1回目の大規模修繕工事 /いくら残ったかでマンションの危険度がわかる

マンションの大規模修繕工事は、だいたい12年から15年くらいの周期で行われることが多いようです。ほとんどのマンションで第1回目の大規模修繕工事は順調に終わるのですが、大事なのは順調に終わったかではありません。重要なのは第1回目の大規模修繕工事が終わった後で、修繕積立金がいくら残っているかということです。いくら残ったかでマンションの危険度がわかるのです。

なぜ12年に1回のペースなのか

マンションの大規模修繕は、12年に1回のペースを基準に行われているところがほとんどです。10年を過ぎた頃から大規模修繕の話が持ち上がり、12年から15年くらいで行うのが当然のようになっています。しかしこのような短いペースで大規模修繕工事を行うのは分譲マンションくらいで、賃貸マンションでは20年や25年に1回といったペースで行われています。

また同じく鉄筋コンクリートの建物で、学校の校舎や役所の建物なども同様で、20年以上も大きな工事を行わない建物は大量にあります。分譲マンションだけが他の建物よりも脆く、短いスパンで修繕工事を行わなければならないわけではありません。むしろ賃貸マンションよりも分譲マンションの方が施工がしっかりしていることがほとんどです。

※タイルが剥落したマンション

この12年の根拠は国土交通省の「長期修繕計画策定ガイドライン」に、書かれている大規模修繕工事の周期が12年で書かれているからです。これはあくまでも一例として書いてあるのですが、まるで12年に1度は行わななくてはならないかのような思い込みを生んでしまいました。このガイドラインのどこを読んでも、大規模修繕を12年に1回行わなくてはならないなどと書いてはいないのです。

このガイドラインは90年代には10年で書かれていたので、90年代の大規模修繕工事は10年周期行うマンションが多くありました。ほとんど根拠がない大規模修繕の12年周期ですが、管理会社が12年周期で大規模修繕を進めることが多く、12年程度で行うのが当たり前のようになっています。

大規模修繕工事は大きな収益源

物件の規模にもよりますが、大規模修繕工事の費用は1億円を超えることも多く、大きなお金が動く仕事です。1億円の工事なら10%の利益でも1000万円になりますから、管理会社にとって大きな収益を得られるチャンスです。ですから他社に取られたくないですし、短いスパンで行った方が利益になります。

ましてや現在は多くの管理組合が管理費を抑えるように訴えていて、管理会社としては値上げをしたい物件から値下げの要求が出るような状況です。大規模修繕工事を受注して、利益を出したいと考えるのは決しておかしなことではないのです。

本当にお金がかかるのは築30年を過ぎてから

ほとんどのマンションの長期修繕計画は、築30年までしか作られていません。これも国土交通省の「長期修繕計画策定ガイドライン」に30年と書いてあるからですが、30年分しか書いてはいけないという意味ではありません。短すぎる計画では意味がないので、せめて30年は書くようにという意味です。

しかし本当に修繕費がかかるのは、築30年をすぎてからになります。エレベーターの交換、給排水管の交換、電気の幹線の交換など高額な修理費用がかかるのは、35年、40年を過ぎてからになります。そのため30年の長期修繕計画では、そのマンションにかかかる修繕費用の全体像が見えないのです。

もし12年周期で大規模修繕工事を行うとしたら、2回目の築24年目まではさほど費用がかかりませんが、3回目の36年目、4回目の48年目は1回目や2回目より多額の修繕費用がかかることになります。

1回目の大規模修繕後の残高

自動車の車検でもそうですが、まだ車が新しい1回目の費用は安く済みます。しかし10年以上経った車の車検費用は高額になっていきます。マンションも同様で、1回目の大規模修繕は安く、4回目の大規模修繕は高額になってしまいます。

そこで1回目の大規模修繕工事が終わり、修繕積立金の残高を見てみましょう。ほとんど残高が残っていないマンションが多くあります。12年かけて修繕積立金を溜めて1回目の大規模修繕工事でほとんど使ってしまうということは、早い段階で修繕積立金を値上げしないと、3回目や4回目の大規模修繕工事で足りなくなってしまいます。

1回目の大規模修繕工事は最も安く済むはずですから、かなりの額が残っていなくてはいけません。積立額が1億円なのに9500万円使ってしまえば、将来的に足りなくなるのは間違いありません。修繕積立金の値上げを検討する必要があります。もちろん値上げはずっと先に伸ばすことも可能ですが、後になればなるほど値上げ幅を大きくしないと足りなくなってしまいます。その意味で、値上げは早ければ早い方が良いのです。

まとめ

1回目の大規模修繕後の残高がほとんど残っていないマンションは、早めに長期修繕計画の見直しと修繕積立金の値上げを検討した方が良いでしょう。見直しの相談を受け付けていますので、気になる方は以下のメールフォームからご連絡ください。

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