デベロッパーの本気度はアフターサービスを見ればわかる
マンションを企画し販売するマンション デベロッパー の多くは、顧客重視の姿勢を打ち出しています。しかしそれがどれくらい本気なのかは、なかなか分かりません。単に耳障りの良い宣伝文句として言っているだけかもしれないのです。しかしアフターサービスを見れば、どれだけ顧客を大事にしているかがわかります。今回は、デベロッパーの本気度はアフターサービスを見ればわかるという話です。
アフターサービス部門とは
デベロッパーによって組織の名前は違いますが、アフターサービスをするための組織を持っています。これは売主が負う 瑕疵 担保責任に対応するためであり、販売したマンションの入居者からのクレームに対応するためです。大手のデベロッパーではアフターサービスだけを行う人の組織がありますが、中小のデベロッパーでは建築を担当した人がアフターサービスも兼任していることが多いようです。また組織を流動的に活用する目的で、あえて建築担当者とアフターサービスの担当を兼任させている場合もあります。たまにアフターサービス専門の知識を持っているかが重要と言う人もいますが、私は必ずしもそうだとは思いません。
デベロッパーのアフターサービス部門では、竣工後の定期点検や個々のクレームへの対応を行います。販売するまでは営業マンがお客様との接点ですが、入居後は管理会社の次にアフターサービス部門の担当者が入居者と接点を持つことになります。ドアが開かなくなったとか、インターホンの調子が悪いといったことがあると、多くの入居者は管理人に言ったり管理会社に連絡します。しかし管理会社はデベロッパーのアフターサービス部門に連絡をするだけで、実際の対応はアフターサービス部門の担当者が行っているのです。
デベロッパー内で不人気のアフターサービス部門
デベロッパーに勤務したことがある人なら分かると思いますが、自分から望んでアフターサービス部門に配属になる人は少数です。むしろ辞令でアフターサービスセンターへの配属が出たら、転職を考える人もいます。なぜこんなに人気がないのでしょうか。
①とにかく怒られる
仕事の何割かは怒られることになります。クレームの電話がかかってきた時点で入居者は怒っていて、ひたすら謝罪することから始めなくてはならなくなることがあります。しかもほとんどの場合は自分が悪いわけではなく、原因はゼネコンの施行ミスであったり、営業マンのデタラメな売り文句だったりします。自分には非がないのに、延々と怒られることになるので、アフターサービス担当になることは敬遠されがちになります。
②あまり褒められない
もし営業マンが難しい交渉をまとめて契約に結びつけたら、上司をはじめ社内で称賛されることになります。しかしアフターサービスで怒り狂う入居者に丁寧な対応をして、誤解を解くなどして和解に持ち込んでも称賛されることはほとんどありません。なぜなら会社には、1円も入ってこないからです。「ご入居者にご納得頂き、この件は解決です」と上司に報告しても「こっちの件は、どうなってる?」と、実にそっけないことを言われた経験がある人も多いでしょう。
③社内での評価が低い
アフターサービスを全力で頑張っても、会社には1円も入ってきません。それどころかお金を使うので、経営を圧迫する金食い虫と思っている人が社内にいたりします。アフターサービスの対応には、お金がかかることが多々あります。雨のたびにエントランスに雨水が侵入するマンションの対応をしたことがありますが、なんと自社の担当者の間違った指示が原因の1つでした。そのため補習費用を負担することになり、その金額は数百万円にもなりました。
この数百万円は、マンションを販売して得た利益から払われます。営業マンが苦労して販売して生んだ利益を、あっという間に使ってしまうのです。こうして利益の何割かをあっという間に使ってしまうアフターサービス部門を、苦々しく思っている人もいて、常にもっと支出を抑えるようにとプレッシャーを受けることになりがちです。頑張って仕事をしても、評価されないことがあるのです。
人材の墓場と化してしまうアフターサービス部門
このように頑張っても評価されることが少なく、入居者に怒られて頭を下げ続けるアフターサービス部門は人気がなく、他の部署で使えない人材が集められることがよくあります。会社としては正社員を辞めさせることができないので、辛く苦しい部署に配置して自主退職をするように仕向けるのです。
その結果、あまり実力のない社員ばかりになってしまい、社員の墓場のようになっているケースが多々あるのです。こうなると辞令が出ただけで、自分がダメ社員の烙印を押されたと思う社員も出てくるようになります。また毎日のように怒られることが続くと、うつ病になる社員も出てくるので退職者も増えていきます。こうなると職場の空気は悪くなる一方ですし、社員のモチベーションは下がる一方です。
アフターサービスとは営業活動だ
このように社員の墓場と化してしまうアフターサービス部門を抱えている会社は、大きな問題を抱えていると言えるでしょう。アフターサービスセンターにクレームが入った時点で、入居者はデベロッパーに対して疑心や不満を抱えていることがほとんどです。そのため対応を間違えると、デベロッパーの悪評が広まることになります。悪評の広まり方に「3:33の法則」というのがあります。商品やサービスに満足した人は3人の人に話し、不満がある人は33人に話すというものです。この数字が妥当なのかはわかりませんが、悪評の方が広まりやすいということです。アフターサービスは、この33人を減らす営業とも言えるのです。
営業に比べてアフターサービスは評価されにくいと書きましたが、アフターサービスの仕事に比べると、ある意味では営業の仕事なんて簡単です。営業はチラシを打ったりネットに物件情報を掲載して、興味がある人が販売センターに連絡してくるところから始まります。営業は、もともと興味がある人を自社のファンにするのが仕事なのです。
一方でアフターサービスは、自社を嫌っている人をファンにするのが仕事になります。この意味で、アフターサービスの仕事がいかに難易度が高いかわかるでしょう。それなのに各部署で使えない人材を集めているような会社は、顧客に目を向けていないのです。とにかく誰かを行かせて謝罪させておけばどうにかなると考えていて、嫌な言い方をすれば適当にあしらっておこうと考えているわけです。
メジャー7のある1社は、10年以上前にアフターサービスセンターの社員を全て営業マンに入れ替えました。顧客との最前線で、難しい交渉をするのは優れた営業マンでなければ無理だと判断したからです。しかし建築の知識がない営業マンでは対応が難しいので、品質管理課と二人三脚でクレーム対応をしています。こういうデベロッパーは、本気で顧客に向き合うことを決めたと言えるでしょう。
まとめ
会社の方針がわかりやすいのが、アフターサービス部門です。顧客重視を掲げていても、アフターサービス部門の社員が頼りない人ばかりだったり、対応が極端に悪い会社は顧客に目を向けていないと思って良いでしょう。反対にしっかりした人がやって来る会社は、顧客に対して本気で目を向けている可能性が高いです。
これは社員個人の資質の問題もありますが、会社の方針や考え方の方が大きく影響します。どんなに優れた社員でも連日のように入居者に怒られ、会社ではなんとかしろという曖昧な指示だけで解決が長引くような会社だと、誰だって病んでしまいます。そのためアフターサービス部門は、会社の方針や考え方が見えてくるのです。
痛感いたしますね、上長とかの対応を見るとどのような考え方なのかが、わかります。建築部門の失敗を隠して後はクレームが来たら建築のお偉いさんから「ゼネコンさんの施工が悪いんだろ?アフターサービス部門で何とかしろ、金はでないからな」みたいな。前々職が売主&設計&施工&販売&アフターサービスの完全自社供給体制の会社にいたから自分からはとても考えられない指示でした。徹底的にクレーム解析追及をして品質管理&アフターサービスを兼務していた会社にいたので管理責任者が来て何か検査に引っかかると現場を止められ、即ワンマン社長に報告という体制の現場所長をやっていたので緊張の連続でした。何が正しくて何が間違っているかをはっきりとさせる勇気って必要だと今回のブログを見て改めて思いました。。