Dr.TaCのマンション診察室 /懐の悪寒と工事費失調症

この診察室では、マンションで起こっているさまざまな問題を診察しています。今回の患者さんは、工務店の方からです。マンションの修繕工事をしたのに、工事費を払ってもらえなくて困っているそうです。一体、何が起こっているのでしょうか。さっそく、診察してみましょう。

症状

マンションを販売した不動産 デベロッパー から、アフターサービスの修繕工事を依頼されました。工事を行ったところ追加の費用が発生したにも関わらず、追加分を払ってもらえません。泣き寝入りするしかないのでしょうか。

問診票

年齢:築7年
性別:分譲マンション
身長・体重:12階建 86戸
本日はどうされましたか?:工事費用を払ってもらえず困っています。
症状はいつ頃からですか?:先々月の初めに工事を行いました。
過去に同じような症状が出たことはありますか:なし
治療中の他の病気はありますか:なし。

診察

事の経緯を話してください。

私どもの工務店は主にビルの修繕工事をしていたのですが、たまたまウチの社長がA不動産さんのアフターサービス部長さんと知り合いになり、修繕工事を依頼されるようになりました。

A不動産といえば大手ですね。さらに大きな仕事を受注するために、かなり頑張ったんじゃないですか?

そりゃあ、もう。なるべくお安くできるように、かなり頑張った価格を出しています。

今回もアフターサービスの修繕だったんですね。

はい、外階段の照明が点滅するということで、私どもに工事の依頼がありました。

どうしてA不動産は、マンションを施工した会社に依頼しなかったのでしょうか。

それはわかりません。きっと工事金額が折り合わなかったんでしょうね。

どうして追加費用が発生したんでしょうか。

初めはコンクリート壁に埋め込んだ照明器具を交換するだけの工事だったんです。ところが照明器具を外して電線から電流をチェックすると、どうも抵抗になっているものがありそうだったんです。そこでコンクリートの壁をあちこち叩いてみると、壁の中に電気ボックスが埋め殺されているようなんです。

間違った場所にボックスを打ち込んでしまい、コンクリートを打設した後に付け替えたんですね。そのボックスでの結線の仕方が悪くて、照明が点滅していたわけですか。

その通りです。マンションの理事長さんも立ち会っていましたし、別に隠すこともないのでA不動産のアフター担当者に、そのまま事実を説明しました。そうすると不要なボックスをハツリ工事で取り出して、補修してくれって言うんです。

ずいぶんと工事内容が変わりましたね。対応できたんですか?

半日工事が1日になってしまいました。職人はなんとか説得してやってもらいましたし、ハツリ工事のための発電機と電動ピックを急遽レンタルしました。

そのレンタル代と半日分の職人の手間賃が追加になったわけですね。

そうなです。その他にモルタルなどの消耗品と駐車場代なんかの諸々の費用がかかったんで、実費で5万円ちょっとを追加でお願いしたんです。ところが払えないの一点張りなんです。あの大手のA不動産が5万円くらい払えないなんて、私は担当者に意地悪されてるんじゃないかと思ってるんです。

大手企業の面倒さ

これは意地悪ではなく、大手企業の面倒さによって起こったものだと思います。クレームが発生するとアフターサービス部門は調査をし、工事が必要になると見積書を取得します。そして稟議書を書いて、会社から工事の許可を取り付けるのです。この件のアフターサービス担当者が、仮に20万円の見積書を添付して稟議書を作っていたとします。担当者は20万円払えば解決できますと言って、承認をもらったわけです。ところが工事をすると25万円が必要になってしまいました。この場合、担当者はもう一度稟議書を書く必要があります。しかし担当者が上司に追加が出た理由をきちんと説明できないか、上司がその上の上司に説明できないからで、追加を払えないのでしょう。これにはデベロッパー内で、アフターサービス部門が嫌われ者になっていることが関係している場合があります。

関連記事
デベロッパーの本気度はアフターサービスを見ればわかる

平たく言うとA不動産の社内の問題で、担当者がきちんと説明できなから皺寄せが工務店に来ているのです。工務店からするとA不動産の社内問題は全く関係ないので、払ってもらうべきお金ということになります。

診察の続き

大した金額ではないので、やはり泣き寝入りしかないのでしょうかね。

それも1つの選択です。今後も付き合っていくなら、今回は金額が安いので折れておくというのは大人の判断だと思います。しかし今後も同じようなことが起こるでしょう。その度に泣き寝入りすることになります。たまに大きな仕事をもらい、利益が大きく出るなら、それでも良いと思います。

弊社が、それほど大きな工事を任されるとは思えません。会社が小さいので、あまり大きな工事を請け負えないですし、今回も金額が安いから選ばれているわけですから。

もう1つは担当者ではなく、その上司に事情を話すことです。今後の付き合い方を左右するので、最初にきちんと話しておくことは大事です。なるべく安い価格で頑張るが、かかった費用はいただくと伝えるのです。特に今回はA不動産の担当者の指示で追加工事を行なったので、それで費用がもらえないなら次回からは現場で臨機応変な対応が難しくなると伝えるのも良いでしょう。

それで関係が険悪になっても困るんです。

どちらを取るかは、会社で相談なさってはいかがでしょうか。社長さんの意向もあるでしょう。今後に関わることなので、こういった場合にはどのように対応するか社内で意思を統一しておく方が良いと思います。

まとめ

正直言って、いまだにこんなやり方をしているデベロッパーがいるのかと驚きました。昔から業者を儲けさせた担当者は、デベロッパーの社内評価が下がるというのがありました。しかしコンプライアンスが厳しくなった昨今で、仕事をさせておいてお金を払わないという態度を大手企業が取るのは驚きです。まだまだ不動産・建設業界にはこの手の悪習が残っているのでしょう。中小の工務店は大手に弱いですが、かかった費用ぐらいは請求できるようになって欲しいと思いました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です