防災グッズを阪神大震災の被災者に教わる /避難所編

大地震や水害、台風など自然災害が増えてきたこともあり、防災グッズに関心が集まっています。そこで今回はマンションに住んでいる人が、どのような防災グッズを揃えれば良いかを考えてみたいと思います。阪神淡路大震災を被災した人から聞いた話を元に書いていきたいと思います。

防災グッズについて教えてくれた方

兵庫県に住んでいた1995年に、阪神淡路大震災の直撃を受けました。戸建てに住んでいたのですが自宅は崩壊して完全に潰れたそうです。隣に寝ていた奥様の無事を確認すると、瓦礫の中から子供達の声が聞こえたので、夢中で瓦礫をどかして子供達を救出し、傷だらけの体で一家揃って避難所に向かったそうです。停電して真っ暗な瓦礫だらけの道を歩いて避難所に辿り着き、ようやく着いたら人が溢れていたそうです。

※阪神淡路大震災

数ヶ月間に渡る避難所生活を続け、仕事にも避難所から通っていたそうです。その時の教訓を元に避難グッズを揃えています。避難バッグは寝室に置いていて、寝ている時に被災してもすぐに持ち出せるようにしていると言っていました。

避難所避難か自宅避難か

準備しておくものは、避難所に避難するのか自宅で避難するかで変わります。最近は地区によっては、マンション住民は避難所に来ないように言っている行政もあります。避難所のキャパシティに対して避難する人が大幅に上回る可能性があるので、避難所に入る人を制限しなくてはならないのです。戸建てに比べてマンションは震災などで壊れにくいので、家を失った人を優先的に避難所に入れるためにマンション住民は後回しにするのです。これは地区によって違うので、事前に確認しておきましょう。

※東日本大震災の避難所

自宅で避難する場合の避難グッズは、自宅にストックできるものになります。一方で避難所に行く場合は、持って行けるものになります。自宅なら布団があるので寝るのに困りませんが、避難所には寝具があるかわかりません。しかし布団を持ち歩けるはずもないので、代わりのものを検討する必要があります。このように避難所に避難するか自宅で避難するかで、用意するものが変わってきます。まずは自分がどこに避難するのかを考えておきましょう。

避難所に避難する場合の備え

自宅から避難所まで歩いていかなくてはいけません。そのため移動に必要なものと、避難所での生活が始まってから必要なものに分けて考えることになります。持って行けるものは限られるので、最低限のものを効率よく持って行く必要があります。財布や保険証などの貴重品の他に、あると便利だったと教えてもらったものを以下に紹介していきます。

バッグ

避難グッズは両手が使えるように、バックパックが好ましいでしょう。震災で瓦礫が道路にあふれている際に、手提げ鞄は危険です。また水害の際、地震の避難でも雨が降っていることも考えて、防水性があるバックパックが良いと思います。容量は家族の人数や持っていくものによって決まりますが、ある程度は余裕のある容量のものが良いでしょう。

避難所に着いてからは、貴重品は絶えず身に付けるようにしましょう。男性は財布をポケットに入れることが多いですが、女性はハンドバッグに財布を入れる習慣の人が多いと思います。手提げバッグは置き忘れやひったくりなどの危険があると同時に、片手が塞がるという弱点があります。ボディバッグやウエストポーチなどを使って、財布や保険証などの貴重品を体から離さないようにしましょう。

ブーツ

2020年は台風で避難する際に、長靴での移動を避けるように言われるようになりました。水嵩が増して長靴の中に水が入ると歩きにくくなり、流されたり転倒する危険が高まるからです。そのためスリッポン式の長靴は避けて、編み上げ式のブーツなどが良いと思われます。

※LLビーンの編み上げブーツ 防水性が高いブーツです。

また編み上げ式のブーツだと、地震の際に瓦礫を通り抜ける時も足首を瓦礫から守ってくれます。防水性のある編み上げブーツを靴箱に入れておくと、もしもの際に役に立つでしょう。

手袋

手袋の重要性について、かなり強く語っていました。家が倒壊して家族を瓦礫から助け出し、避難所まで歩く際にも瓦礫を避けて通ったそうですが、気がつくと両手の平が血塗れになっていたそうです。無我夢中で瓦礫をよけたので、ガラスや木のささくれで切っていたのです。瓦礫を避けなければならない場面が出てきますが、感染症の危険性もあるので手袋は必需品だそうです。

手袋は軍手よりも手のひらの面がゴムになっている作業用手袋の方が、ガラスなどでの怪我が少なくなります。ホームセンターなどで売っている作業用手袋で十分なので、家族全員分は揃えておきたいところです。耐熱性があるかないかは事前に確認しておきましょう。耐熱性がない手袋で焼けた瓦礫を触ると大火傷をします。瓦礫を触るときは、手袋をしていても注意が必要です。

懐中電灯

地震で周囲が全停電になると、夜に被災した場合は外が真っ暗で全く動けなくなります。そのため懐中電灯がなければ、朝になるまで避難所まで行けないということも考えられます。また停電の最中では、避難所も真っ暗になるのでトイレに行くのも難儀だったそうです。最近は小型で高性能の懐中電灯も多いので、用意しておいた方が良いでしょう。

一般的な懐中電灯は乾電池を使いますが、アルカリ電池の保存期間は5年です。懐中電灯と一緒に保存している電池は5年ごとに買い替えましょう。またアルカリ電池より高価になりますが、カメラ用の電池CR-123Aを使う懐中電灯も多くあります。CR-123Aは保存期間が10年で、長期保存にはこちらの方が向いています。

また避難所が停電して夜に真っ暗になる場合は、ランタン型の懐中電灯があると便利です。懐中電灯と違って片手が塞がることがないので、置いておくだけで周囲を照らすことができます。複数の懐中電灯を持っていく時は、なるべく電池のサイズを揃えた方が便利になります。

下着

避難所生活が長引くと、下着が足りなくて困ったそうです。断水している間は洗濯できず、給水者がやってくるようになっても洗濯にジャブジャブ水を使うわけにはいかず、下着は何枚あっても良かったと言っていました。洗濯できるようになっても、今度は干す場所に困ります。そのため避難用の下着は速乾性が重要で、綿より化繊のものの方が乾きが早いので良かったそうです。また女性の場合は、防犯性を考えた下着を持っていく必要があるそうです。あまり女性らしい下着ではなく、スポーツタイプのショーツや女性用のボクサーパンツなどの方が好ましいそうです。

東日本大震災では避難所で性暴力の被害に遭ったという報告が少なからず上がっていました。2020年3月にはNHKが「埋もれた声 25年の真実~災害時の性暴力~」と題して、阪神淡路大震災の時に避難所で起こった性暴力に関するドキュメンタリーを放送しました。こういった被害に遭わないためにも、女性の下着には注意を払いたいところです。

寒さ対策

冬の場合、避難所の毛布を借りることになりますが、数が足りないこともあります。かと言って毛布を自宅から持って行けないこともあるので、エマージェンシーシート(サバイバルシート)はコンパクトに持ち運びやすくて寒さをしのげます。体が発する熱を逃さず包み込むため、薄手なのに毛布より暖かさを感じます。100円ショップの物は破れやすく何度も使えないようなので、使い捨てと割り切った方が良いそうです。

また服は薄着に暖かいコートなどを羽織るのではなく、温度調整ができるように薄手の服を重ね着しておく方が良いでしょう。登山をする人はレイヤリングと呼ばれる重ね着によって体温調整を行います。厳しい環境下では重ね着が効果的なので、避難所に向かう前に重ね着をしていくようにしましょう。そして先ほどの下着の件にもつながりますが、女性は防寒性と性暴力対策の両方から、スカートではなくズボンを着用する方が良いと言われています。

アルコール消毒液・除菌シート

避難所で水が使えれば良いのですが、水道管が破断して使えない場合もあります。トイレで用を足しても手が洗えないことも考えられるので、その際にアルコール消毒液や除菌シートなどがあると便利です。お風呂に入れない期間も長いので除菌シートで全身を拭く人が多くいたそうです。テイッシュやハンカチと一緒に、除菌シートも用意しておきましょう。

被災したという精神的ショック、避難所生活という慣れない環境、食事の変化も含めて生活サイクルが変わるので、普段は健康な人でも体調を崩すことが多いそうです。普段は痛み止めや風邪薬のお世話にならない人でも、それらの薬を準備しておいた方が良いでしょう。また生活環境が大きく変化するため、お腹を壊す人は多かったそうです。トイレに行きたくても、トイレの数が限られているためすぐには行けないこともあります。腹痛の薬は需要が高かったそうなので、こちらも準備しておく方が良いでしょう。

怪我をした際には、止血にワセリンが効果的です。出血した部分にワセリンを塗り、サランラップで巻くと傷の治りも早くなります。ワセリンはリップクリームの代わりや乾燥した肌の保護など、様々な用途に使えるので一つ避難バッグに入れておくと便利です。高価なものでもないので、常備しておくと良いでしょう。

万能ナイフ

よくお勧めの防災グッズに様々な機能がついている万能ナイフが紹介していることがありますが、これは微妙だそうです。救援物資の中には缶切りやハサミがないと開けられない物が混じることもあったそうで、他の被災者から万能ナイフをお借りすることもあったそうです。ですからあると便利なのは間違いないようです。

しかし慣れない環境で生活をしている時に、慣れない道具を使うのは怪我の元になりやすく、誰にでもお勧めできる物ではないとも言っていました。避難用バッグに万能ナイフを入れておくなら、同じものをもう一つ買って普段から使うようにしておくのがお勧めだそうです。そこまでしたくないという方は、避難用バッグに小さなハサミを入れておくと良いでしょう。

その他

避難所で意外と人気があったのは、爪切りだそうです。避難所生活が長くなると爪が伸びてきて、多くの人が借りにきたそうです。またトゲ抜きも貸して欲しいと言う人が多く、人気が高かったそうです。避難所の床が冷たいのでスリッパが重宝したり、いびきがうるさいので耳栓を持っている人が羨ましかったり、耳かきを求める人がいるなど、日常生活のちょっとしたことで不便と感じることが多かったと言っていました。

また現在はスマホが必須ですが、体育館や公民館などではコンセントの数が限られているため、延長コードがあると便利だと聞きます。しかしあっという間にタコ足配線になって危険が増しそうですから、ソーラー充電器があると良いでしょう。ただしソーラー充電器で充電できるのはわずかなので、あくまでも補助的な道具だと考えてください。手回し充電器なども売られていますが、長時間回し続けてもわずかな充電しかできません。こういったものは、平時に試しておきましょう。

まとめ

避難所に避難する場合は、避難所にいくまでの移動に必要なものと避難所で必要なものに分けて考える必要があります。特に地震の場合は被災してから移動することになるので、移動中の怪我に十分気をつけなくてはいけません。限られた荷物しか持っていけないので、定期的に中身を見直していくようにしましょう。ちなみに消防庁も防災グッズに関してwebサイトに載せているので、そちらも確認しておきましょう。

総務省消防庁「地震などの災害に備えて

次回は自宅避難の場合の防災グッズを考えます。

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防災グッズを阪神大震災の被災者に教わる /自宅避難編

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