20年後のマンション事情はどうなっているだろうか?

団塊ジュニア世代(昭和46年から49年生まれ)が高齢者になる2040年には、65歳以上の人口が人口の35%を超えると予想されています。人口が減り高齢者が増える中、年金や医療が問題視されていますが、マンションを巡る環境はどうなっていくのでしょうか。人口が急激に減る中、住宅は過剰に生産され続けています。

2040年の日本の人口

内閣府が出している「令和元年版 高齢社会白書」によると、2040年の日本の人口は1億1092万人と予想されています。これは2020年の1億2532万人から1440万人も減少するという予想で、毎年72万人以上が減っていくペースです。72万人というのは神奈川県相模原市や東京都練馬区の人口に匹敵します。これらの都市が毎年消えていくようもので、急激な人口減が進んでいることがわかります。

※内閣府「令和元年版 高齢社会白書」より

そして人口が減るだけでなく、人口比率も変わってきます。同じく「令和元年版 高齢社会白書」を見ていくと、2020年は総人口1億2532万人に対して75歳以上の高齢者は1872万人で全体の約15%になります。2040年は総人口1億1092万人に対して75歳以上の高齢者は2239万人で、全体の20%になります。これに65歳から74歳までの高齢者1681万人を加えると、高齢者は人口の35%に匹敵します。超高齢化社会が来ると言われているのは、このような背景があるからです。

人口が増える街・減る街

2040年の日本の人口がどうなっているか、それをエリアごとにまとめたのが総務省「自治体戦略2040構想研究会」です。最終報告の冒頭にある「人口段階別市区町村の変動(2015→2040)【H30推計】」は、とても興味深いので一読の価値があると思います。

もちろん現時点での予測に過ぎないので、この通りになる保証は全くありません。しかし20年で人口が50%から70%も減ると予想されているエリアがある一方で、人口が増えるエリアも存在します。人口100万人以上の政令都市では、さいたま市、川崎市、福岡市が人口が増加するようです。その一方で、三重県南伊勢町のように70%もの人口減が予想されているところもあります。

これは地価にも影響すると思われ、地価が上がる街と下がる街の明暗がクッキリ分かれでしょう。また人口減が大きいエリアでは空き家が増え、人口が増加するエリアでは住宅が不足します。エリアによって大きなダメージを受ける所とそうでもない所で、明暗が大きく分かれると思われます。

空き家率が急上昇する

これだけ人口が減ると、当然ながら空き家が増えます。2040年にどのくらいの空き家が予想されているかというと、一部では40%にものぼると言われています。しかしこの空き家率の急上昇は人口減だけが理由ではありません。空き家率が上昇するもう一つの理由として、住宅の造りすぎがあります。

以下の表は三井不動産がまとめた各国の住宅着工戸数(戸建てもマンションも含む)の推移です。一見するとアメリカの新築住宅の数は先進国中トップクラスに見えますが、これを人口10万人当たりに換算すると順位が大きく入れ替わります。着工戸数の数字が出ている年度が若干違いますが、年度によってそれほど大きな変動はないと仮定して計算した表が以下のものです。

アメリカは人口10万人あたり約380戸の住宅を新築しているのに対し、日本は約745戸です。日本はアメリカの2倍近い数の住宅を建設していることになります。またドイツとイギリスに至っては、日本の半分にも満たないことがわかります。もし日本もアメリカと同様に10万人あたり380戸程度に抑えるとすると、着工戸数を48万戸程度にしなくてはなりません。これはリーマンショックによる不況が起こった2009年の77万戸を大きく下回る数字です。

このように日本は他の国と比較すると、あまりに多くの住宅を建設してきたことがわかります。他国に比べて圧倒的に多くの住宅を建設してきた日本で、他国に例を見ないほど急激な人口減が起こっているので、空き家が急激に増えるのは当然のことと言えるでしょう。

2040年のマンション事情

人口減が急激に進行し、空き家が一気に増える状況では地価が高いエリアと低いエリアが明確に分かれるようになります。「人口段階別市区町村の変動(2015→2040)【H30推計】」を見ても東京23区は変わらず人口が増えるとことが多く、地価も安定し引き続き住宅のニーズがあるでしょう。しかしこの頃には、すでにめぼしい好立地にはマンションやビルが建設されており、新築マンションの建設は不可能になっています。

ここで注目すべきは、2040年にはバブルが崩壊した1990年に建設されたマンションが、築50年目に突入するということです。そして東京の一等地に建っているマンションを見渡すと、現在はビンテージマンションと呼ばれる1960年代後半からバブル期頃までに建てられた古いマンションが多いことがわかります。これらのマンションは2040年になる前から建て替え需要が出てきますが、現行制度の建て替えは資金と法律のハードルが高いため、なかなか実現していません。

※ビンテージマンションの秀和松濤レジデンス

恐らく老朽化したビンテージマンションを建て替えるのは、住民ではなく開発業者になると思われます。東京の一等地にあるマンションを建て替えることで、超高級マンションが建てられるのです。入居者を説得して等価交換などで新しい住居を約束しつつ、建て替えを行うには地上げが必要になります。そのため今後は、腕の良い地上げ屋の需要が高まるのではないかと思います。

地上げ屋というと、バブル期に人が住んでいる民家をブルドーザーで壊したり、嫌がらせをして立ち退かせる悪徳業者のイメージが今でも強いですが、本来は土地の価値を上げる人達の事です。複数の土地を買って1つにまとめ、商業施設やマンションなどを建設するなどして、その土地の価値を上げていくのです。立ち退きの交渉は相手のメリットを伝えながら根気よく行い、数年かかることも珍しくありません。

また地上げ屋は不動産の専門家というだけでなく関連法令や条例、建築法規にも詳しく、あらゆる手法を駆使します。その技量はそこらの不動産営業が太刀打ちできるものではなく、交渉相手の懐に入って気持ちに寄り添い、交渉をまとめるプロでもあります。当然ながらこういう人は貴重な人材で、一朝一夕に育つものではありません。しかし複雑化した都市の権利関係や人間模様を紐解き、土地の有効な利用実現できる人材がますます必要になってくるでしょう。

限界マンションの増加

資金が底を尽き、管理が不可能になる限界マンションが増加していくと予想されます。建物の老化に住民の老化が重なり、修繕積立金を満足に貯めていないマンションは老築化に歯止めが掛からず、資金力がある人は他のマンションに移り住んでいきます。そこには資金力がない住民だけが残ることになり、さらにマンションを維持管理する資金が不足して廃墟になっていくのです。

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廃墟化するマンションも2つに分かれると思います。好立地のものは業者が地上げして買い上げ、新たなマンションが建てられるでしょう。住んでいた人が、等価交換で同じ場所に建ったマンションに住むこともあるでしょう。しかし好立地でない場合は朽ち果ててそのままになると思います。好立地というのは現在の好立地ではありません。人口が減るので今は好立地でも将来は違ってくることもあるでしょう。立地に価値がない廃墟化マンションは行政などが手を出さない限り、そのままだと思います。日本のあちこちに廃墟化したマンションが見られるようになると思います。

まとめ

日本は2040年に向かって、急激な人口減が始まります。この人口減は日本全国で均一に起こるわけではなく、エリアによっては人口増加も起こります。そしてこの人口減に合わせて、マンションの老築化が一気に進みます。そのため廃墟化するマンションが増えるでしょう。

好立地に建つマンションは業者による建て直しが行われる一方、立地が良くないマンションは廃墟になり朽ち果てると思われます。住んでいるマンションにより、将来が大きく変わるでしょう。どのエリアに住宅を買うかは、以前にも増して重要になっています。

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