なんでもかんでもゼネコンが悪いのか?/マンション施工不良報道を考える

2021年4月19日、準大手 ゼネコン の西松建設が都内で建設中のマンションに施工不備があったことを認める発表をしました。さらにそのために特別損失を90億円も計上すると発表しています。この発表後、どのマンションかなどの憶測が飛び交いましたが、今回はマンションの施工不良報道に関して考えてみたいと思います。私はこの手の報道を見るたびに、なんでもかんでもゼネコンが悪いのか?と思ってしまうのです。

西松建設の発表内容

  • 都内の物件で内装に関わる施工不備が発生した。
  • 施工不備の原因は不明。
  • 補修工事の準備を進めている最中。
  • 施工不備に伴う特別損失を90億円計上する。

これ以外のことはわかりません。どの物件で、どのような施工不良が起こったのかは発表されていないからです。そのためネットでは憶測が広がったのですが、この発表から5日ほど前に写真週刊誌のフライデーが報じた内容と関係しているのではないかと言われています。

フライデーの報道内容

問題が起こったのは都内のタワーマンションで、戸数は310戸、価格は9780万~2億6000万円と書かれています。ここに書かれているマンションの問題点は2つあります。1つ目は、地下2階の機械式駐車場の壁が二重壁でなく、湿気に対する構造上の対策が取られていないことです。そのため駐車場内に湿気が溜まり、機械式駐車場の誤作動を誘発しているとしています。

フライデーの記事へのリンク

2つ目は各住戸間に設置されるべき耐火構造壁の欠落していると書かれています。壁がないということはないので、恐らく壁に耐火性能がなかったから規定より低かったということでしょう。タワーマンションの戸境壁はコンクリートではなく乾式二重壁なので、耐火性能が求められるのです。

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これが事実なら、全住戸の戸境壁を入れ替える必要が出てきます。戸境壁は最初に施工するので、後から施工した床や天井を剥がす必要がありますし、工事の間に住民が住む場所も確保しなくてはなりません。地下駐車場にしても、機械式駐車場を撤去してから工事しなくてはならないかもしれません。工事の間に、中の車は外部に駐車場を借りて駐車しなくてはならないので、外部に駐車場を借りる必要があります。またこれほど大規模で売買契約に抵触する施工不良なら、買取も提案するでしょう。こうなってくると、必要な費用が数十億円になると考えられます。

どのマンションの施工不良なのか?

少し建設業に詳しい人なら、この話が変だと感じるでしょう。駐車場を二重壁にしなかったのは設計者がそう指示したからですし、乾式間仕切り壁も何を使うかは設計者が決めることです。もし西松建設が発表した施工不良がフライデーに掲載されたマンションなら、施工者である西松建設が責任を負うのはお門違いに思えます。しかし西松建設の設計施工だった場合、西松建設は設計者でもあるので、責任を負う立場になります。ですからこのマンションは、西松建設の設計施工なのでしょう。

都内のタワーマンションで310戸、最高値が2億6000万円、西松建設の設計施工となると、不動産関係者ならどのマンションかすぐに察しがつきます。ここにマンション名は書きませんが、報道でマンション名がでなくても、こうやって簡単に推察されますし、あっという間に拡散するのが最近のネット社会の特徴です。既にネットのあちこちで、このマンションの名前が挙げられていて、噂話レベルのことがまことしやかに書かれています。

西松建設とは

創業は1874年(明治7年)で、その後社名を西松工業所、西松組、西松建設と変えています。土木工事を得意とし、トンネル事業などで多くの実績を積み上げてきました。2020年は売上高が3,772億円で、ゼネコンとしては11位に位置している準大手です。

また2008年には、通称西松建設事件と呼ばれる政治汚職事件が発覚しました。西松建設がダミー会社を通じて政界に献金していたことが発覚した事件で、小沢一郎の資金管理団体「陸山会」を中心に民主党、自民党、国民新党などに幅広く政治資金がばら撒かれていました。この事件の責任をとって、小沢一郎は民主党の代表を辞任し、西松建設も経営陣が辞任しています。

こうしたゴタゴタがあるものの、西松建設は歴史あるゼネコンとして一定の評価を得ていて、現在も多くの建物や土木施設の建設を行っています。

請負は「請けたら負け」と読む

今回の件では西松建設が非を認めているので、西松建設に全面的な責任があると言えます。しかし長らくマンション業界にいた身としては、本当に西松建設だけの責任なのだろうか?とも思います。建設業界では請負を「請けたら負け」と読んだりするのですが、請負契約を結ぶと何でもかんでも責任を負わされることがあるのです。

マンション建設では、工事が始まっても仕様が決まっていないことがよくあります。またギリギリまで事業主が間取りを変更したり、仕様を変更するのもよくあることです。工事をする側としてはさっさと決めて欲しいのですが、そんなことはお構いなしに遅々として決定しないなんてこともあります。

材料の発注期限ギリギリになって仕様が決まると、時間がないのですぐに発注します。しかしその材料が不適切なもので、後から問題になった時には責任は施工者が負うことになります。施工者からすれば、さっさと決めてくれれば検証もできたのですが、期限ギリギリや期限を過ぎてから決められ、しかも事業主の決定が遅れたからと言って工期の延長が認められることはありません。失敗した時の責任も、工期の遅れに関しても請け負った方が全面的に責任を取れと言われるのです。しかしこれが「請けたら負け」と言われる所以なのです。

私はゼネコンにもデベロッパーにも勤務していましたが、このような不条理は何度も目にしてきました。そのためこのような報道があった場合、本当に全責任がゼネコンにあるのかわからないのです。もしかしたら何割かは、事業主に責任があるのかもしれないと思ってしまいます。それは経験上、何度も見てきたことなのです。

まとめ

今回は西松建設の施工不良問題について書いてみました。公表された内容では西松建設に全て責任がありますが、実際に何が起こったのかは内部の人ではないとわかりません。ゼネコンだけが悪いわけではないというケースも多く見てきたので、私はこの手のニュースを懐疑的に見てしまいます。今回の騒動で、自分が住んでいるマンションも西松建設が施工したけど大丈夫か?と言う声が私のところにも届いていますが、西松建設ほどの大企業が会社ぐるみで施工不良を行うことはほとんどありません。ニュースに慌てることはありませんが、どうしても不安ならば売主に問い合わせてみるのも良いかもしれません。

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