管理会社が管理組合を選ぶ時代に突入したマンション管理/ 利益優先主義なのか?

ここ数年、管理会社から契約を切られるマンション管理組合が増えました。そういった管理組合は次の管理会社を探すべく動きますが、なかなか決まらないことが多いようです。なぜこのようなことが起こっているのか、そしてどういう背景でどのようなマンションが管理契約を切られているのかを、今回は考えていきたいと思います。

歪な形で始まった管理会社

独立系の管理会社を除くと、管理会社の多くは親会社やグループ会社になっていて、その中心にはマンションデベロッパー(不動産会社)がいます。デベロッパーがマンションを完成させ販売が終わると、子会社の管理会社にマンション管理をさせていました。デベロッパーはマンションの販売が完了することで利益が確定しますが、売り終わった後も利益を得るために管理会社を設立したわけです。

管理会社からすると、営業をしなくても毎年のように仕事が入ってきます。営業経費をかけずに仕事が増えるという美味しいシステムで、親会社のデベロッパーがマンションを作って販売を続けている限り、管理会社の経営は安泰でした。仕事をしている人なら、営業せずに仕事が来るというのがどれほど楽かはわかると思います。以前、私がいたデベロッパーは、最盛期で年間に300棟以上を竣工させていました。ほぼ毎日、どこかでマンションの引き渡しが行われているという状態で、これほど仕事を与えていればどんな管理会社でも親会社の言いなりになってしまいます。

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言いなりで決まった管理費

マンションデベロッパーは、マンションを完売させて初めて利益が確定します。そのため何がなんでも完売させなくてはなりません。しかもある時期からデベロッパーはマーケティングを行わず、容積率いっぱいにマンションを建設して可能な限り大量に売ることにしました。つまりせいぜい100戸ぐらいしか売れないと思われる土地に、130戸のマンションを建てて売り切ってしまうのです。なんでこんなことになったのかは、別の記事に書いているので、そちらをご覧ください。

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ほとんどの住民は住宅ローンを組んでマンションを購入するため、ローン以外の出費は極力抑えたいと考えます。そのためデベロッパーは、管理会社に対して管理費や修繕積立金を低く設定するように言うようになります。上記のように仕事をもらう立場の管理会社はデベロッパーに強く言えず、言われるがままの低い金額に設定されることが多々ありました。

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つまりそもそもが低い金額で設定されていたので、管理費が足りなくなるのは当然のことなのです。ましてやさまざまなものが値上げしている現在では、管理費を値上げしないと管理会社はやっていけなくなるのです。そのため多くのマンションで、管理会社が管理費の値上げを要求しています。

値上げラッシュの現在

①消費税の税率アップ

消費税の値上げは、さまざまな影響を与えました。消費税がはじまったのは1989年で、それ以前にはありませんでした。当初の税率は3%でしたが、1997年には5%になます。さらに2014年には8%になり、2019年には10%になりました。2012年に竣工した築10年のマンションは、当初から消費税が5%から10%になったわけで、消費税負担が2倍になってしまいました。

②最低賃金等の上昇

最低賃金制度は最低賃金法によって定められたもので、地域によって定められています。ここでは東京の最低賃金を見てみましょう。2000年の東京の最低賃金は703円でした。しかし2021年は1041円になっています。20年ちょっとで1.48倍になっており、約5割増になっています。最低賃金が5割増になったということは、管理人や清掃員の給料が5割増になったということです。そして忘れがちですが、交通費も値上げしています。賃金も経費も値上がりしているのですから、管理費が上昇するのは当然なのです。

参考:東京都労働局「最低賃金のご案内」

③65歳定年の影響

マンション管理人や清掃員の主力は、サラリーマンを定年退職した方々でした。定年しても退屈だし、孫に与える小遣いぐらい稼いでみようかと思う人達がマンション管理人になり、のんびりと仕事をしていたのです。しかし年金の支給が65歳からに引き上げられ、企業が65歳まで雇用するようになると、管理人や清掃員になる人が減ってしまいました。

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変なコンサルタントの傷跡

以前から過激なコンサルタントが、管理費を過度に下げさせる事例がありました。過剰なものをやめて管理費を下げるのはわかりますが、中には管理会社に難癖をつけるようなやり方で管理費を下げているケースが多々ありました。コンサルタントは成功報酬で業務を引き受け、契約や管理会社の業務報告書の重箱の隅をつつくようにして、管理費を下げるのです。

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このようなマンションでは、管理会社はかなり無理をして安い管理費で引き受けているため、管理会社にとっては悩みの種になっていたりすることがあります。

カスハラのダメージ

最近は管理会社からカスハラの話をよく聞くようになりました。管理組合の理事が管理会社のフロントに対して、住民が管理人に対して暴言を言うなどの行為があり、管理会社が撤退するケースが出ています。

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突然の最後通告

よくあるケースとしては、管理会社から突然に管理費の値上げを通告されてしまいます。値上げを認めてくれなければ管理委託契約の更新をおこなわないと言われ、総会で値上げが否決されると管理会社は更新せずに去ってしまいます。管理組合はいくつかの管理会社に連絡をとって見積書を出してもらいますが、以前の管理会社より管理費が高額なのでなかなか決まりません。最終的には自主管理になってしまうケースも少なくないようです。

利益優先主義だけではない

先に書いたように、そもそも安い管理費で管理がスタートしているので、人件費やさまざまな費用が高騰していくと管理費を値上げしないと採算が合わなくなってしまいます。そのため値上げを要求するのですが、値上げができないと管理を継続できなくなってしまうのです。このように経費の高騰により、管理費を値上げしないといけなくなるケースが多くあります。

また某大手デベロッパーでは、次期社長候補がグループ会社の社長になります。そのためグループ会社の管理社長に就任すると、自身の経営手腕をグループ内に示すために利益を追求して、不採算マンションの管理契約を切るようにすると言われています。これは管理会社内部の事情ではありますが、利益が出ているなら管理契約を切る必要はないので、やはり利益の問題なのだと思います。そして管理会社も商売ですから、利益を追うのは当然のことといえるのです。

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