マンションの基礎知識01 /耐震・免震・制震とは

マンションは鉄筋コンクリートか鉄骨鉄筋コンクリートでできていて、地震に強い構造になっています。今回はマンションの耐震性について、整理してみました。耐震設計の歴史や耐震・免震・制震の違いなど、言葉としてはよく聞いても正確に意味するところをご存じない方も多いのではないでしょうか。マンションの基礎知識、第1回目は耐震・免震・制震とは何かを説明します。

地震の度に進化した耐震仕様

日本で耐震の考え方が広まるきっかけは、1891年(明治24年)に起こった濃尾地震でした。死者7,000人以上、全壊家屋14万棟という被害を受けて、日本で耐震研究が始まります。さらに1923年(大正12年)関東大震災が起こります。死者10万人以上、家屋被害が37万棟に及ぶ大被害がもたらされ、翌24年に市街地建築物法が改正されます。この時、初めて法律で耐震規定が定められました。

※1891年の濃尾地震

昭和になっても地震被害は続きます。1948年(昭和23年)に福井地震が発生し、3800人もの死者を出す大被害がもたらされると、再び法律が改正されました。1950年(昭和25年)に市街地建築物法に代わり建築基準法が施行し、耐震基準が強化されました。戸建てに筋交いが入るようになったのは、建築基準法の施行で定められたからです。さらに新潟地震や十勝沖地震が相次ぎ、1971年(昭和46年)には建築基準法施行令が大場に改正されました。

1978年(昭和53年)に宮城県沖地震が発生し、1100以上の家屋に被害が出ると耐震基準の大幅な見直しが始まりました。1981年(昭和56年)に耐震設計を抜本的に見直した建築基準法施行令の改正が行われます。今でも1981年改正前の耐震基準を旧耐震基準と呼び、81年改正後を新耐震基準と呼ぶほど、この時に行われた改正は大きなものでした。その後1995年(平成7年)の阪神淡路大震災を受けて、2000年にも建築基準法の見直しが行われています(この時は戸建て中心の改訂)。このように建物の耐震性は地震が起こる度に強化され、今日に至っています。

長期荷重と短期荷重

建物の耐震性は構造計算によって決まります。この時に長期荷重と短期荷重という2つの荷重を計算します。長期荷重というのは、建物に常に加わる重さで、建物のが存在し続ける限り加わる荷重です。その中で最も大きいのは建物そのもの重さ、自重になります。さらにマンションに持ち込まれる家具、人の重さなども長期荷重として計算されます。長期荷重に耐えられない建物を作ってしまうと、完成後に自然に壊れてしまうことになります。

短期荷重は自然現象によって、何十年かに1度加わる荷重になります。積雪による荷重や風が建物を揺らす力などが含まれますが、短期荷重の中で最も大きなものは地震になります。そのため建物の耐震性という時は、短期荷重の計算が注目されることになります。

ちなみに地震には縦揺れと横揺れがありますが、建物を破壊するのは横揺れのエネルギーです。そのため短期荷重で計算される地震は水平方向の力、すなわち横揺れだけが計算されています。

地震のための3つの構造

マンションに限らず全ての建物は、地震に耐えうるように造られています。その構造は大きく分けて3つあるので、それぞれの特徴をまとめてみたいと思います。

①耐震構造とは

建物の主要構造部材の柱・梁・壁・床の強度によって地震の揺れから建物を守る構造になります。あらゆる形状の建物に適用が可能なので、ほとんどのマンションが耐震構造で建設されています。

※耐震構造の場合、上階の方が揺れが大きくなります。

地震のエネルギーを直接受け止めるため建物の揺れが大きく、地震の規模によっては建物がひび割れたり損傷を受けます。建物の構造体を守るために、あらかじめ壊れることを前提にした雑壁と呼ばれる壁もあるので、ある程度の規模の地震に遭遇するとひび割れが発生しやすい特徴があります。

②免震構造とは

建物と地面を切り離し、免震装置によって建物を浮かせて設置しています。免震装置のダンパーが地震の揺れを吸収し、免震層が地震のエネルギーを吸収するため、建物の揺れが少なく建物の損傷も少なく済みます。

※免震は建物全体が等しく揺れます。

建物や敷地の形状によっては、免震構造が採用できない場合があります。また免震装置もメーカーごとにさまざまな種類があります。その免震装置は定期的なメンテナンスが必要なため、維持費が高額になりやすいという問題があります。

③制震構造とは

建物内や屋上に設置した制震装置で地震の揺れを吸収します。揺れによる建物の変形も制震装置が吸収してくれるので、建物の損傷が少なく済みます。また高層建物の場合、風による揺れに対しても制震装置を作用させることもできます。

※制震構造の場合、揺れ方は制震装置によって異なります。

制震装置の種類にもよりますが、補修や交換が容易なものが多く、比較的短時間で地震の前の状態に戻ることができます。しかしこれら制震装置にはメンテナンスが必要で、免震構造と同じく維持費が高額になりやすい傾向にあります。

どれが最も優れた構造か?

耐震・免震・制震の中で、どれが最も良いのかを質問されることがよくあります。しかしながら、どれにも一長一短があるので3つの構造が物件ごとに使われています。地震による被害が最も少ないのは免震構造ですが、建築時のコストが最も高いですし維持費も高額になります。さらに建物の形状や敷地の形状に制限があり、どのマンションでも免震構造を採用できるわけではありません。

最も安価にできるのは耐震構造ですが、上階の揺れが大きく地震時には家具の転倒などが起こりやすくなります。また耐震構造ではある程度の規模の地震になると、雑壁と呼ばれるコンクリートの壁が壊れることで建物を倒壊から防ぎます。そのため地震後の改修が大がかりになることがあります。

※黒い壁が雑壁と呼ばれる部分

制震構造は免震構造のように敷地制限を受けないというメリットがあり、地震時には耐震構造のよりも被害が少ないという特徴があります。しかし耐震構造に比べて建設時のコストも維持費も高額になります。このように一長一短があり、どれが最良とは言えないのです。そのため物件の特性に合わせて採用されているので、どれが最も優れているとは言い切れないのです。

まとめ

日本の耐震基準の進化と耐震・免震・制震の違いについて書いてみました。マンションの9割以上は耐震構造ですが、震度7でも倒壊しない造りになっているのでどの構造でも命を守れるようになっています。しかし耐震構造は大きな地震の後に、割れた雑壁の改修などの費用がかかることになります。免震構造や制震構造にすると、地震でも壊れる部分が少ないので改修費用を抑えることができますが、維持費が高いのでどちらが良いとは言い切れません。

マンションを購入する際には、そのマンションがどのような構造なのかを知っておくことで日頃からの心構えも変わってくると思いますので、ぜひ自分のマンションの構造を確認してください。

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