悪役にされがちな乾式間仕切壁 /コンクリート壁とどちらが性能が良い?

タワーマンションは、間仕切り壁が石膏ボードでできている乾式かべなので騒音が多い。こんな話をよく聞きますし、ネットでもよく見かけます。以前、そんなことは全くなくて、タワーマンションの騒音の原因は別にあると書きました。しかし乾式間仕切り壁は何かと悪役にされがちで、性能が悪いと言われがちです。今回は騒音で悪役にされがちな乾式間仕切壁について、考えてみたいと思います。

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乾式間仕切壁とは

ほとんどのマンションでは、界壁 がコンクリートでできています。コンクリートはセメントなどを水で練って作るので湿式と呼ばれます。一方、石膏ボードなどで作る壁は水を使用しないため、乾式と呼ばれます。乾式間仕切壁で最も有名なのは、石膏ボードのメーカーである吉野石膏が作っている軽鉄下地による耐火・遮音間仕切り壁です。吉野石膏は求められる性能ごとにさまざまな乾式壁を発売していて、耐火性や遮音性など公的な性能を要求される項目に関しては検査を行っています。

多くの場合、乾式間仕切り壁は骨組みを軽量鉄骨材で作り、そこに石膏ボードを貼って作ります。内部にグラスウールやロックウールが入る場合もありますし、石膏ボードを二重に張ることもあります。要求される性能によって、さまざまな乾式間仕切壁の仕様が存在します。そして遮音性能は遮音検査が行われ、その性能が確認されています。

※参照 吉野石膏webサイトより「スーパーウォールA・WII

なぜ乾式間仕切壁は悪く言われるのか

乾式間仕切壁だから騒音がするといった風評は、見た目の問題です。分厚いコンクリートに比べて軽量鉄骨と石膏ボードで作った壁は安っぽく見えます。また遮音性は壁の質量が重いほど良くなるという質量則を聞きかじった人にとって、軽量の乾式間仕切壁は遮音性が悪いように感じるようです。しかし実際には全く異なります。乾式間仕切壁は検査で遮音性が確認された方法で、工場で製造されています。そのため遮音性が保たれます。現在のタワーマンションに使われている乾式間仕切壁はD-55のものが使われています。D-55の遮音性能とは、80dBの騒音が壁を隔てると25dBになる遮音性能という意味です。D-55をコンクリート壁で実現するには200mmの厚さの壁が必要になります。200mmのコンクリート壁のマンションは、それほど多くはないでしょう。

また乾式間仕切壁は、急速な進歩を遂げた建材でもあります。築30年などの物件にも稀に乾式間仕切壁を見かけることがありますが、その頃の性能は著しく低いのです。遮音性能はTLと呼ばれる数値で示されますが、現在マンションで使われている乾式間仕切壁はD-50からD-55ぐらいです。しかし築30年以上のもは、D-40〜D-45ぐらいしかありませんでした。遮音をするどころか音を増幅させているものもあり、騒音問題を引き起こす元凶になったケースもあります。そのため住宅の専門家を自称する人の中にも「乾式間仕切壁は遮音性が悪い」と言う人も少なくありません。これは乾式間仕切壁の見た目と過去の話で、現在も乾式間仕切壁は遮音性が悪いと思い込んでいるのです。建築の知識に明るい人なら、このような安易な話はしないでしょう。

乾式間仕切壁のメリット

乾式間仕切壁には、いくつものメリットがあります。それを大まかに言うと、施工精度と軽量化になるでしょう。

①施工精度が高くて均一

コンクリートの壁は鉄筋を組んで、その周辺に型枠を組み、コンクリートを流し込んで作ります。そのため鉄筋工、型枠大工、土工など多くの職種が天候に左右される中で作業をしています。鉄筋の精度、型枠の精度、コンクリートの打ち方でコンクリート壁の精度が大きく左右されるのです。コンクリートの打ち方が悪くてできるジャンカ(豆板)、コールドジョイント(打ち継ぎ)ができたりすると、遮音性は著しく低下します。

※ジャンカ

一方、乾式間仕切壁は工場で施工するので、天候に左右されずに製作されます。施工管理も工場で管理されるため、現場で複数の業種が施工するのと違って高い施工精度を保つことができるのです。コンクリート壁の施工で問題になるようなジャンカやコールドジョイントもありません。検査で高い遮音性を示した壁と同じものを製作し、マンションに取り付けることが可能なのです。

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②軽量化ができる

コンクリートの壁に比べて、乾式間仕切壁はかなり軽量にできています。そのため建物の自重を減らすことが可能になります。自重を減らすことができれば梁や柱を小さくすることが可能ですし、杭を小さくすることが可能になります。

なぜタワーマンションで使われるのか

タワーマンションのような超高層になると、建物自体の自重がかなり大きくなります。そのため梁や柱、杭を大きくしなくてはなりません。そこで乾式間仕切壁を壁を使うと、自重を減らすことができるのです。

では反対に、なぜ一般のマンションではコンクリート壁を使うのかと言うと、建物の形状に理由があります。下図のような横長のマンションでは、地震の際に縦方向に大きく揺れやすく横方向にはあまり揺れません。縦方向には柱が2本しかないのに対し、横方向には柱が6本もあるので横方向の揺れには強いのです。

そのため赤い部分の耐力壁は、縦方向の揺れに逆らうようにしています。こうして地震の時の揺れを小さくしているのです。揺れに逆らうのは頑丈な構造体でなければならないので、こういったマンションの壁は鉄筋コンクリートで作られています。それではタワーマンションはどうかというと、ほとんどタワーマンションが下図のように正方形に近い形になっています。

正方形に近い形状ということは縦にも横にも揺れやすくなり、縦方向や横方向に配置されるコンクリートの壁で揺れを抑えるのが難しくなります。そこでタワーマンションでは柱や梁で揺れを抑えるようになっているので、乾式間仕切壁が使われているのです。

既製品ではない乾式間仕切壁もある

吉野石膏などの既製品だけではなく、現場で作る乾式間仕切壁もあります。最近のマンションで見ることはほとんどないですが、古い建物ではちょくちょく見かけます。これらは既製品と違って遮音試験を受けていないため、どれくらいの遮音性があるかは未知数です。「遮音性を考えてボードを二重張りにしています」といった説明がありますが、設計士や施工する人の経験で施工されており、現場の職人の技術に施工精度が大きく左右されます。さらに遮音試験をしていないので、何dBの音をカットできるのかはわかりません。つまり遮音性は不明なのです。

下図の①と②は、乾式間仕切壁を平面に切った図です。2つは内部の軽量鉄骨の配置が違います。①は軽量鉄骨が真っ直ぐ並んでいて、②は千鳥と呼ばれる段違いに並んでいます。遮音性の優れているのはどちらだと思いますか?

遮音性に優れているのは②になります。①は遮音どころか音を増幅させる可能性もあると言われています。しかし現場で作る乾式壁の大半は①になります。また中に入れる遮音材の種類によっても、遮音性能は変わってきます。現場で制作する乾式間仕切壁は、遮音性にはあまり期待しない方が良いでしょう。

まとめ

乾式間仕切壁は遮音性が悪いと言われがちですが、それは見た目の印象で語っているか、古い乾式壁の知識で言っている場合がほとんどです。また既製品ではなく、現場施工の乾式壁には遮音性を期待できないことが多いので、そのことを言っているのかもしれません。しかしタワーマンションなどで使われる乾式壁は、既製品なのでそのようなことは当てはまりません。乾式間仕切壁を使っているから遮音性が悪いというのは、全くの誤解なのです。またコストダウンのために乾式間仕切壁を使っていると言う人もいますが、コストは現場によって微妙です。安くなることもあれば、高くつくこともあります。こういった話には信憑性が低いので、真に受けないようにした方が良いですよ。

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