建設業界の談合は尽きない /半値八掛け五割引の世界

ゼネコン の談合は定期的にニュースになります。なぜ建設業界の談合は尽きないのか?と世間では言われますが、建設業界の構造的に難しいと言われています。談合は悪ではありますが、今回はあまり語られない談合の一面について書いてみたいと思います。ゼネコンの談合は尽きないです。なぜなら多くの関係者が必要悪だと思っているからです。

公共事業と民間事業

多くのゼネコンは公共事業と民間事業を手がけるか、そのどちらかだけで仕事をしています。民間事業が専業になっているゼネコンもありますが、ある程度の規模のゼネコンになると少数になります。それは公共事業の方が利益を出しやすいからです。なぜ公共事業の方が利益を出しやすいかというと、予算の決め方が公共事業と民間事業では全く異なるからです。

公共事業は国会や県議会、市議会などが何かしらの建設を決めて、その国会や議会で予算が決められます。この時の予算は、民間に比べると緩い金額になっています。あまり厳しい金額にすると入札に参加するゼネコンが減るかもしれませんし、お金が足りなからと手抜き工事をされても困るからです。そのため公共事業は落札すると高い利益を見込めますが、逆に工事が予算を超過するような事態に陥っても追加予算はまず出ません。

一方で民間事業は私企業が利益を出すために発注しています。そのため大抵の場合、予算は厳しくなっています。マンションを販売する デベロッパー は、なるべく安く建てて高く売らなければ利益を確保できません。また賃貸ビルを建てる際には何年で建設費を回収できるかが重要になるので、少しでも安くしたいと考えます。また工期も公共事業に比べて短いことがほとんどです。例えば自社ビルの建設であれば、事業主は早く入居した方が現在の事務所の家賃を払わなくて済むので、1日も早く完成して引っ越したいと考えているからです。

儲かる仕事と儲からない仕事

民間事業の中にも、ゼネコンが儲かる仕事と儲からない仕事があります。公共事業に比べて工期が短いのは変わりませんが、予算が大きく違うのです。例えば本社ビルを建設する仕事は、その会社のシンボルになる建物ですから予算をケチることは少ないです。どうせ建てるのですから、少し予算を増やしてでも立派なものを建てたいと考えます。

しかし分譲マンションや賃貸マンションは、利益を出すために少しでも安くしたいと考えがちです。安くしても見た目は豪華にしたいという要求が強く、予算はないのに高級な仕様や仕上がりを求められます。さらに新学期が始まる4月までに入居を終わらせたいため、着工が4月だろうが6月だろうが竣工は2月や3月と決められています。極端に短い工期なのに予算が厳しいというケースは珍しくありません。

これはホテルなども同様で、予算は少しでも安くして見た目は立派にしたいというのがあります。またホテルの場合は通常の消防検査や建築確認検査に加えて保健所による施設調査なども入るため、より工期が圧迫されます。しかし開業を遅らせることは絶対にできないので、マンション同様に突貫工事になることがよくあります。その他にも病院やパチンコ屋など、ゼネコン泣かせと言われるものがあります。とにかく民間事業は大変で、その割に利益が少ないことが多いのです。

民間分譲マンションは薄利か赤字

上記のように民間分譲マンションを建設しても、ゼネコンはあまり利益を上げられないことが多くあります。工期が短いということはお金が掛かるということです。10億円の予算で工期が18ヶ月のマンションがあったとして、同じ規模と仕様で工期が短くなると費用がより必要になってしまい、12億円とか13億円かかってしまいます。短い工期の中では多くの職人を同時に入れる必要があり、無駄が出ても人数を投入しないといけなくなるからです。

そして何より面倒なのはアフターサービスです。ほとんどの建物はオーナーは1人か1社です。しかし100戸の分譲マンションではオーナーが100人いるため、アフターサービスの手続きが煩雑になりがちです。専有部と共用部を分けて対応しなくてはなりませんし、どんなにアフターサービスを良くしても、マンションのオーナーや管理組合がマンション工事を発注してくれるわけでもありません。わずかな利益しか上げられていないマンションで面倒なトラブルが発生すれば、利益なんか簡単に吹き飛んでしまい赤字事業になってしまいます。

このように民間分譲マンションの工事は、予算が少なく工期が短く利益が少なく手間ばかり掛かることになります。ゼネコンにとって決して良い仕事とは言えず、可能ならやりたくないと思っている現場所長も多いのです。では公共事業のような利益が出やすい工事ではなく民間分譲マンションの仕事をするかというと、他に仕事がないという側面もありますが、公共事業の入札に必要な完工高を得るという目的もあるのです。入札に参加するにはある程度の仕事をしているゼネコンでなければなりません。そのため前年の完工高(売上のようなもの)が条件になっていることが多いのです。そこで薄利であっても、時には赤字であっても民間の仕事を請けることがあるのです。

半値八掛け五割引の攻防

半値八掛け二割引は、株式市場で使われる言葉です。最高値をつけた株価が降下した際に最高値の半値八掛け二割引になったら買い戻しのタイミングと言われています。しかしマンションデベロッパーでは、値引き額として半値八掛け五割引なんて言葉が飛び交うことがあるのです。例えば照明器具を選定する際の事です。パナソニックや東芝、大光電気、コイズミ照明などさまざまな照明のメーカーから選ぶことになります。

仮に定価1万円の照明があったとします。半値で5000円、八掛けで4000円、5割引で2000円になります。定価1万円の照明をメーカーに対して、2000円からいくら安くなるかと問いかけるのです。定価1万円の照明を2000円で売れというのもかなり強い言い方ですが、そこからさらに安くしろと迫るのです。こうなると原価割れになるから無理と降りるメーカーも出てきますが、中にはなんとかしてしまうメーカーもいるのです。

値引き額は取引額によって変わるので、どのマンションデベロッパーも半値八掛け五割引で購入するわけではありません。金額はデベロッパーによってさまざまですが、強引に安くしろと迫るのは良くあることで、民間分譲マンションの予算は厳しいのが一般的なのです。そしてこのような無茶苦茶な要求が、交渉の中で平然と飛び交っています。

罪悪感が少ない談合

民間事業では利益がなく、公共事業で利益を得ることで生きながらえているゼネコンは数多くあります。そんな中でフェアな入札が行われると、全社が安い価格を入札するようになるため公共事業でも利益が出なくなる可能性があります。また特定のゼネコンばかりが落札するようになると、その他のゼネコンが倒産するかもしれません。そんなことにならないように談合が行われ、各社が順番に落札するようになっているのです。建設業界は強い1社が他を駆逐するようなことはせず、全員で利益を共有するようにしてきました。突出した1社が出にくい代わりに、どの会社も倒産したりしないように利益を分け合ってきたのです。その結果、公共事業で談合が行われるようになりました。

2018年に発覚したリニア中央新幹線の談合は、その典型的な例です。大林組、清水建設、大成建設、鹿島建設の大手4社が談合を行ったとして、国土交通省から指名停止の処分を受けました。この談合の背景にはこれまでに書いてきた、儲かる仕事をみんなで分配するというだけではなく、入札には「企画」「調査」「設計」と段階を踏んで進むのですが、これらの費用が払われない日本の商習慣にも問題があると言われています。

また民間事業では、事業主の過度な値引き交渉から身を守るために談合が行われるようになりました。あるゼネコンの担当者は「1000円のものを1500円で売るための談合ではない。1000円のものを500円で売れと言われるから、身を守るために談合がある」と言っていました。彼らにとって談合は会社を存続させるための必要悪であり、あまり罪悪感のあるものではないのです。そのため談合は繰り返されますし、なくならないのです。

変わりつつあるゼネコン

これまでに述べたような背景から、談合がなかなかなくならないわけですが、談合は法律に違反したことであり、これが悪いことなのは間違いありません。特に公共事業の談合は税金がゼネコンの利益として還元されてしまうので、多くの国民にとっては腹立たしいことです。これはゼネコンの利益を生む構造そのものに問題があり、業界の体質が変わらない限り根絶は難しいでしょう。

しかしゼネコンも徐々に変化しています。以前は「ゼネコンの営業は地縁、血縁だから合併など意味がない」と言われていましたが、今では合併も増えました。これからのゼネコンの動向にも注目していきたいと思います。

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