「マンションは管理を買え」が管理の破綻を招く

いつ頃から言われ出したのか判りませんが、「マンションは管理を買え」という言葉が使われ出して随分と経った気がします。管理はマンションに住むうえで重要な項目の1つです。しかしこの「マンションは管理を買え」という言葉が一人歩きしてしまい、マンションの管理を破綻を招いているような気がします。今回は「マンションは管理を買え」なんて言っていると、そのうちマンションの管理が破綻するかもしれないという話です。

「マンションは管理を買え」の意味

マンションには戸建てとは違い、共用部と呼ばれる住民全員の持ち物となるエリアがあります。そこにはエレベーターや給水ポンプ、自動ドアなどの機器があり、これらをメンテナンスしたり清掃したりする必要があります。共用部分を管理することはマンションの資産性を保つために重要はことですが、現実には管理が行き届いていないマンションも多くあります。集合郵便受けの前にはチラシが散乱し、敷地内にゴミが落ち、自転車置き場がグチャグチャになっているマンションなどは、あちこちで見かけると思います。

また住人は管理するための管理費や修繕積立金を毎月払っていますが、それらの滞納があったり足りなくて借金をしているマンションも多く存在します。適正に管理されていないマンションでは、将来的にかかってくるお金が全く違ってきますし、最悪の場合は廃墟になってしまうケースもあります。そこで中古マンションを購入する際には、物件だけでなく管理状況もよく見て買わないといけないという戒めとして「マンションは管理を買え」という言葉が用いられるようになりました。

しかしこの言葉は、いつしか「良い管理会社を選ぶ」という意味で使われることも多くなりました。マンションを買う際には、良い管理会社がついているマンションを買えというわけです。もちろん管理会社選びは重要ですし、これが間違っているわけではありません。しかしマンション管理=管理会社という認識ではマズいと思うのです。

そもそも管理は買うものではない

マンションの管理は誰が行うのでしょうか。それは区分所有者、つまりマンションを買った人です。そのため区分所有者で管理組合が結成され、その中に理事会などの組織があります。多くの場合、マンションの管理者は理事長になっています。マンションを管理するのは管理組合であり、管理組合を構成する区分所有者(マンションを買った人)なのです。しかしマンション管理の業務は多岐に渡り、専門的なことも多く業務量も多いので区分所有者だけで管理するのは難しい面があります。

そこでほとんどの管理組合は、マンション管理の一部を管理会社にお金を払って委託しています。そのお金が管理費と呼ばれるもので、区分所有者が毎月払っているのです。マンションの管理はマンションを買った区分所有者が行うもので、管理会社は委託されているに過ぎません。つまりマンションの管理を買うというのは、管理会社を選ぶということと同じ意味ではないのです。

マンションの管理は参加するもの

マンションの管理は管理会社がするのではなく、住民が主体だと考えると「管理を買う」のではなく、自らが管理に参加するものです。マンションを買ったら管理会社に管理はお任せ、管理費を払っているのだから管理会社にやってもらえばいい。そんな風に管理会社に任せっきりだと、気がつくと住んでいるマンションが限界マンションと言われる管理ができないマンションになっているかもしれません。私が相談を受けた物件の中には、管理会社に任せっきりだったため管理不全に陥ったマンションもありました。

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現在、採算が合わなくなり管理会社が管理から手を引くケースが増えています。人件費が高くなる一方で、マンション管理の仕事内容が増えているため、管理費の値上げを要求するケースも増えています。空き家が増えても共用部の面積は変わらないので、管理会社の仕事量は変わりません。しかし空き家が増えることで、管理費が徴収できないケースは出てきます。そうなると管理会社が手を引き、引き受ける管理会社がいないという事態に陥ったマンションもあります。

管理会社にお任せというだけでなく、理事会の役員にお任せと考えている人も多いと思います。しかしマンションは住人全員の共有財産です。理事会の役員にお任せにすると、そこにも落とし穴があるかもしれません。以前書いた新潟県のリゾートマンションのように、住民全員が大きな損失を被ることになるかもしれません。

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他人任せにせずに自分の資産は自分で守る

住人全員が自らの財産を管理するという意識があるマンションは、管理が行き届いて資産性が保たれたマンションになります。管理を買うというのは中古マンションの購入時の考え方として間違ってはいないと思いますが、住んでからは管理は買う物ではなく参加するものになります。マンションは買って終わりではなく、買ってからが始まりです。

大勢の方が積極的に管理組合の活動に参加していけば、限界マンションや廃墟と呼ばれるようなマンションになる可能性を減らしていけます。自らのマンションを守るのは自分たちだということを、忘れないでください。

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