なぜ「家賃は給料の3分の1」になったのか /バブル時代の戒め

数年前にTwitterで、家賃は給料の3分の1が目安だと言われているけど、これは不動産屋の都合で決められた数字だという話題が盛り上がっていました。不動産屋が高い家賃の部屋を勧めるために作られた方便だというわけですが、当時を知るものとしては実際とは全く違うと言わざるをえません。そこで今回は、なぜ「家賃は給料の3分の1」になったのかについて、バブル期から振り返ってみたいと思います。

土地神話の80年代

土地神話とは、土地の価格は価格が上がることはあっても下がることはないと、まるで神話のように語られたことを指します。土地の価格は上りづつけるので、不動産価格も上がり続けると言われていました。そのためバブル期には多くの人が不動産投資を行い、実際に土地や不動産の価格は上昇し続けました。多くの人が借金をして不動産を購入し、転売することで莫大な利益を上げていたのです。

こうした不動産ブームにより、サラリーマンの間ではワンルームマンション投資が流行りました。ワンルームマンションを賃貸経営することで赤字を出し、支払った所得税の還付を受ける損益通算という手法で節税対策を行うのです。「年収1000万円を超えているのにマンション投資をしない人はバカ」なんて言う人がいたほど、サラリーマンの多くがワンルームマンションを購入して賃貸経営を行っていました。

関連記事
不動産で節税をする前に考えておきたいこと

バブル崩壊によるマンション投資の終焉

バブル景気が崩壊すると、サラリーマンのワンルームマンション経営も崩壊しました。損益通算による節税対策は、家賃収入より経費がかかり赤字になることで、赤字分を所得税から取り戻す仕組みです。つまり赤字額は支払っている所得税より少なくしなくてはなりません。しかしバブル崩壊で家賃が払えなくなる人が出てくると、赤字が所得税を上回るようになりました。そうなると所得税が全額返ってきても足りず、手出しの費用が発生してしまいます。つまり損をするわけです。

そもそもバブルが弾けて給料が減ったので、支払う所得税が減った人が多くいました。支払う所得税が減ったのに不動産投資の赤字が増えてしまったので、手出しで支払うしかなくなります。収入が減ったのに支払うお金が増えてしまう悲惨なことになりました。

さらにこの頃のワンルームマンション投資は、必ず不動産価格は上がるという土地神話に支えられていました。しかしバブル崩壊によって不動産価格が下落し、売ってもローンの残債が残ることになってしまいました。私が見た酷い例では、埼玉県の決して利用者が多くない駅から徒歩30分のワンルームマンションが、2000万円以上で売られていました。しかしバブル崩壊後は1000万円でも売却できない状態で、このマンションを3戸も買っていた人は自己破産をしています。

家賃が払えない人が増えたことで、家賃保証会社の審査も厳しくなっていきます。そこで出てきたのが、家賃の3倍の収入があるという条件です。ここから家賃は収入の1/3と言うのが出てきました。

トレンディドラマの絶大な影響

今では信じられない人もいるかもしれませんが、80年代から90年代にかけてはテレビドラマの影響が実生活に強く及んでいました。例えば人気ドラマに出演した人気タレントが着ていた服が、あっという間に売れたりしていました。人気タレントが紺色のピーコートを着たドラマが水曜日に放送されると、次の日曜日にはお店から紺色のピーコートがなくなっていたのです。この影響は洋服だけでなく、衣食住全般から娯楽にまで及ぶことになります。

当時はトレンディドラマと呼ばれるテレビドラマが大流行していて、視聴率20%超えは当たり前でした。現在はライブ視聴で10%を越えれば大ヒットですが、当時は20%を超えなければヒットと呼べない状況でした。このトレンディドラマは、徹底してファッショナブルな路線が追求されました。小学校の教師などの公務員、美容師や居酒屋の店長など一般的には高給取りではない職業の人であってもブランドものの服を着て、高級車に乗り、高給マンションに住んでいました。

そのためブランドもの服や高級車は飛ぶように売れ、またマンションやアパートも高級志向に向かっていくようになりました。当時は手取りで20万円ぐらいの人であっても200万円を超える自動車に乗ったり、家賃が10万円を超えるアパートに住んでいたのです。この家賃は実に給料の1/2以上の額ですが、こういう人達が少なからずいたのです。少ない給料から高家賃を払い、高級服を買ってナンパしにディスコに通っていたのがこの時代の特徴でした。

家賃滞納が増えたバブル崩壊

このように収入に見合わない家賃を払っていると、生活に無理が出てきます。しかしバブルが崩壊しても、高額の家賃を払う人は多くいました。あまり安い部屋に住むのは恥ずかしいという意識もあり、相変わらず給料の半分を家賃として払う人がいたのです。このように収入に見合わない賃貸契約が多く、さらに滞納者が増える事態が訪れるようになって、「家賃はせめて収入の3分の1に」という声が聞かれるようになりました。不動産屋の都合と言えばそうでが、それは高い家賃を取るためではなく払えなくなって家賃滞納が起こることを避けたかったからです。

このように、家賃は収入の1/3というのは不動産業界から出てきた言葉です。しかし利益を上げるためではなく、収入に見合わない部屋を借りる人が多かったため出てきた言葉なのです。しかし今では収入の1/3も家賃に払うと生活が成り立たない人が増えてきたため、1/3が批判されるようになったのでしょう。

まとめ

バブル景気の頃の過剰な不動産投資や、高い家賃を我慢して払う好景気特有の浮かれた雰囲気が、バブル崩壊とともに変わりました。家賃を払えない人が増えたため、無理な家賃設定をしないようにするための指針が必要になり、そこから出てきたのが給料の1/3という数字です。この数字も現代では合わなくなってきていて、そのため批判されるようになったのだと思います。住宅ローンも無理なローンを組んでいる方が多い現在において、過去の常識に囚われずに自分たちに合った家賃やローンを設定するのは重要なことだと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です