億ションと億ションになったマンションの違い /違いは誰が企画したか

販売価格が1億円を超えるマンションを億ションと呼んだりします。一等地に豪華な設備や仕様を施し、超高級の名に相応しいマンションです。一等地の多くに億ションがありますが、単に価格が1億円超えというだけで、中身はさまざまなものがあります。

億ション販売に困る営業マン

私が以前いたデベロッパーでも、億ションを販売したことが何度かあります。場所も様々ですが、昔からのお金持ちが多いエリアに建てた億ションでは、販売を担当した営業マンが苦戦することが多々ありました。原因の多くは生活レベルやスタイルが違いすぎて、営業時に会話が成り立たなくなるのです。

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シルクの洗濯

ある営業マンは、来場者からユニットバスの乾燥機でシルクを乾燥させると縮まないかと質問されて、答えに困りました。シルク製品など持っていないので、洗ったり乾かしたりしたことがないからです。

今の住まいではどうしているのかと尋ねると、今住んでいる賃貸マンションにはシルクが平干しできるランドリースペースが設置されていて、いつもシルクのパジャマはそこで乾かしているのだそうです。そこにいた販売部隊の社員はシルクのパジャマをどうすれば良いか誰も分からず、ただ困惑するだけだったそうです。誰もシルクのパジャマなど持っておらず、シルクに関する質問など誰も想定していなかったからです。

ガスコンロのサイズ

またある営業マンは、来場した女性からコンロの交換が可能か質問されました。交換できるコンロのカタログを見せて説明すると、どれも小さすぎると言われてしまいます。聞くとホームパーティーの際にはいつもパエリアを作っていて、パエリア用のフライパンが置けないと困るとのことでした。しかしカタログにあるコンロは国内製品としては最大のもので、これ以上大きいものはありません。来場者から、今住んでいる賃貸マンションのコンロのメーカーを聞くと海外製らしく、誰もわかりませんでした。

また別の営業マンは、やって来た初老の夫婦を120平米の部屋に案内したところ、奥様が真顔で「こんな狭いところで、皆さんどうやって生活されてますの?」と質問されたそうです。苦笑いしつつも自分は70平米のマンションに家族4人で暮らしていると言うと「生活の知恵ですね。詳しく教えていただけますか?」と品よく質問され困ったそうです。

ここの営業マンは百戦錬磨の者ばかりで、お金持ちを気取って嫌味を言う人などは上手く扱えますが、経験のない本当にわからないことを質問してくるので、自分たちの手に負えないと言っていました。

億ションを企画する人の差

私がいたデベロッパーの社員は、良くも悪くも庶民の集まりでした。お金持ちの家の出身もいましたが、親が大手企業の偉い人だったりという程度で、古くからのお金持ちの家系という人はいませんでした。高収入の家庭出身であっても、いわゆる上流階級の人というのは皆無でしたので庶民的なマンションの企画には向いていました。

しかし世の中にはお金持ちの家系出身の人もいて、生まれながらお屋敷にしか住んだことがないという人もいます。例えば億ションを販売していた時に、「こんな狭い家でどうやって生活をするのか?」と真剣に質問した方がいました。120㎡のマンションでしたが、その方の家のリビングより狭かったのです。リビングより狭い空間に、寝室やトイレやお風呂がひしめく空間で、どうやって生活すれば良いのか検討もつかないのは当然でしょう。

広く豪華な家にしか住んだことがない人が、いかに快適に過ごすかを考えた億ションと、土地の価格や建築費から考えて1億円以上の価格にしなくてはならないので、とりあえず豪華な仕様にしてみたというマンションでは、根本的な思想が違うのです。単に広いだけで1億円というマンションや、無駄に豪華な仕様を貼り付けただけのマンションなど、億ションと言ってもさまざまなのです。

これは海外のリゾート地などでも、よく言われます。働くことなく不労所得で生活し、時間とお金を持て余した富裕層が、いかに暇を潰すかを考え抜いた高級リゾート施設が海外にはあります。一方で、企業が利益を上げるために考え抜いたリゾート施設は、国内にも海外にも沢山あります。この両者は、余暇を過ごす際に決定的な違いを感じると言われています。マンションも同様で、企画する人の差が大きく出てしまうのです。

億ションになったマンションの大変さ

一等地の難しい土地を割高で購入してしまい、建設費用も割高になって結果的に億ションになってしまうマンションがあります。こういったマンションは後付けでマンションのウリをつけて、さも最初からそういうコンセプトだったように言いながら販売をすることになります。そして先に書いたように、来場者の素朴な疑問に戸惑いながら販売することになってしまいます。

最上階の販売価格は1億円を超えているとはいえ、単に下の階の5000万円の部屋を2つか3つくっけて1億円とか1億5000万円になっている部屋もあり、そういった部屋の販売は多くの場合に苦戦します。これらの部屋は単に価格が高い広い部屋と見なされ、億ションを見慣れている来場者からは敬遠されがちです。そういう部屋を売り切らなくてはならない営業マンは、当然ながら苦労することになります。

まとめ

億ションと言われるマンションには、富裕層がいかに贅沢な暮らしができるかを考えて作られたものもあれば、単に地価や建設費などの都合で億ションになってしまったものがあります。その差は歴然としていますが、それでも不動産屋はなんとか売ってしまわなければなりません。億ションと億ションになったマンションは別物なのですが、玉石混交の状態で市場に出ているのが現状です。

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