マンションの11年目の定期点検は有効か? /マンションの保証期間を考える

マンションの11年目には、管理会社の定期点検が行われるケースが多くあります。10年を過ぎた頃に管理会社が提案してきて、割と大がかりなイベントのように行われるケースも少なくありません。屋上の防水保証が10年で終わり、漏水の危険性がないかを確認すると同時に、他の部位も劣化がないか確認するのです。しかし11年目に点検を行うのは、もったいないと思います。

マンションの保証期間

マンションにはアフターサービス期間が設けられていて、項目によって2年、5年、10年になっています。10年間の保証がつくのは構造耐力上主要な部分の亀裂や破損、屋内への雨水の侵入です。これは住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に定められていて、契約書に保証期間が5年と書いてあっても無効になります。つまり法律で10年の構造体力上主要な部分と雨漏れに関する保証期間が定められ、それ以外の項目に関してはマンション デベロッパー が独自に2年、5年などの保証期間を定めているのです。ちなみにほとんどの項目は2年になっていて、そのため新築マンションの多くは2年目に定期補修があります。

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9年目にはない定期点検

なぜ保証期間が切れる9年目に定期点検がなく、11年目に点検がるのでしょう?保証が切れた後に点検をするよりも切れる前に点検をやっておく方が、住民のみなさんにはメリットがあります。本来なら10年の保証期間内に申請すれば、無料で工事してもらえるはずだった内容が、11年目の定期点検で見つかったら管理組合の費用負担で工事を行うことになるからです。あえて保証が切れてから点検を行うのは、マンション住民のためになるでしょうか?

9年目ではなく11年目に定期点検を行うのは、保証期間が切れる前に点検を行えば無償で修理しなければならない項目が増えてしまうからです。これは完全に売主の都合であってマンション住民の利益にはなりません。そして11年目の定期点検は、長期修繕計画で12年目に予定されている大規模修繕の準備になっているのです。長期修繕計画に書いてあるからと言って12年目に必ず大規模修繕を行う必要はないのですが、管理会社にとって大きな収益を得るチャンスなので総会で決議を得やすいように11年目に点検を行うのです。

大規模修繕工事にも影響を与える

本来なら無償で修理できたはずの部分を11年目に持ち越すと、13年目ぐらいに行う大規模修繕工事の時に行うことになります。大きな費用負担が出る大規模修繕工事において、さらに費用がかさむことになりかねません。無償で修理できるなら、その時に修理してもらうべきです。そしてこれを売主が嫌うので9年目の点検は含まれておらず、その代わりに大規模修繕工事を行いたい管理会社の11年目点検が行われているのです。

大規模修繕工事でほとんどの積立金を使い切ってしまうマンションが多い中、このような負担はマンション会計に大きな影響を与えかねません。特に大きな 瑕疵 が隠れていた場合は、本来は払わなくてよい高額な出費が出ることになってしまいます。それが管理組合の会計に悪影響を与え、財政が徐々に悪化していく一因になることもあります。

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保証期間が切れる前に自主点検を

9年目、10年目の保証期間が切れる前に、管理組合の皆様で自主的に点検をお勧めします。各住戸、共用部などに雨漏れがないか、構造体にひび割れや破損がないかを確認し、保証期間が切れる前に売主に申請しましょう。自主的な点検が難しい場合、どこを点検して良いかわからない場合はご相談下さい。プロの目からアドバイスさせていただきます。

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