マンション外装タイルの歴史と剥落事故 /事故事例の紹介と対策

現在ではマンションの外壁は、タイル張りが主流になっています。しかしマンションの分譲が始まった頃は吹付塗装が主流で、外壁にタイルが使われる物件は多くありませんでした。しかしある時期からタイルが使われるようになり、昨今は剥落事故の多発によってタイルを使うことを控えるデベロッパーも出てきました。今回はマンション外装タイルの歴史と剥落事故について書いてみたいと思います。

外装材の役目

外装材はタイルであれ吹付塗装であれ、コンクリーを守る役目を果たしています。鉄筋コンクリートは酸化(サビ)に弱い鉄筋をアルカリ性のコンクリートで包み込むことで、鉄筋をサビから守っています。しかし時間が経つと空気中の二酸化炭素によって化学反応が起こり、コンクリートが中性化していきます。コンクリートのアルカリ性が中性化していくと、やがて内部の鉄筋がサビてしまうことになります。そこでコンクリートの表面をタイルや吹付塗装で守り、コンクリートを保護しているのです。外装材がない打ちっ放しコンクリートの建物は、数年に1回のペースで撥水材を塗布することで中性化を防いでいます。このように鉄筋コンクリートは、サビやすい鉄筋をコンクリートで保護する合理的な構造です。そしてタイルなどの外装材は、コンクリートの保護を強化する役目をになっているのです。

※コンクリート打ちっ放しの壁

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タイルは高級マンションのシンボル

当初のマンションの外装のほとんどは吹付塗装でした。関東大震災を教訓に建設された同潤会アパートも、外装は吹付塗装です。タイルは吹付塗装に比べて高価だったので、一部の高級物件に使われているだけでした。しかし1965年に表参道に建設された総タイル張りのマンション、コープオリンピアが話題になったことで、外装タイルは高級マンションのシンボルになりました。

※コープオリンピア

分譲価格が1億円を突破した、日本初の億ションとしてコープオリンピアは当時高い注目を集めます。これに刺激を受けた不動産業者の大京観光が全ての物件をタイル張りにして分譲し、これも大ヒットしました。大京観光はライオンズマンションの名称で全国に総タイル張りのマンションを展開して、外壁に多くのタイルを使えば使うほど高級といった風潮になっていきました。これ以降、多くのマンションの外装がタイル張りになっていきます。

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タイル剥落事故の発生

①北九州の公団住宅

バブル景気に沸く1989年11月21日、北九州市小倉北区昭和町の住宅都市整備公団昭和町団地(10階建て)で、最上階付近のタイルが縦5m、横8.5mにわたって落下しました。タイル片は路上で割れた破片でも、大きいものは約20cm四方、重さ4.5kgありました。タイル片は通行人とタクシーを直撃し、フロントガラスが割れ運転手は足を負傷しました。男女3人が死傷する大事故で、この事故を契機にタイル張りの安全性が問われるようになります。

②東京の雑居ビル

2005年年6月14日、東京都荒川区新川の雑居ビル「ニューリバービル」(地上8階、地下1階建て)の5階から6階部分の斜壁部分が崩れ落ちました。高さ約7m、幅約5m、厚さ約5cmにわたり、重さ計900㎏が剥がれ落ちています。近くを歩いていた女性に破片が直撃し、頭を打った女性は重傷でした。

③大坂の雑居ビル

2016年7月7日、大阪市浪速区の9階建てのビル「SAY BUILDING」で、6階付近の外壁からタイルが縦約1メートル、横約2メートルにわたり落下しました。タイルは1階の飲食店の庇を突き破って落下し、一部が信号待ちをしていた高校教諭の女性の頭に当たりました。女性は病院に運ばれましたが、幸い軽傷だったようです。

④三鷹市のビル

2016年8月22日の午後3時ごろ、東京都三鷹市の三鷹駅北口にあるビルの外壁からタイルが、台風の強風で剥がれ落ちました。落下から約4時間前にも、縦幅約2m・横幅3mの壁が剥がれ落ち、撤去作業が行われたばかりでした。壁が剥がれ落ちた際、ビル付近を歩いていた男性に破片が直撃してケガをしました。

これ以外にもタイルの剥落事故は発生し、原因は施工不良なのか経年劣化なのかがそのたび議論されるようになります。

タイル剥落の原因と対策

タイル剥落の原因は多岐にわたります。下地 モルタル の水分が急激に抜けたドライアウトや、コンクリートの表面がツルツルになっていたために起こる接着力不足、下地のモルタルが厚すぎるために起こる劣化などさまざまです。それぞれの原因については、以下の記事に詳細を書いていますので、そちらをご覧ください。

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※飯田橋駅のタイル剥落

タイルの剥落を防止するには、剥落する前に発見しなくてはなりません。タイルが剥落する前にはタイルが浮いてきているので、打診検査を行うことが最も効果的だと考えられています。しかし建物全体の打診検査をするには、足場を建てるしかないのでかなりの費用がかかります。そこで手始めに歩行できる廊下や階段部分の打診検査を行い、タイルがどの程度浮いているかを見てみましょう。ここで多くのタイルが浮いているようなら、外部のタイルも浮いている可能性が高くなります。

外壁タイルが剥落して誰かを傷つけてしまった場合、管理者が責任を問われます。マンションの場合は管理組合、つまり住んでいる人達の責任が問われるのです。タイルの剥落が施工不良や不法行為で建設会社や売主に責任を求める場合、管理組合が施工に過失があったことを証明しなくてはなりません。これには専門家の力を借りる必要があり、管理組合だけではなかなか難しい作業になります。

しかし、なによりタイルが剥落する前に調査を行って、浮いているタイルがないか、剥落しそうなタイルがないかを確認することが重要です。費用はかかりますが、通行人を怪我させる可能性がある道路に面したタイル面などは、徹底的に調査する必要があります。大規模修繕が近いマンションなどは、タイルの打診調査を合わせて行うのが良いでしょう。

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まとめ

タイルの浮きはそのままにしておくとどんどん拡大し、剥落につながります。剥落する前に、専門家による早めの調査を行うことが重要です。調査会社選びや調査そのもののご相談もお受けしていますので、以下のメールフォームからお気軽にご相談ください。

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