廃墟化した滋賀県のマンションが解体へ /廃墟マンションの行く末

滋賀県野洲市で問題になっていた廃墟マンションで、新たな動きがありました。2020年6月29日、野洲市はマンションの解体費用が1億1800万円になったことに加え、この費用をマンションの所有者9人に請求する考えを示しました。1人あたり1300万円以上の支払いを求めることになるのですが、回収できる見込みは立っていません。今回は、なぜマンションが廃墟になってしまったのか、そして滋賀県野洲市が解体することになった経緯を解説します。この事例は廃墟マンションの行く末を示す良い事例だと思います。

物件概要

物件名:美和コーポ B棟
竣工:1972年
構造・規模:鉄骨造3階建て
総戸数:9戸
延床面積:408.12㎡ 敷地面積:198.85㎡

この延べ床面積からすると、1部屋あたり40㎡前後の小ぶりのマンションだったことがわかります。もともとは隣接している4階建てマンションの付属建築物だったそうですが、竣工後に建物が分割登記されています。敷地も分筆されて独立した別の不動産になっており、建物の区分所有権も移転されているようです。なぜ建物を分割したのか、その経緯は不明です。

これまでの経緯

2010年1月 滋賀県がアスベストの飛散防止措置の勧告を区分所有者に出す。
2012年11月 野洲市生活安全化に建物の危険性に関する苦情が入る。
2013年12月 野洲自治会が区分所有者に建物の改善指導書を送る。
2018年6月 大阪北部地震により市道に面した壁が崩落
2018年8月 アスベストの分析調査でアスベストの含有が判明しする。
2018年9月 空家対策特別措置法に基づき「特定空き家」に認定
2018年10月 台風24号で外壁が剥落
2018年12月 区分所有者に必要措置を講じることを勧告。
2019年3月 所有者に解体を命令する文書を郵送。
2020年1月 行政代執行でマンションの解体を開始。

なぜ10年もかかったのか

建物の解体には区分所有者の同意が必要ですが、何人かの区分所有者の連絡がとれませんでした。そのため合意形成ができず、危険な状態のままマンションが置き去りにされていました。そもそも現在の区分所有者も、このマンションに住んだことはなく、親からの相続などで区分所有者になった人達がほとんどです。

※こちらは別の物件の写真です。

そのため野洲市が行政代執行で解体することになったのですが、解体費用を全額回収できる見込みが薄いため市の財政に与える影響も大きく、解体に慎重にならざるを得なかったようです。しかし相次ぐ天災で建物の倒壊の危機が迫り、アスベストも発見されていたため、行政代執行に踏み切ったようです。

なぜ廃墟になったのか

2010年頃から住人は出て行ってしまい、空き家状態が10年も続いていたようです。入居者の多くは他界しており、現在の区分所有者は親から所有権を相続した人達なので、詳しい経緯はわかっていません。ただ区分所有者の1人は、父親から雨漏りが止まらなくなり、どんどん住民が出て行ったと聞いたそうです。修理しようにも修繕積立金がなく、修理ができずに建物がどんどん悪化していったのではないかと思われます。

※外壁が崩落し3階の手すりが落ちているのが確認できます。

このように修繕積立金が足りないのが発覚した時には、住人が高齢になっていて年金しか収入がなく、修繕積立金を値上げしようにも値上げできないマンションが今後は増えていくと予想されます。こうなると住民が出て行って空き家が増え、区分所有者とは連絡がつかずに修繕積立金が納められることもなく、マンションの財政はどんどん悪化していきます。この負のスパイラルに入ると、手の施しようがなくなってしまいます。以前、マンションが廃墟になる過程を書いたので、そちらも参考にしてください。

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子供に負の遺産を残すことに

最近は定年退職後に、終の棲家としてマンションを検討する人が増えています。しかし物件選びを間違えると、子供にとんでもない負債を残すことになりかねないことをこの事件は教えてくれます。この滋賀県のマンションでは、相続した子供達が1300万円以上の負債を抱えてしまいました。この額は人生を狂わすには十分な金額です。

ある程度の築年数が経ったマンションで、修繕積立金の不足が目に見えているのに値上げに反対されて困っている理事会の話をちょくちょく聞きます。中にはマンションが破綻することがあっても、自分が先に死ぬだろうから関係ないと開き直る人もいるようで、こうなるとマンションの破綻と寿命のチキンレースになってしまいます。しかしそのマンションを相続する子供達が負債を抱える可能性があることも考えなければ、今回の滋賀県野洲市の廃墟マンションのように多額の債務を抱える可能性があります。

終の棲家に買うマンションはどんなマンションが良いか?という質問を受けることが増えましたが、どのマンションを選ぶかだけでなくマンションをどう管理していくかが重要になると私は考えています。

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マンションを廃墟にしないために

ご自分のマンションを廃墟にしないために、マンションの管理を見直すことが重要です。管理会社に全て任せるのではなく、自分たちの目で管理状態を点検しなくてはいけません。そのためには、マンションの資産性は自分たちで守るという意識が必要です。マンションを管理し守っていくのは管理会社ではなく、住民一人一人なのです。

資産性のあるマンションは、中古でもよく売れます。中古で売れるということは住民の入れ替えが行われるということで、住民の若返りも期待できます。資産性がないマンションは誰かが出て行っても買う人が現れず、空き室が増えていき、そのうち所有者がわからず管理費や修繕積立金も払ってもらえず不足していき廃墟への道が始まります。

そのためには、まず普段の行動を変えていきましょう。どのように変えていけばマンションの資産価値を下げずに済むかは以下の記事にまとめました。

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まとめ

このマンションでは漏水などのトラブルから住人が逃げ出し、マンションが廃墟のようになってしまいました。当初マンションを購入した人達の多くが亡くなり、連絡がとれなくなっていたので解体しようにも区分所有者の合意形成ができませんでした。そのため建物はボロボロになり、危険な状態で何年も放置されていました。区分所有者は野洲市から1億1800万円もの支払いを命じられており、一人当たり1300万円を超える金額になります。

こうした事態に陥らないためには、マンションの管理状況を把握して問題があればすぐに改善することです。それには管理会社任せにするのではなく、自分たちでマンションを守っていくという意識が重要になっていきます。具体的に何から始めたら良いかわからないという方は、以下のフォームからご相談下さい。マンションの状況をお聞きしたうえで、ご相談させていただきます。

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