大手だからといって信用できない /でも大手から買う方が良い理由

マンションを買う際に、売主や施工会社を気にする人は多いと思います。ここで議論になるのが、人生一度の買い物だから安心できる大手から買うべきという意見と、大手は経費が高いので割高になるから避けるべきという意見の対立です。この議論には双方に正しい言い分があり、一概にどちらが正しいとは言えない面があるのですが、私は可能なら大手の物件を選ぶことをお勧めします。大手だからといって信用できないのですが、それでも大手から買う方が良い理由について書いてみたいと思います。

そもそも大手とはどの会社のことか

大手 デベロッパー や大手 ゼネコン という言葉はあちこちで聞かれると思いますが、果たしてどの会社が大手なのでしょうか。そこでマンションデベロッパーの大手7社で構成されるメジャーセブン、ゼネコンは大手5社のスーパーゼネコンを知れば大手がどこかがわかります。

①メジャーセブン

分譲マンションの大手7社で構成されます。この7社で全国の分譲マンションの3割を供給しているそうです。

※引用元 MAJOR7のwebサイトより

7社の構成は次の通りです。住友不動産(株)・(株)大京・東急不動産(株)・東京建物(株)・野村不動産(株)・三井不動産レジデンシャル(株)・三菱地所レジデンス(株)。各社の順序はMAJOR7のwebサイトに記載されていた順序です。この7社がマンション分譲の大手と呼ばれている企業です。

②スーパーゼネコン

完工高が1兆円を超える5社が、スーパーゼネコンと呼ばれています。5社は以下の通りです。清水建設・大林組・大成建設・鹿島建設・竹中工務店。この5社の完工高は6位以下の2倍以上になっていて、飛び抜けて大きいゼネコンというのがわかると思います。ゼネコン大手という場合、この5社を指します。

これに準大手と呼ばれるゼネコンが続きます。長谷工コーポレーション・五洋建設・フジタ・戸田建設・前田建設工業・三井住友建設・西松建設・NIPPO。さらにその下に中堅ゼネコンが続きます。安藤ハザマ・東急建設・熊谷組・奥村組・鴻池組・東亜建設工業・銭高組・鉄建建設・浅沼組などで

す。

デベロッパー次第のマンション品質

デベロッパーはマンション品質に関して、独自に基準を決めていることがあります。そのような独自ルールを決めるのは大手デベロッパーに多く、中小のデベロッパーでは設計事務所やゼネコンにお任せになっていることがほとんどです。独自の基準として有名な物の1つに三菱地所レジデンスの「チェックアイズ」があります。チェックアイズは設計・施工状況・完成時・アフターサービス時などに分かれており、細かな仕様が明記されています。これらは建築基準法に基づく行政機関のチェックとは別に、三菱地所レジデンスが独自に行っているものです。

このような独自基準は野村不動産や大京、住友不動産などでも定められていて、行政機関の検査とは別に独自の厳しい検査を実施しています。当然ながらこれらの仕様や基準は建築基準法で定められていない細かな部分を規定したり、また基準法より厳しい基準で適応されます。そのため工事代金も普通のマンションより高くなる傾向にあり、販売価格も上昇することになります。そしてデベロッパーがどれほど厳しい基準を適用しても、それを施工するゼネコンが基準通りできなければ絵に描いた餅になってしまいます。

所長次第のマンション品質

大手ゼネコンは準大手以下のゼネコンに比べると、抱えている業者の質が高く施工技術も頭ひとつ抜きん出ています。大手ゼネコンから仕事を請けている業者は、鳶であっても大工であってもクロス屋であっても技術レベルが高いところが多いです。そのためデベロッパーが高い水準の施工レベルを求めた時、大手ゼネコンだと安心して任せることができます。しかしどんな大手であっても、マンションの品質は所長のスキルが大きく影響するのです。

私の経験ですが、スーパーゼネコンの1社が施工を担当することになったのですが、所長は民間分譲マンションは初めてでした。ゼネコンは大手になればなるほど分業化が進んでいます。所長は設備や電気はそれぞれの専門の担当に任せていれば大丈夫だと思い込み、自ら工事の進捗や管理を積極的に把握することはしていませんでした。その結果、建築の施工図と設備図に不整合が起こってしまい、現場で勝手に合わせてしまうことがありました。

最悪だったのは部屋内の配管図とユニットバスの配管が合わなくなってしまい、ユニットバスの配管を勝手に変更してしまったことです。ユニットバスの配管は工場で漏水検査を終えて設置されます。それを勝手に変更してしまうと、検査の意味がなくなってしまいました。ユニットバスを全交換しなくてならず工期が滅茶苦茶になり、竣工日に間に合うかギリギリの勝負になってしまいました。これは所長の認識不足によって起こったトラブルで、分譲マンションに不慣れな施工管理体制が招いたものです。大手であっても所長の手腕によって、施工品質は不安定になってしまうのです。

大手で発生した施工不良

大手が手掛けたマンションで施工不良が発覚した例としては、2013年に発覚したザ・パークハウス グラン 南青山高樹町が有名です。東京港区青山の一等地に事業主が三菱地所レジデンス、施工が鹿島建設建設という大手が組んだ物件でした。しかしスリーブの入れ忘れによりコア抜きを行ったため、鉄筋を切断していることがわかりました。その数が多すぎたため補修工事ができず、結局は建て替えになってしまいました。

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また2007年にも千葉県市川市の再開発で建設されていたザ・タワーズ・ウエスト プレミアレジデンスでは、配筋の間違いが発覚して大幅な補修工事を行うことになりました。この物件は売主には野村不動産や三井不動産レジデンシャルが名前を連ね、施工は清水建設が行い、設計管理は日建設計という日本の大手が集結していました。ことの発端は些細なミスですが、それを清水建設も日建設計も見過ごしており、住宅性能評価の検査で発覚しました。

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なぜ大手の施工ミスが多いのか

施行ミスは大なり小なりあちこちの物件で起こっており、補修工事などの対応に追われている物件があります。しかしそれらが大きく報じられることはありません。それらの物件は街のランドマークになるような物件でもなければ、販売時に一般紙が報じるような高級物件でも注目物件でもないからです。さらに誰も聞いたことのないようなゼネコンのミスを取り上げても記事になりません。入居後にミスが発覚し、多くの住民が困るような事態になればニュースになりますが、工事中のミスが発覚しても補修工事を行ってしまえば完了です。上記のザ・タワーズ・ウエストの施行ミスは、市川市のランドマークでもなく清水建設や日建設計が携わっていなければ、さほど注目されなかったでしょう。

施行ミスは中小のデベロッパーの物件でも、中小のゼネコンが施工している現場でも起こっています。しかしそれらはニュースバリューがないため報道されていないのです。もし大手ばかりが施行ミスを繰り返しているという気がするなら、それは報道されている量が違うのでそうのように感じているだけなのです。

それでも大手を勧める理由

大手を勧める最大の理由は、入居後に施行ミスが発覚した際の対応が違うからです。2015年に発覚した三井不動産レジデンシャルが販売したパークシティLaLa横浜では、杭が支持層届いておらず建物が傾くというトラブルがありました。三井不動産の対応が悪いと散々言われていましたが、それでも売主の費用負担で建て替えるという決断ができたのは、三井不動産レジデンシャルという体力に余裕がある会社だったからです。

これが中小のデベロッパーであれば、費用負担して建て替えるという思い切った対応はできなかったでしょう。そんなことをすれば倒産しかねません。また大手なら倒産するリスクが低いというのもあります。売主や施工したゼネコンが倒産した後に致命的な施行ミスが見つかった場合、建て直しなど望めるはずもありません。2009年に住宅瑕疵担保履行法が施行され、売主が倒産しても 瑕疵 担保責任が履行されるようになりました。しかしこの法律の適用で建て替えのような抜本的な救済が行われた例はないと思いますし、そもそも倒産しないという安心感の方が大きいと思います。大手が販売するマンションは割高ですが、こういった時の保険と考えることもできます。

まとめ

マンションは大手から買うべきと言うつもりはありませんし、大手を絶対的に信頼するわけでもありません。大手は経費がかかるので販売価格が高くなりますし、そもそもマンションを買う際には場所が重要になるので、希望するエリアでは中小デベや中小ゼネコンの物件しかない場合もあります。「大手だからといって安心できない」という戒めは忘れてはなりませんし、どんな物件であっても施行ミスが発生するリスクは存在します。大手には大手の良さがありますし、それを理解したうえで物件選びの参考にして頂けると幸いです。

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