マンションの価値は住人の生き方で決まる

マンションの資産価値が、よく話題になります。以前にも書いたように、資産価値は住宅を買ううえで重要な要素で、転売や賃貸に出す予定が無くても無視はできないのです。そして資産性は、住人の生き方が影響してきます。今回はそれぞれの生き方が、マンションの価値を左右するという話を書いてみたいと思います。

資産性の大きな要素・立地

正直言って、マンションの価値は立地による部分が大きく、立地さえ良ければ古かろうが多少汚かろうが、高値で販売したり貸したりすることができます。しかしマンションを買う際に、資産価値だけで購入する人ばかりではありません。親の面倒を考えて実家の近くに買う人もいれば、利便性より静かな環境を求める人もいます。マンションを買うことは人生設計の一部ですから、資産性だけで判断するわけではないからです。

それでは最高の立地以外でマンションを買った人は、資産性を諦めなければならないかというと違います。築年数による価格下落を少しでも抑え、多くの人が欲しいと思う住宅にしておくことで、資産性をある程度は保つことができるのです。

マンションの価値とは

マンションの価値を決めるのは市場です。どれだけ多くの人が、そのマンションを買いたいか、借りたいかで価値が変わります。どんなに高級地にあって、相場が高いと言われていても、売りに出して誰も買いにこなければ価値がないことになってしまいます。そもそも相場というのは、同じエリアにある同じぐらいの広さや築年数のマンションがいくらで売れたかという実績から導き出されます。そのため相場より高く売れるマンションもあれば、相場より安くなるマンションも存在します。

ではマンションを売りに出した時に、仲介業者はどこに売り込みを掛けるかご存じでしょうか。まず最初に売り込みを掛けるのは、同じマンションに住む住人にです。マンションの掲示板に売り出し情報のチラシが貼られているのを見たことがある人もいると思います。同じマンションの住人なら、そのマンションの良さや難点を理解しており、ほとんどセールストークなしで販売できるからです。高齢になった親を自分の近くに呼びたいという人や、結婚した子供達に近くに住んで欲しいと考える親などが、自分たちが住むマンションが売り出されたら反応します。

同じマンションに購入希望者がいない場合、次に売り込みをかけるのはマンションの近隣です。理由は上記と同じで、とにかく近場で探している人は案外多いのです。そのため売り出しのチラシを作り、近隣に撒いて反応を伺います。中古マンションの販売が同じマンションか近隣に対して行われることが多いということは、近所の人が住みたいと思えるマンションであることが資産価値に重要だとわかると思います。

マンションの価値は、どれほど多くの人がそのマンションを欲しいかで変わってきます。同じマンションの住人や近所に住んでいる方が、そのマンションを欲しいと思わなければ、マンションの価値はどんどん下がっていくのです。

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価値が下がるマンション

住んでいる人の不満が溜まるマンションは、当然ながら家族や親しい人に同じマンションを勧めたりしないでしょう。騒音や臭いなどの問題で苦しんでいる人も同様です。このようなトラブルが大きくなり、近隣にまで知られるようになると買いたいと思う人は減るでしょう。マンション内にトラブルがあると、資産価値が下がるのです。

マンション内のトラブルとまでいかなくても、マンションの印象はさまざまなことが影響を与えます。マンションの敷地内でツバを吐く住人がいたら、それを見た人はそのマンションに住みたいと思うでしょうか。敷地内でタバコを吸ってポイ捨てする人、ゴミが落ちていても気にしない人、目つきが悪い人、挨拶をしない人、そういう人がマンションに多くいると、そのマンションの印象はどんどん悪くなっていきます。人は見ていないようで見ています。特に悪いことは多くの人の記憶に残ります。それらがやがて噂になり、そして評判になり、マンションの評価になります。

マンションの価値は住人の生き方

住んでいる人が気持ちよく挨拶をする人ばかりで、しょっちゅう楽しそうなイベントが行われているマンションは、近所の人にどんな印象を与えるでしょうか。聞こえてくる話題は楽しそうな事が多く、笑い声がいつも聞こえるマンションは住んでいて楽しそうに見えます。マンションから出てくる人は、気持ちの良い挨拶をする、いつも笑顔で出てくる、親切な人ばかりだ、そういう評判のあるマンションなら、自分もそのコミュニティの一員になりたいと思う人が出てくるでしょう。

最近はマンション内のコミュニティを形成するために、管理会社がイベントを盛んに行っています。住人間のコミュニケーションを図る上で大事なことだと思いますが、イベントだけが重要なのではありません。イベントの時だけ楽しそうでも、毎朝疲れ切った顔の人が出てくるマンションは幸せそうには見えません。イベント以上に普段の生活が、マンションの印象を決めるのです。仕事を頑張っている人、家族と楽しい時間を過ごしている人、良い友人に恵まれている人は良い顔つきをしています。そういう方が多く住んでいるマンションが、多くの人を引きつけるのです。

滞納がないかも重要

中古マンションの売買時には、管理費や修繕積立金の滞納がないかチェックされます。大抵の場合、仲介する不動産屋がその情報を教えてくれますし、わからない場合は調べてくれます。滞納があり、それが長期間に渡るということは管理組合が問題を抱えているということなので、売買が難しくなりがちです。また大規模修繕などで管理組合が金を抱えている場合も同様で、売買が難しくなったり値引きの対象になりがちです。

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誰しもお金にルーズな人の仲間に加わりたいとは思わないので、お金の問題はシビアに考える必要があります。管理組合のお金は住人全員の財産なので、住人一人一人が意識しておかなくてはなりません。

モデルケース物件

このようなマンションが実現できるのか?という疑問がある方にイニシア千住曙町というマンションをご紹介しましょう。さまざまなメディアに紹介されているので、すでにご存じの方も多くいると思います。

物件概要
竣工:2009年1月
総戸数:515戸
構造・規模:RC造(一部SRC造)24階建て
交通:京成本線 「京成関屋」駅 徒歩4分

こちらのマンションは、立地的に恵まれているとは言えません。最寄りの駅は京成本線で、JR北千住駅まで歩くと20分前後かかってしまいます。その反面、隅田川に面しているためロケーションの良さは好評のようです。イニシア千住曙町も例に漏れることなく、問題が山積しているのに理事になりたい人が少ないマンションでしたが、数年掛けて改革に成功しています。

さまざまなイベントを実施し、それを管理組合が独自のwebサイトやSNSで公開し、マンションの魅力や楽しさを伝えるまでになっています。住人らが歌う「恋するフォーチュンクッキー」を歌うビデオは管理会社を巻き込んで制作され、YouTubeで公開されると大きな反響を呼びました。多くの住人が踊る中、マンション施設やサービスを紹介する内容になっていて、見ていて楽しそうなマンションライフが目に浮かぶ内容になっています。

さらに管理組合を法人化し、管理規約、広報誌、長期修繕計画、理事会の議事録や財務諸表まで徹底した情報公開でマンションの実態をオープンにしています。そのため購入を希望する人は、いつでも自由にこれらの記録を読むことが可能で、マンションの魅力だけでなく現在抱えている問題点もわかるようになっています。

イニシア千住曙町公式サイト

これらの取り組みで、イニシア千住曙町は人気の高い物件になっていて、売り出しても早期に契約がまとまるようです。住人自らがマンションを改革し、自らの資産価値を高めている好事例だと言えるでしょう。

戸建てとは違うマンションの価値

戸建ての資産価値は、土地と建物に集約されます。立地が良くキレイな建物であれば、高値で売ることが可能です。しかしマンションは土地と建物に加えて、住人が資産にもなれば負債にもなります。マンションに住むということは、否応なく他の住人との生活が始まるのですから、その住人が魅力ある人なのか迷惑な人なのかで、人気が大きく変わってくるのです。

このようにマンションの資産価値は、住む人の生き方が影響を及ぼします。住人が充実した楽しい人生を送るか、不満だらけで文句ばかりの人生を送るかで、マンションと住む人の将来が大きく変わってくると思います。マンションに住んでいる人には、このことを一度考えてみて欲しいと思います。

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