大規模修繕業者をどうやって決めるのか /無駄な費用を掛けないやり方の紹介

前回は相談を受けた、関西のマンションの大規模修繕について書きました。コンサルタントの経験不足から迷走してしまったようで、大規模修繕工事が大幅に遅れることになったようです。そこで今回は、大規模修繕工事を行ううえでどのような手順で行うのか、私が行っている一般的な方法を書いてみたいと思います。無駄な費用を極力抑えるやり方なので、参考にしてください。

前回記事
2000万円ほど安くさせますよ /失敗するコンサルタントの値下げ交渉

コンサルタントとしての大規模修繕

コンサルタントは、大規模修繕を実施するわけではありません。大規模修繕がスムーズに行われるように、理事会や修繕委員と一緒に大規模修繕工事の方向性を決めて、交通整理を行います。そのためコンサルタントを雇えば、あとは任せておけば大丈夫というわけではありません。中には管理組合の手間を省くためにコンサルタントを雇うと考える方もいますが、任せきりにすると悪徳コンサルタントの食い物にされる可能性があります。

悪徳コンサルタントに関しては、国土交通省も警鐘を鳴らしていて、平成 29 年1月 27 日に「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」という通知分を出しています。誰かに任せっきりにすれば、それだけ不正が発生するリスクが生まれます。コンサルタントを雇えば何もしなくて良いのではなく、コンサルタントと一緒に大規模修繕工事を行う気構えが必要になります。

それでは以下に、私が行っている大規模修繕業者の選定方法を書いていこうと思います。詳細を書くとあまりに長文になるので、これはあくまでも大まかな流れだと思ってください。

建物の調査を実施

大規模修繕工事の相談を受けたら、簡単にスケジュールを立てます。と言ってもいきなり大規模修繕工事をいつ頃行うかを決めるわけではありません。まず建物の調査を行う日付を決定します。これは「いつ大規模修繕工事を行うべきか」「その工事は本当に必要なのか」を知るための調査になります。

長期修繕計画には多くの工事が記載されていますが、その全てを行う必要はありません。どこが痛んでいて、どの工事をいつ頃行うべきかを知るために建物調査が調査が必要になります。建物調査を行うには、管理会社から鍵を借りる必要が出てきますし、場合によっては管理人さんの協力も必要になります。そのためいつ調査を行うのか、そしていつ理事会や修繕委員会に報告するのか、その日程を決めます。

建物調査はマンション共用部を可能な限り見てまわります。屋上に始まり、廊下や集会室など、可能な限り見て回れる場所をチェックしていきます。それぞれ傷んでいる場所を撮影し、それぞれの箇所をどのいつ頃修繕するべきかをまとめていきます。これらを報告書にまとめ、大規模修繕工事をいつ頃行う方が良いかアドバイスを行います。

大規模修繕工事のスケジュールを決める

大規模修繕工事を3年以内に行う場合、具体的なスケジュールを決めます。大規模修繕工事の発注の仕方は、大きく分けて3種類あります。もっともメジャーな方式である「設計管理方式」、小規模物件や小規模の工事に向いている「責任施工方式」、そして「プロポーザル方式」です。この3つの発注方式に関して、何がどのように違うのかは以下の記事を参照してください。

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基本的に、私はプロポーザル方式を勧めています。談合が最も起こりにくく費用を抑えることが可能だからです。もちろん私が発注方式を決定するわけではなく、理事会や修繕委員会と話し合いを行って決定しますので、責任施工方式や設計管理方式になる場合もあります。ここではプロポーザル方式に決まったと仮定して、話を進めたいと思います。施工会社の談合に関しては、以下の記事を参考にしてください。

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工事内容の選定

先の調査に基づき、大規模修繕でどのような工事を行うか決めていきます。長期修繕計画に記載してあるものでも、まだ修繕しなくても良い部分は工事からはずし、工事が必要に迫っているものは工事を行うことにします。私の方で素案を作り、理事会や修繕委員会で写真を見ながら項目を選定していくのです。

外部足場がなければできない工事を最優先に考え、必要であればこれらの工事を加えていきます。外壁やバルコニーの工事が足場がなければできない工事で、それ以外の工事は後からでもできるので、先送りできるものは先送りにします。傷んでもいない箇所を修理するのは無駄です。すぐに工事が必要な箇所をピックアップして、工事内容と工事範囲を決めていきます。

この作業を行うと、どうするべきか迷う箇所が出てきます。すぐにやるべきかどうか、判断がつきづらい場合は、とりあえず工事範囲に入れてしまいます。見積もりをしてもらってから費用を見て削ることも可能なので、悩む部分は工事範囲に入れてしまいましょう。

見積書作成の依頼

工事業者は業界紙を使って公募を行います。物件概要と工事内容、工事範囲を簡単に明記して工事を希望する業者に立候補してもらうのです。多い場合は、20社ぐらいから連絡があることもあり、こういう場合は会社概要や過去の工事履歴を送ってもらい、5社から10社に絞る場合もあります。また20社であっても、全社に見積書を提出してもらうことにする場合もあります。これらは理事会や修繕委員と一緒に検討していきます。

見積書を作ってもらうために、各社に現地調査を行ってもらいます。ここで重要なのは、各社が現場で顔を合わせないようにスケジュールを決めることです。自分たち以外にどのような業者が参加しているかわかると、談合をしてしまう可能性があります。互いにどの会社が見積もりに参加しているかわからないようにすることが重要なのです。また見積書を作成する場合に、各業者からの提案工事も受け付けます。こちら側で決めた工事範囲や工事内容以外に、業者の方で行った方が良いと思う工事を提案してもらうのです。

工事業社の1次選考

各社から見積書が集まると、私の方で比較表を作成します。工事金額だけでなく、工事内容も比較できるようにします。この比較表を使って、理事会や修繕委員会で1次選考を行います。1次選考では3社から5社ぐらいに選びます。2次選考では各社にプレゼンをしてもらうので、あまり多いと聞くのも大変になります。もちろん10社でも20社でも話を聞きたいと理事会や修繕委員会が望めばそれでも良いのですが、聞くだけでも大変疲れます。そこで3社から5社程度に絞って、話を聞くようにします。

ここで重要なのは、工事金額だけで選考しない事です。提案工事が多い業者は、そのマンションをよく見て考えてくれている可能性が高いのです。安い順番に5社を選ぼうとしがちですが、見積書の内容を吟味することが重要になっていきます。さまざまな提案をしてくる業者に、なぜそれを提案するのか詳しく聞きたいという場合もありますし、施工方法が独自の業者があれば、それを聞きたいという場合もあると思います。

工事業者の2次選考

1次選考で選ばれた数社にプレゼンをしてもらいます。プレゼンの相手は理事会、修繕委員会、そして住民の方々です。プレゼンでは各社がそれぞれの想いをぶつけてもらうのですが、業者さんによってアピールポイントはさまざまです。おまけ工事をアピールする会社、価格の安さをアピールする会社に加えて、工事担当社員の人柄をアピールする会社もあります。

全てのプレゼンを聞いた後で、参加者全員で話し合いを行います。それぞれの業者に対して、私からコメントを述べることもありますし、私そっちのけで盛り上がることもあります。さまざまな意見が出たところで、多数決をとって業者を決定します。そして業者が決定したら、詳細を業者と詰めて工事範囲や工事金額を最終的に決定します。

この方法のメリット

①工事費の圧縮

複数の業者を公募で募るので、業者間に価格競争が起こります。他にどんな業者が参加しているかわからない状態なので、なるべく安くするためにさまざまな努力を重ねます。設計管理方式では、指名された業者が決められた工事範囲の見積書を作るだけですが、それでは安くしようと業者は考えにくいのです。ただこの際に、大規模修繕工事の相場は1住戸あたり○○万円といった数字がネットに溢れていますが、その数字を過信して価格交渉をするのは危険です。そもそも当てにならない数字があちこちで言われているからです。

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②業者のやる気がわかる

この方法では、現地調査やプレゼンなどで業者が何度も足を運ばなくてはなりません。業者にとっては面倒ですし、手間がかかるということはお金もかかります。その中で現地調査をもう一度行いたいと言ってきたり、電話やメールで何度も細かな点を質問してくる業者もいます。こういった業者は、どうしてもこの仕事を受注したいというやる気があることがわかります。また現地調査も1人で来る業者、数人で来る業者などさまざまで、各社の対応の違いがわかります。

③業者から提案を受けることができる

業者から提案を受けるので、こちらが思いつかなったことを知ることができます。普段から住民が気になっていた劣化箇所や、私が検査をして見つけられなかった点を業者が指摘して工事の提案をしてくれることもあります。こうした指摘をしてくれる業者や、新たな提案をしてくれる業者は理事会や修繕委員会に好印象を与えるので、積極的に提案してくれる業者がいます。またこのような提案を沢山してくれるということは、上記の業者のやる気を知ることも可能です。住民は、自分達のために隅々までマンションを調べてくれて、色々と考えて提案してくれる業者に任せたいと思う様になります。

④談合が行われにくい

業者からすると、他にどの業者が参加しているか分からないため、談合が難しくなります。談合は大規模修繕の大きな問題になっており、管理組合が余計な費用を支払ってしまう要因になっています。この方法は談合を完璧に防ぐ手段とは言えないですが、談合がしにくい方法になっているためある程度は防ぐことが可能です。大規模修繕工事の談合に関しては、以下の記事を参考にしてください。

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この方法のデメリット

①手間が増える

多くの業者の中から選ぶので、私の手間が増えるだけでなく理事会や修繕委員会の手間も増えます。各業者から見積書をもらった後に一覧表を私の方で作成しますが、各社ごとに見積書の書き方が違うので比較しやすい一覧表を作るのは大変です。また理事や修繕委員も何度も集まって打ち合わせをする必要が出てきますし、業者選びも簡単には終わりません。設計管理方式にはこのような手間はなく、かなり手間がかかる方法だと言えます。

②時間がかかる

ここに書いたのは大まかな流れですが、ここまで読んだ方なら作業工程が多いと感じられるでしょう。そのため業者選定に時間がかかります。大規模修繕工事を行わなければならない時期が決まっている管理組合では、スケジュール的に難しいことがあります。そのため管理組合によっては、この方法が難しいこともあります。

まとめ

私が大規模修繕工事の業者選定を行う際の、大まかな流れを書いてみました。この方法は手間も時間もかかりますが、余計な工事を減らして価格競争を起こしてコストを削減することが可能です。どの程度削減できるかはマンションによって様々ですが、どのマンションでも一定の成果が出ています。しかしこの方法で最も重要なのは、不要な工事をせずに必要最低限の工事をすることで、その結果として工事費を削減できるのです。そのためコストありきで業者を選ぶのではなく、どの業者がどういう提案をしているのか、自分達に最も合った業者はどれかを考えて選ぶことが重要です。大規模修繕の業者選定で悩んでいる、管理会社から指定された1社に決まりそうで不安があるといった理事や修繕委員の方は、ぜひご相談ください。

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