築何年でマンションは建て替えるのか
中古マンションの購入を検討する人が増えたせいか「マンションは何年ぐらいで建て替えるのか?」「マンションは築何年までもつの?」といった質問をよく聞くようになりました。結論から言うと、施工不良などがなければ100年近くもつと考えられます。しかし多くのマンションは、維持管理ができなくなって50年もすれば住めなくなるケースが増えると思われます。
マンション寿命47年説
よく聞くのは、マンションの寿命は47年という話です。これは税法上の法定耐用年数が47年という意味で、寿命とは全く関係ありません。マンションの価値が減価償却されて47年で価値が0になるという意味で、この築47年になったら住めなくなるわけでもありません。
またあくまでも税金の考え方を示しているだけなので、47年過ぎたらマンションが売れなくなるわけでもありません。東京の表参道にあるコープオリンピアは1965年に竣工しました。一等地にある人気マンションで、築55年の現在でも賃料は30万円を超え、売買価格は部屋によっては1億円にもなります。一等地にあり維持管理がしっかりしていれば、築年数が50年を過ぎても十分な資産価値があることをコープオリンピアは示しています。
マンション寿命65年説
コンクリートの寿命を考えるときに、日本建築学会が出している「建築工事標準仕様書 JASS5」には、以下の記載があります。マンションで使われるコンクリートの設計基準強度は24N/m㎡が多いので、この表に書かれている「標準」の計画共用期間「およそ65年」を元に、マンションの寿命が65年と言われているのです。
しかし計画共用期間とは大規模修繕をせずに使える耐用年数のことで、65年でマンションが使えなくなるわけではありません。さらにもう一つの数字「共用限界期間」が100年となっていますが、これはこの期間内に大規模修繕を行えばさらに使い続けることができるという意味です。そのため適切な時期に躯体の大規模修繕工事を行えば100年以上は使えることになります。
日本初の鉄筋コンクリート集合住宅
日本初の鉄筋コンクリート集合住宅は、軍艦島に1916年(大正5年)に竣工した7階建ての30号棟です。雨漏りが酷かったと記録がありますが、軍艦島が閉鎖される1974年まで住宅として使われています。実に58年間、使用されていました。軍艦島は長崎県にある小さな島ですが、古くから石炭があることが知られていました。三菱社が島の権利を獲得すると、次々に炭鉱が掘られていくようになります。島の人口が急増したことから集合住宅が次々に作られていき、30号棟は日本初の鉄筋コンクリート造の住宅として誕生しました。
造る方も初めての経験なので手探りが続き、現在の視点で見ると稚拙な点も多いようですが、60年近く住宅として使えたのですから立派だと思います。また同潤会の青山アパートメントは1926年に完成し、表参道ヒルズ建設のため2003年に解体されました。実に77年も使われたことになります。これらの建物は使えなくなったというより、島が閉鎖されたり新たな建築物の計画が決まったため使われなくなっただけですので、まだまだ人が住むことは可能だったと思われます。
問題は維持管理
このようにマンションは70年以上もつことがわかりましたが、これは適切な維持管理ができているという前提条件がつきます。しかし資金不足から適切な維持管理ができていないマンションが多く存在し、将来的に資金不足になることすら気づいていないケースが多くあるのです。適切な維持管理をするために修繕積立金がありますが、築30年を過ぎてから徐々に不足が顕在化するケースが多くあります。
先日、滋賀県で解体された廃墟マンションは、1972年に竣工しました。しかし雨漏りが止まらなくなるなどのトラブルがあり、修理するための修繕積立金も不足していたようで、修理ができないまま雨漏りが続いていたようです。その結果、2010年頃には住人全員が引っ越してしまいました。わずか築38年で住むことができないマンションになってしまい、廃墟になって近隣住民の安全を脅かす存在になってしまいました。
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多くのマンションでは、資金不足が顕在化するのは築30年を過ぎてからです。エレベーターの交換など、高額な修繕費用がかかる工事が築30年を過ぎてから始まるのに対し、多くのマンションの長期修繕計画は築30年目までしか作られていないません。そのため築30年を過ぎてから資金不足がわかりだし、修繕積立金の大幅値上げが必要になるものの、資金力がない住民の反対によって値上げもできない事態に陥ります。
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マンションの寿命は建物の耐久性ではなく管理で決まります。そのため中古マンションを買う際には、建物の状態を見ることと同じくらい管理状態を知ることが重要になってきています。
まとめ
マンションの寿命は47年とか65年とか、まことしやかに言われていますが、適切な維持管理を行っていれば100年以上はもつと考えられます。しかし適切な維持管理を行うための修繕積立金が不足し、建物の寿命が尽きる前に住めなくなる可能性があります。中古マンションを購入する際に、管理状態の確認が重要になっています。