NYのセレブマンションで起こった訴訟 /かつてジェニファー・ロペスも住んでいた

2021年9月23日のニューヨークタイムズによると、ニューヨークで最も高い土地に建つタワーマンション「432パークアベニュー」で、住民らが開発会社を提訴しました。このマンションは最上階のペントハウスが、1億6900万ドル(1ドル110円換算で185億9000万円)で売りに出されたことで話題になりました。まさに特別な人しか住めない超高級マンションですが、何が起こっているのでしょうか。

432パークアベニューとは

マンハッタンのミッドタウンに位置する、96階建で高さ426mのタワーマンションです。2020年現在でアメリカで6番目に高い建物で、住宅としては世界で最も高い建物だそうです。125の住居と居住者用のレストランなどのアメニティを備えています。建設費用は12億5000万ドル(1375億円)で、ドレイクホテルの跡地に2015年に竣工しました。1ブロック離れたところにはトランプタワーもあり、セントラルパークもすぐそこです。まさに一等地に建設された超高級マンションと言えます。

2018年には歌手で俳優のジェニファー・ロペスと、婚約者で元ニューヨークヤンキースのスーパースター、アレックス・ロドリゲスが購入して話題になりました。購入金額は1530万ドルと報じられ、セレブな人々が住むマンションというイメージを強く広めました。しかしわずか1年で売却したことも話題になり、ゴシップ誌を賑わせています。2人が購入した部屋の広さは約372㎡ですが、ジェニファーには2人の子供がいるため4人で生活するには手狭だと感じていたと言われていました。この辺りもさすがセレブと話題でした。

※ジェニファー・ロペスとアレックス・ロドリゲス

建物の特徴

設計は著名な建築家ラファエル・ヴィニオリが行い、施工はオーストラリアのLand Leaseが行いました。ラファエル・ヴィニオリはニューヨークのマンハッタンにあるクーパー・ヒューイット国立デザイン博物館を設計し、ナショナルデザイン賞を受賞しています。また911テロで倒壊したワールド・トレード・センターの再設計コンペにも最終まで残るなど、アメリカの著名な建築家です。

構造はこれほどの高さになると鉄骨造で考えがちですが、場所打ちコンクリートで行われたと書かれています。つまり鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造で建てられているようです。狭い敷地に建てられた典型的なペンシルビルで、風の影響を強く受けます。しかし建物の全体がしなることで風の影響を受け流しているという記事があったので、制振構造が採用されているのでしょう。

設計や施工に関する細かなデータが手に入らなかったので、メディアの記事を頼りに書いているのですが、日本とは事情がわからないため私にも難解な部分が多くあります。そのため詳細な構造に関しては、この記事では正確性を保証できないことをご了承ください。例えば以下のような記事に私は頭を悩ませました

All concrete cast in the 432 Park Avenue project was designed for enhanced durability by minimizing the ratio of water to cementitious materials to as low as 0.25.

「432パークアベニューで使われているすべてのコンクリートは、セメント系材料に対する水の比率を0.25まで抑えることで、耐久性を高めています。」という意味ですが、日本ではコンクリートの水セメント比は60%前後なので、25%という数字に面食らいました。このように私の理解の範囲を超えている部分もありますが、多くのメディアが著名な建築家が設計し、最新鋭の工法を使った最新のマンションと紹介されています。

室内の様子

185億円で販売されたペントハウス(最上階の部屋)の内部を見てみましょう。部屋の面積は8,255平方フィートとなっているので、約767㎡になります。6つのベッドルームと7つのバスルームがあり、家具や調度品などのインテリアも合わせて販売されました。インテリアにはエルメス、フェンディ、ベントレーなどの高級ブランドの品が含まれています。

下の写真のHマークのクッションはエルメス製です。これらの家具だけでもかなりの価格になると思われます。また写真の奥行きから、部屋の広さが想像できると思います。

床暖房付きの大理石のスラブ材でできた床に、彫刻を施したシンク、バスルームには窓もあります。このように全ての部屋が贅沢なつくりになっています。

相次ぐ欠陥の指摘

風により建物がたわむと、エレベーターが安全確保のために緊急停止をします。そのため何度も住民がエレベーターに閉じ込められてしまいました。また2018年には漏水によりエレベーターの機械室が浸水し、数週間に渡ってエレベーターが停止しました。これほどの高層マンションで、エレベーターは死活問題になります。

また風により建物がたわむ際に、あちこちから異音が発生しているようです。かなり大きな音で、安眠の妨げになっていると住民が証言しています。さらにダストシュートの騒音が言われていて、証言の中には爆発音のように聞こえたという話もあり、かなりの騒音が発生していることが窺えます。

こういった問題が相次ぐため、住民グループは外部機関に依頼して調査を行いました。その結果、電気設備・機械設備・配管設備などの73%が、計画通りに工事されていないという報告が出されました。これほど広範囲に当初の設計通りに施工されていないのは驚くべきことで、日本では考えにくい事態です。さらに調査した専門機関は1500箇所以上の欠陥があると指摘しました。これを受けて住民グループは、2021年9月にニューヨーク裁判所に開発業者と施工業者を提訴しています。彼らが求めている損害賠償額は1億2500万ドル(137億5000万円)にも及びます。

ニューヨークタイムズの記事
Residents of Troubled Supertall Tower Seek $125 Million in Damages

まとめ

432パークアベニューはニューヨークの超高級マンションで、多くのセレブレティが購入しました。しかし住民は騒音や漏水に悩まされており、裁判所に提訴しました。これによりこのマンションの販売は鈍化しているそうです。ニューヨークはマンション価格が高騰しているため、上記のジェニファー・ロペスなどは高値で売り抜けていますが、現在の住民は怒り心頭のようです。今後どうなるのか、推移を見守りたいと思います。

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