談合できないなら信用できない /大規模修繕工事の談合の根深さ

大規模修繕工事の談合が問題になり、国土交通省が「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の 相談窓口の周知について」という異例の通知を出したのは、2017年でした。それ以降、何度も談合は問題になっていますが今でも横行しています。なぜ大規模修繕工事の談合はなくならないのかを解説したいと思います。とても根深い問題で、業者は「談合できないなら信用できない」と考えているのです。

大規模修繕工事の談合とは

多くのマンションでは大規模修繕工事を12年に1回程度のペースで行っています。その際に大規模修繕工事の業者を選んで発注するのですが、業者を選定する際に管理会社やコンサルタントが業者の談合を指揮していることがあります。もちろん全ての管理会社やコンサルタントが談合を行っているわけではありませんが、このような事例が増えてきたことから国土交通省も通知を出して警鐘を鳴らしているわけです。

談合の仕組みは簡単で、大規模修繕工事の内容を決める際に複数の業者に見積もりを出してもらいます。仮にA社からD社の4社から見積もりを出してもらうとします。つまり大規模修繕工事の入札を行うのです。

4社の見積もりを比較して、最も安い会社が受注します。一見、4社が自由に競争しているように見えますが、実は見積もりを依頼する前からどの会社が受注するか決まっていて、入札は出来レースになっているのです。予算が1億円あるなら、予め決められた業者は9500万円など予算ギリギリの見積書を出し、他の会社は1億1000万円など予算を超えた額を提示するようにコンサルタントが指示するのです。こうして決定した会社はコンサルタントにキックバックを支払います。キックバックの額は工事予算の10%から20%と言われています。

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どの業者が受注するかはコンサルタントが決めていますが、基本的に4社を順番に回しています。どの業者がその仕事に適切かではなく、単に順番で決めているに過ぎないのです。

業者が儲からないより恐れること

ではなぜ業者は談合をするのでしょうか。コンサルタントに10%や、ましてや20%も支払うと利益の確保が厳しくなります。それでも談合に参加するには、何か理由があるはずです。実は業者にとって、儲からないより怖いことは仕事がないことです。そして見積書の作成はタダではないのです。この2つが談合に関わっています。

仕事がない恐怖

建設業者は実際に仕事をする職人を抱えているか、外部に発注しています。職人は仕事をすればするだけお金になるので、多くの仕事があった方が喜びます。逆に仕事がなければ生活ができなくなります。腕の良い職人は仕事をくれない業者から離れていき、仕事をくれる業者を探します。そのため業者にとって、利益が出なくても職人に毎月お金を払えるように、仕事を確保していくことが最も大事なのです。

仕事が終わって会社の利益が出なくても、社員の給料と職人に支払いができれば会社としてはなんとかなります。しかし職人に仕事をさせないと、職人はどんどん辞めていき、残るのは他で仕事を取れないような腕の悪い職人だけになってしまいます。業者にとって利益が出ない以上に仕事がないというのは、確実に会社を弱体させることに繋がるので赤字にならない程度の仕事でも欲しいのです。

見積書作成の費用

よく「見積書を取るだけならタダですから」なんて言葉がありますが、実際に見積書を作るには費用が発生します。社員が何時間もその作業に取り掛かるわけですし、現地を見に行かなければなりません。交通費や人件費などをかけて見積書が作成されるのです。しかし見積書に対して費用を払ってくれるケースは少なく、大抵の場合は見積書の作成はタダになっています。

そのため見積書作成依頼ばかりが来て、実際に仕事が取れないとなると業者はどんどん損をしていきます。見積書を作れば受注できるのがベストですが、せめて何度か見積書を作成したら仕事が欲しいと考えるのは当然です。しかしそうもいかない場合があり、見積書を何度作っても受注できない業者もいるのです。

談合があるから安心して仕事ができる

談合は上記の仕事がない恐怖や、見積書を作り続けるだけの徒労から開放してくれます。談合に参加すれば見積書を数回作れば確実に仕事がはいりますし、キックバックで利益が圧迫されても職人に支払う費用は出せるのです。そのため自由競争の入札よりも、安心して業者は参加することができます。

特に大規模修繕工事の見積書作成は、多大な時間とお金を要します。そのため何度も入札に参加して仕事を取れないとなると、業者としてもダメージが大きいのです。私は談合を指揮したことはありませんが、これを嫌っている業者がいるのも事実で、キックバックを支払う必要がないなら入札には参加しないという業者もいるのです。談合は業者にとって安心を得る仕組みになっているため、談合を徹底的にさせない人のところには業者が集まらなくなる可能性もあります。

談合はマンションの大規模修繕工事だけでなく、国家レベルの事業でも行われています。2018年にはリニア中央新幹線の工事をめぐり、談合でスーパーゼネコン4社が国土交通省から指名停止の処分を受けました。この談合の根底にあるのは、入札に落ちてしまったら見積もり費用どころか調査費用も出ないため、数年間かけて何千万円(場合によっては1億円以上)の出費が無駄になるからです。この件については以下の記事に書いていますが、談合は建設業界とは切っても切れないものになっているのです。

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見積書に費用を払う時代か

これまで業者側の視点で書いてきましたが、管理組合からすると、これらの理由は到底受け入れられないものでしょう。毎月せっせと支払ってきた修繕積立金が、コンサルタントのポケットに入ってしまうのです。修繕積立金が足りないと管理会社に言われて泣く泣く値上げを飲んだりしているのに、そのお金がマンションに使われないというのは、耐えられない事態だと思います。

これらの矛盾を考えると、見積書を作成依頼する際には見積書の作成費用を支払うことも考えないといけないと思います。数日間かけて見積書を作成するには、それなりの費用が掛かっています。工事の規模によって適切な額は変わりますが、依頼する側が負担する時代になってきたのかとも思います。見積もりに掛かる費用の全てでなくとも、一部でも負担することで業者は安心して入札に参加することができます。しかし企業でも一部しか行っていない見積書に費用を払うという行為を、管理組合で行うのはハードルが高いようにも思います。

まとめ

多くの業者は儲からないこと以上に、仕事がないことを恐れています。さらに見積書を作るだけでも労力と費用を掛けているので、何度も入札に参加して仕事が取れないことを嫌います。そのため談合は利益を圧迫しますが、確実に仕事を得ることができるので安心できるシステムなのです。そのため根絶が難しく、国土交通省が通知を出した後でも無くなっていません。今後も談合は大規模修繕工事の大きな問題だと思います。

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