重量に耐えるように設計されているのです。そこに256kgの防音室の重さが加わったので、重量オーバーにより下の階のコンクリートにひび割れが入ったという結論に至ったようです。

本当に防音室がひび割れの原因なのか

ひび割れの入り方にはさまざまな種類があり、それによってある程度は原因が特定できます。今回のひび割れを見ると、上からの重さによってひび割れが入っている可能性が高いと判断できるひび割れの仕方でした。そこに設計荷重を超えた重さが乗っているので、建築士が上階の防音室が原因と思われると報告したのは妥当に思えます。

しかし考えてみると180kgf/㎡というのは、あまりに小さい数字です。大人の体重を60kgと仮定すると、大人4人がコタツに入ったら超えてしまう重さです。256kg/㎡にしても大人4人で超えることがあります。コタツに入ってマンションのコンクリートにひび割れができたという話は聞いたことがありませんし、起こるはずもありません。ですから256kg/㎡の重さで本当にマンションのコンクリートにひび割れができるのか疑問が残るのです。

実際の耐荷重は何kg/㎡なのか

256kg/㎡の荷重の問題もありますが、以前から入っていたひび割れの可能性もあります。実際の耐荷重が何kg/㎡になっているかは構造計算書を見なければならず、それは建築士にも難しいことです。構造設計士でなければ構造計算書を読み解くことはできません。すでに管理組合内で責任問題に発展しているので、構造設計士に構造図と構造計算書を見てもらうようにお勧めしました。理事会は建築士の紹介で構造設計士と面談し、今後の対応を協議しているところです。

過大な積載はトラブルの元

室内にあまりに重いものを持ち込むと、トラブルの原因になりかねません。そのマンションで実際に耐えられる重さは構造計算書を読み解くしかなく、軽々しく何kgなら大丈夫といったことを言うわけにはいきません。防音室の業者によっては、これらのことを軽々しく口にしますが、彼らが責任を取ることはないので依頼するときは十分に注意しましょう。

防音室以外にも重量物はたくさんあります。水槽やウエイト・トレーニングマシン、金庫、飾り棚などのインテリア、持ち込まれるものはさまざまです。購入する際には重量に注意をするようにしましょう。

管理組合はどうすれば良いのか

とても悩ましい問題です。解決の糸口が見えないままになっているので、Yさんの家のリフォームは中途半端なまま止まっていて、住める状態ではありません。早急に結論を出さなくてはならず、構造設計士と面談をしている段階ですが、早急に誰に依頼するかを決めて決定しなくてはなりません。もし防音室の重量がひび割れの原因となれば、管理組合としてはAさんに損害賠償を求めることになるでしょう。業者に責任を追求するのはAさんになります。しかし業者が責任を認める可能性は極めて低く、裁判でも行わない限りは無理だと思われます。

ひび割れの原因が重量ではなく、経年や地震によるものであれば管理組合の修繕積立金で負担することになります。ひび割れが進行しているのか止まっているのかも重要で、それによって対応の仕方が変わります。そこでひび割れの調査と重量が原因なのかの調査を同時に行い、重量が原因であったとしても一旦は管理組合の費用負担で修繕工事を行うように提案しました。修繕費用の請求は後からでも可能なので、まずはYさんが自宅に住めるようにすることが先決だと思います。この件は理事会でもさまざまな意見が出ているので、進展があれば追記したいと思います。

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