アメリカには戸建にも管理組合が存在する? /日本とアメリカのマンション事情を比較

アメリカにもマンションは多く存在し、それらはコンドミニアムやアパートメントと呼ばれています。日本のマンションでは修繕積立金の不足が問題になることが増えていますが、アメリカの事情はどうなのか知りたいと思いました。そこでカリフォルニア州のロサンゼルス郊外に住む人に、ZOOMでマンション事情を質問してみました。彼は不動産の専門家ではありませんし、私の拙い英語と相手の拙い日本語で会話をしたので、不明瞭な部分もあります。しかし日米のマンションに対する考え方はずいぶん違うことがわかりました。今回は日本とアメリカのマンション事情を比較してみます。

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※注意事項

ここに書いた話はカリフォルニア州の話が中心になります。州によって独立行政府を持つアメリカでは、法律が州ごとに違うためアメリカ全土で同じように行われているわけではありません。州によって住宅の考え方は異なります。またこの話は不動産の専門家ではない個人からヒアリングをした結果であり、アメリカの行政機関に問い合わせて内容を確認したわけではありません。あくまでも一個人の話しとして読んでください。

話を聞いたアメリカ在住の方

話したのはケヴィン(41歳)で、現在は自動車の販売業を営んでいます。かつては従軍経験もあり、さまざまな仕事を経験したそうです。以前から自動車が好きで、ティーンエイジャーの頃は父親に車の整備を習って、休日を過ごしていたそうです。その知識は従軍中にも役立ち、ちょっとした便利屋として仲間に重宝されていたと自慢します。2001年に映画「ワイルドスピード」を見て興奮し、自動車のカスタムを趣味で始めた頃に911テロが起こりました。そこで好きなことをやって生きたいと考えて、自動車のカスタムショップ兼販売店を仲間と始めたそうです。

※映画「ワイルドスピード」シリーズ

家族揃って親日家で、ケヴィンはサムライ映画、奥様は日本食、子供達は日本のアニメが大好きです。そのため家族で日本を旅行するのが夢で、貯金を続けていると語っていました。普段は日本についての質問に私が答えていますが、今回は私がケヴィンに住宅事情を質問しました。彼は若い頃にマンションの購入経験があり、現在は購入した一戸建てに住んでいます。

賃貸派も多いアメリカ

一生涯を賃貸住宅で過ごす人も多く、日本のように家を持って一人前という考え方はないようです。家を買うと面倒な法的手続きがありますし、住宅ローンを払い続ける自信がない人もいます。賃貸住宅なら収入が減ると家賃が安いところに引っ越せば良いですが、購入するとそうはいきません。そのため住宅の購入を考えたこともないという人も多いそうで、これは個人の価値観やライフスタイルに大きく左右されるようです。

購入派の人にしても若い時に多額のローンを組んで、一生の買い物として家を決めるような日本とは随分と違うようです。家を何度も買い換える人は珍しくなく、その時の経済事情や家族構成によって買い換えるのが一般的だそうです。ケヴィンの場合、最初に買ったのは職場の上司が売りに出した1LDKのマンションだったそうです。当時はその土地に住み続けるつもりだったし、何より家賃より住宅ローンが安いうえに値上がりが見込めると言われて決断したそうです(実際にはほとんど値上がりしなかったようです)。

日本と違う管理費

アメリカのマンションの多くは、管理費に水道代や電気代、ガス代などが含まれているそうです。またケーブルテレビ代も管理費に含まれていることが多く、他の専門チャンネルを視聴したい場合にだけ個人で契約するそうです。日本では水道代や電気代が別だと言うと、かなり驚いていました。管理費の滞納はちょくちょく起こるようですが、滞納している管理費の徴収は管理会社の大きな仕事になります。滞納が続いて管理会社が手をこまねいていると、すぐに管理会社を変えることになるそうです。そのため管理会社の広告には、滞納している管理費の回収率がうたわれているそうです。また管理費の一部が管理会社に支払われているのは、日本と同じです。

アメリカは戸建にも管理組合が存在する?

マンションの区分所有者の中から理事を選出し、理事会を形成するのは日本と同様です。アメリカではHome Owner Association(住宅所有者協会:略称HOA)、又はProperty Owners’ Association(不動産所有者協会:略称はPOA)と呼ばれているそうです。ちなみにこれはマンションに限ることではなく、デベロッパーが開発して分譲した戸建でも地域一帯でHOAが組織されていることがあるそうです。これは全ての戸建に当てはまるわけではありませんが、地域の秩序と安定化を守るために有効な手法なのだそうです。もちろん管理規約も存在し、これはその土地やマンションの部屋を購入する際に管理規約を守ることが条件とされているので、法律同様に強い強制力があるそうです。

日本のマンション管理組合が理事会を組織するように、HOAは取締役会を組織します。戸数が多いマンションなどでは、この取締役をめぐる選挙もお祭りのように行われているそうです。また年次総会も日本と同様に行われ、取締役会も行われるそうです。もっともケヴィンが住んでいたマンションではバーベキューパーティと総会が同時に行われていたそうで、管理組合の運営や雰囲気はマンションごとに大きく違うそうです。そしてHOAは強力な権限を持っていて、管理規約に従わない住民に対して最終的には差押さえができるそうです。もちろん差押さえられた側の住民はHOAを訴えることも可能で、住民とHOAの裁判の話もチラホラあるそうです。

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マンションには必ずHOAを設立することが決められているかに関して、ケヴィンは知らないそうです。しかし戸建の場合、HOAが組織されている物件とそうでない物件では、HOAがある方が売買価格が高額になるそうです。そのためHOAに関する印象は好意的なものが多いと言います。しかししっかりしたHOAであればあるほど、毎月の管理費も高額になりがちです。また住民が団結して自治が強いところでは、細かいルールが多くて面倒だと感じる人もいるそうです。

日本とは異なる修繕積立金

①修繕積立金を全額溜めないのが当たり前

修繕積立金はアメリカにもあるようです。修繕積立金がどれだけ溜まっているか、管理会社が報告するのも日本と同様です。最初に必要な金額を想定し、その5割から6割程度を貯めることを目標にしているそうです。日本では長期修繕計画に基づいて、必要な額の100%を貯めることを目標に徴収しています。アメリカでは6割程度しか集めないというのは意外でした。では修繕が必要になったら残りの4割はどうするのかというと、一時金の徴収かローンを組むのだそうです。

アメリカではマンションを購入してから、数年で売却する人が珍しくありません。新築時に購入した人が10年間も修繕積立金を払い続け、その間に修繕工事が行われなければ払った修繕積立金は使われないまま残っていることになります。一方で、大規模修繕を行った直後に購入する人は、修繕積立金を払っていないのに大規模修繕の恩恵を受けることになります。もちろんその分は売買代金に含まれるのですが、不公平感が出てしまうため必要な額の半分程度を貯めるようにして、残りは徴収するかローンにするのだそうです。ケヴィンに言わせると「何十年後にいくらかかるかなんて、誰にもわからないだろう?」ということでした。

②修繕積立金を行政がチェックする

マンションに修繕積立金がいくら溜まっているかは、数年に一度は州政府に届ける義務があるそうです。あまりに溜まっている額が少ないと州政府から指導が入ることもあるようで、それに従わなければ最悪の場合は建物の使用禁止になるそうです。住民全員が自宅から追い出されてしまう可能性もあるのです。使用禁止になったマンションをそのままにしたらどうなるのか?と尋ねると、多分州政府が没収して売却するんじゃないかとのことでした。日本では考えられない事態ですが、昨年の滋賀県での廃墟マンションが行政代執行で解体され、その解体費用を区分所有者から徴収できない可能性が残っていることを考えると、アメリカのやり方は合理的にも思えます。

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こうなると修繕積立金の積立状況は、中古マンションを購入する際に重要になってきます。そのためマンションを購入する際に修繕積立金の積立状況をチェックするのは必須で、購入希望者はいつでもその確認ができるそうです。あまり溜まっていないマンションが公開を拒むことはないか?と質問したのですが、そんな住宅は誰も買わないから売りたければ教えるしかないとのことでした。

管理会社がどんどん変わる

新築時には販売業者(デベロッパー)が管理会社を決定して販売するそうです。日本と決定的に違うのは、デベロッパーの系列会社や子会社が管理をしないことです。利益相反が理由のようで、法律で決まっているかはわからないと言っていました。アメリカでは大手不動産会社が存在せず、不動産を開発分譲するプロジェクトのような形で複数の資本が集まって行われることが多いのですが、その関係者が経営に関与している管理会社が選ばれることはないそうです。日本では販売会社の子会社の管理会社に決まっていることが多く、販売しやすいように修繕積立金を低く設定していること修繕積立金の不足に繋がっています。日本との大きな違いを感じました。

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そして管理会社は数年で変わるのが普通だそうです。毎年のように管理会社から売り込みがあり、より条件の良い管理会社に変更するのだそうです。先にあげた滞納された管理費や修繕積立金の徴収率は変更の大きな理由になり、また管理費の安さなども決め手になるようです。逆に問題が多いマンションでは多少管理費が高くてもやり手と噂の管理会社に変更するなど、必要に応じて決めているそうです。ちなみに話を聞いていると、管理会社のイメージも日米ではずいぶんんと違う気がしました。日本では管理人さんや清掃員さんを派遣する会社のようなイメージが強いですが、アメリカの管理会社は財務や州政府とのやりとりに長け、弁護士などもいる住宅のマネジメント企業という感じを受けました。

アメリカのマンションの問題は何か

ここまで聞くと、アメリカのマンション事情は日本よりずいぶん良いように感じますが、問題はないのでしょうか。やはり問題はいろいろとあるようです。まず地域によって値上がりが激しく、10年前には一般市民が買えたマンションが今ではリッチな人しか買えないようになっていることだと言います。また反対に価格が下がり続けると、それまでの住民は含み損を損切りして次々に引っ越していくそうです。そのため以前はホワイトカラーばかりが住んでいたマンションが、気がつけば怪しげな商売をしている人ばかりが住んでいるマンションに変わることもあるそうです。

不景気になると管理費の滞納が一気に増えるのも問題だと言います。多くの人がすでにカードローンを限度額いっぱいまで借りているので、失業すると収入がないだけでなく生活費を借りることも難しいのです。管理会社は復職の予定や返済見込みなどを厳しく追求するので、住宅ローンや管理費を滞納したまま夜逃げする人もいるそうです。夜逃げした人が捕まらなければ修繕積立金の不足につながりますし、新しい入居者が決まるまでは管理組合としても収入がありません。修繕積立金が不足すると州政府から指導が入り、将来的に修繕積立金の値上げに繋がるそうです。

そもそもマンションは維持費が高く、ケヴィンがマンションを手放したのも金銭面の負担が大きかったからだそうです。管理会社に支払うお金、HOAに支払うお金、保険、などなどローン以外の費用が多くかかると言います。それらを考えるとアメリカで住宅を持つのは、かなりお金がかかることのようです。

まとめ

日本とアメリカでマンション事情は大きく異なるように思いました。特に修繕積立金を州政府に報告するというのは驚きでした。日本でも、このような仕組みが必要になってくると思います。また売主と資本関係にある管理会社を採用できないと言うのも、日本とは大きく違います。現在の修繕積立金の不足問題に直結する部分なので、日本でも考え直す必要があるのではないでしょうか。

繰り返しますが、今回の話はアメリカの不動産に詳しい人の話ではなく不動産購入経験者の話です。もしかしたら間違っている部分もあるかもしれないので、情報があればお待ちしています。

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