大規模修繕の談合3パターンを解説します

大規模修繕の談合というのを聞いたことがある人は多いと思います。100戸クラスのマンションなら工事費用が1億円を超えることも珍しくなく、工事業者にとって旨味がある工事です。そのため複数の業者が談合を行い、工事費を吊り上げることがあちこちで行われているのです。今回はマンションの大規模修繕の談合3パターンを解説します。

業者にとって旨味が多い大規模修繕工事

工事業者にとって大規模修繕工事は、とても割りの良い仕事です。マンション デベロッパー をはじめ、建物の建設を依頼する企業の多くは建設部など建築の専門家を置く部署があり、見積書の段階で厳しいチェックが入ります。工事に関しても同様で、工事の方法からチェックされますし完成検査でも細かく仕上がりを見られます。

しかし大規模修繕工事はマンション管理組合の依頼で工事を行うため、見積書のチェックも検査も甘く、普段の工事ほど高い精度が要求されないことがほとんどです。業者がゼネコンを相手にする場合、数円単位で調整されることが珍しくありません。しかし相場も分からず工事の仕方も分からない管理組合なら「この工事の費用は、こんなものです」と言えば、通ってしまうことが多々あるのです。

完成検査にしても、公的な施工基準を知る管理組合員がいることは稀なため、多少精度が悪くても誤魔化すことができますし、そもそも細かい検査が行われることはほとんどありません。予算を多めにとって、手間をかけずに仕事をすることが可能な大規模修繕工事は、多くの業者が請負たいと思う工事になっているのです。

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①管理会社が主導の談合

ネットなどによく書かれているのが、管理会社が主導して行う談合です。大規模修繕工事は管理会社が主導して行われることが多いので、管理会社が談合を主導しやすい立場にあります。管理会社が複数社に大規模修繕工事の見積もりを依頼します。しかし予め受注する会社が決まっており、各社の見積書の金額を調整していきます。下図ではA社が受注することが予め決まっているため、A社の見積書が1億円ならB社は1億1000万円、C社は1億2000万円など、A社より高い見積書を出すように管理会社が依頼するのです。

どの会社が受注するかは持ち回りになっており、各社が平等に受注できるようになっています。そして受注した会社は管理会社にキックバックを支払うのです。キックバックの額は受注額の10%程度が多いようですが、中には20%にもなる場合があるそうです。20%と言えば管理組合が1億円で発注した工事から、2000万円が管理会社に支払われることになります。工事は実質的に8000万円分しか行われず、管理組合にとっては大きな痛手になってしまいます。

こうした報道に対して、管理会社のフロント社員の多くが違和感を持っているようです。私が直接話した管理会社のフロントの多くは「そのようなことはありえない」と口を揃えていました。これは当たり前の話で、フロントが談合の全貌を知ることはありません。フロントが知ってしまえば、管理組合に話してしまうリスクが伴います。談合を行っている管理会社は工事部などを設け、そこが主導しているためフロントは談合の実態を知らないのです。

②施工会社が主導する談合

談合のスキームは、上記の管理会社が主導する場合とほぼ同じです。しかし管理会社は知らず、施工会社だけで談合をしているケースです。多くの管理会社は決まった業者とやりとりをしています。大手の管理会社になればなるほど協力業者の審査が厳しいため、業者の入れ替わりは頻繁に行われません。そのため同じような会社が見積もりを提出し、競い合うようになってしまいます。

毎度のように値引き合戦を展開し、互いに利益を削り合うようになると、お互いに手を組んで損をしないようにしようと考えて談合が始まります。この場合は管理会社も談合が行われていることを知りません。キックバックはありませんが、施工会社の都合で見積金額が高くなってしまいます。

③コンサルタントが主導の談合

国土交通省も不適切なコンサルタントによる談合を懸念し、通達を出しています。

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コンサルタントが主導する場合も、管理会社主導の場合とスキームは同じです。管理会社のがコンサルタントに置き換わっただけで、なんら違いはありません。しかしコンサルタントが談合を主導する際の特徴として、修繕委委員長や理事長がグルになっている場合があることです。

そもそもそのコンサルタントは、どういう経緯で任されたのでしょうか。理事長などの紹介によって登場し、管理組合の利益になるような甘言を並べて信用を勝ち取っていくというケースが多くみられます。理事長の強い推薦で契約すると大規模修繕の業者選定に深く関わり、談合を主導してキックバックを理事長と山分けするのです。もちろん理事長がグルになっているケースは、管理会社の場合でも聞くことがあります。しかしコンサルタントは理事長や修繕委員長の個人的な付き合いから介入することが容易なためか、不審なコンサルタントによる大規模修繕工事への疑問が広がっていて、国土交通省も通達を出すことになったと思われます。

まとめ

このように談合にはいくつものパターンがあり、公正に入札が行われているように見えて公正さの欠片もないケースが増えています。プロが行っているため談合を見抜くのは難しく、怪しいケースがあっても決定的な証拠がない場合がほとんどです。私は施工する側として大規模修繕工事にタッチし、明確にキックバックを「紹介料」の名目で請求されたことがありますが、露骨に請求するケースは稀です。多くの場合、彼らはもっと上手くやっています。談合を見抜く方法はありませんが、談合されにくい発注方法はあるので、それはまた別の機会に書いてみたいと思います。

大規模修繕の進め方に不安がある方は、以下のメールフォームからご連絡ください。管理組合の状況によって、様々なアドバイスができると思います。

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