管理費等の滞納は時効があると知っていますか?

平成30年度のマンション総合調査(国土交通省)によると、管理費や修繕積立金を滞納がある管理組合は全体の約25%だそうです。マンションの滞納問題はマンションの老朽化と住民の高齢化によって、今後は社会問題になる可能性もあります。管理費等の滞納は時効があると知っていますか?今回は滞納が起こったらどうなるか、そして滞納問題の解決方法について考えてみます。

滞納の実態

国土交通省の「平成30年度マンション総合調査」によると、約25%のマンションで管理費の滞納が発生しています。国土交通省は平成25年度に比べて滞納が減少しているとしていますが、単に後述する滞納の時効になってしまった物件が増えた可能性もあります。

※マンション総合調査より

また築年数が古いマンションほど、滞納が増える傾向にあります。築年数と滞納は比例関係にあるようです。

最初は少額なので気にしない人が多い

滞納問題の多くは、最初は少額の滞納です。ある時期から全く払わなくなるケースは稀で、遅れて払う人がほとんどです。2ヶ月払わずに1ヶ月分を払い、3ヶ月遅れて1ヶ月分を払うように、払う気はあるけど滞納額が少しずつ増えていくようになります。そのため少額の滞納が続き、重大問題として認識されないことが多いようです。

こうして気がつくと額も大きくなっていて、時効を主張されて滞納分を支払ってもらえないケースが増えています。管理費の問題はマンション理事会が最優先で取り組む問題のはずですが、額が少ないとどうしても危機感を持てずに後手に回ることが多いようです。

外国人投資家の問題

都内の一部のマンションでは、外国人に購入されたマンションが問題になっています。国によっては管理費や修繕積立金がないため、納めることを拒む人がいるそうです。また購入時にそのような支払いがあることを聞いていないと主張したり、国によっては管理費に水道代や電気代も含まれるため、水道代や電気代を別に払っているのに管理費を別に払う必要はないと主張する人もいると聞きます。

また外国人投資家が購入して賃貸に出している場合、管理費を滞納しても督促しようにも国外にいる場合がほとんどです。また督促をしたとしても無視されたら、できる対応が限られてしまいます。そのため滞納されても支払ってもらえる目処が立たず、そのまま時効を迎えてしまうケースが増えているそうです。

自己破産の場合

住民が管理費や修繕積立金を滞納し、そのまま自己破産したらどうなるでしょうか。自己破産すると債務がなくなり、滞納した管理費を支払わなくてよくなります。管理組合としては、自己破産前に手を打つしかありません。誰がいつ自己破産をするかわからないので、滞納のなるべく早い段階から手を打つ必要があります。

また自己破産しても、自己破産後の管理費や修繕積立金の支払い義務はあります。自己破産したからといってそのままにするのではなく、自己破産後はしっかり払ってもらうようにしましょう。

滞納した部屋が売却された場合

管理費や修繕積立金を滞納していた人が、自分の部屋を売却しました。滞納していた管理費等は誰に支払ってもらうのでしょうか。新たに購入した人に支払い義務があります。ほとんどの場合、仲介する不動産業者がそのことを買手に説明するので、滞納していた管理費等は支払われることになります。しかし買手が上記の海外投資家だったりすると、また面倒な話になりかねません。

滞納者が死亡した場合

滞納者が死亡し、売却された場合は上記のように新たに購入した人が滞納分の管理費等を支払うことになります。しかし相続された場合は、相続した人が滞納分を払うことになります。しかし同じマンションに住んでいながら、話したこともない住民が多いのが現状です。マンション住民が亡くなったら、その遺族に連絡をとるのは困難な場合が多いでしょう。

相続放棄が行われた場合は、ローンが残っていたら抵当権者がいるはずなので、管理組合が登記簿謄本を調査して抵当債権者を捜し出し、マンションを競売してもらうことになります。管理組合だけでこれを行うのは難しいので、専門家を雇うケースがほとんどです。しかし売却額が抵当権より下回ると滞納分を取り戻せないこともあり、全額回収とはいかないことが多いと聞きます。

管理費滞納の時効

長い間、管理費や修繕積立金を滞納した場合の時効は10年と考えられてきました。民法では債権の消滅時効を10年と定めているからです。しかし平成に入り大阪高裁が管理費は定期給付債権にあたるとして、時効は5年という判断を下しました。さらに平成16年4月23日に最高裁が「管理費等は定期給付債権として、5年間で消滅時効が適用される」との判決を出したことで、管理費等の滞納の時効は5年になりました。

管理組合の対応策

滞納に対しては法的な対応をとることになります。管理会社とも相談しながら、以下にあげるいずれかの方法をとることになります。

①民事調停

裁判官と調停委員から成る調停機関が第三者として立ち合い、双方の言い分を聞きながら和解による解決を目指すという制度が民事調停です。調停が成立して調停証書ができ上がると、合意内容通りに実行されない場合は強制執行へと進むことも出来ます。

ただし出頭義務がないため、相手がすっぽかしてしまうと意味がなくなります。滞納している人と管理組合の双方に、譲歩の余地がある場合には有効な方法です。

②支払督促

簡易裁判所から督促を発送してもらうのが、支払督促です。簡易裁判所の書記官が書類の審査のみで督促状を発送しますので、手続きが簡単で費用も訴訟の半額程度で済みます。裁判所からの督促状は、心理的効果も大きいはずです。

ただし異議申し立ても可能で、その場合は裁判に移行します。滞納の解決方法としては多く採用されており、支払督促で解決したという例は多いそうです。

③少額訴訟

滞納額が60万円以下の場合に使える訴訟方法です。簡易裁判所で1回の審理で即日結審するので、最も手軽な訴訟です。年間10回行うことが可能なので、複数の滞納者に行うことができます。その一方で、理事長が裁判所に出頭する必要があります。

④民事訴訟

いわゆる普通の裁判です。滞納金の額によって裁判所が変わり、140万円以下なら簡易裁判所へ、140万円を超える場合は地方裁判所へ提訴します。弁護士費用がかかり、時間もかかります。

まとめ

管理費の滞納が始まったら、早め早めに対応するべきです。少額であっても放置せずに、積極的に理事会が動く必要があります。滞納対策は管理会社と密に打合せを行いながら進めるのが良いのですが、管理会社が動いてくれないなどの問題があればご相談ください。下記のメールフォームより、ご連絡をお待ちしています。

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