修繕工事の見積書チェック /どこかおかしい見積書

マンションの修繕工事について、見積書をチェックして欲しいという依頼がちょくちょくあります。これはなかなか難しい作業で、一概に高いか安いか言うのは難しいのですが、中には「え!?」と声をあげたくなるような高額の見積書もあります。今回はマンションの日常的な修繕工事の見積書について、書いてみたいと思います。

修繕工事の見積書

マンション管理組合が修繕工事を依頼する場合、管理会社に業者を紹介してもらうことがほとんどだと思います。そのため修繕業者と管理会社の両方の経費が乗った金額が管理組合に提示されます。この経費とは何かは以下の記事にも書きましたので参考にしてください。

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両方の経費が乗るため、どうしても割高に感じることが多くあります。しかし管理会社も業者を選定して調査を依頼しますし、実際の修繕工事の際には管理人が立ち合ったりすることもあるので経費はどうしても必要になります。しかし中には明らかに異常な金額のものが混じることもあり、それをチェックして欲しいという依頼が私の元に来るのです。

高いか安いかは一概に言えないことが多い

工事単価の平均額と言うのはありますが、相場がありません。業者の規模や考え方、工事の方法などで変わるからです。しかし「クロス工事の相場は・・・」とか「1人工の相場は○○円だから」といった言葉をよく聞きます。それはその人が働いている環境や付き合っている業者の相場であり、東京と北海道では全く違いますし同じ東京でも会社の規模や考え方によって金額は大きく変わってくるのです。この件については以下の記事でも書きました。

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こういった事情があるため、見積書を見るだけでは高いとか安いとか簡単に言えません。1人が1日働いて終わらせる仕事量を1人工と言いますが、クロス業社にしても1人工1万円台の業者から3万円以上の高級業者までいるのです。そのため見積書の数字を見ただけでは、簡単に判断できないのです。そのため極端に高い場合は業者に質問して、どのような内容なのかを確認するしかないのです。

外構のマンホールと縁石の補修工事

あるマンションから依頼された修繕工事の見積書を見てみたいと思います。この修繕工事は、外構のマンホールや縁石のガタつきの補修をする工事です。大規模物件のため工事範囲も広く、そのため見積書の合計金額も100万円を超える高額なものになっています。都内の物件で管理会社も有名な会社ですが、正直言って見積書の金額が高すぎると感じた例です。

①作業区画の養生(カラーコーン・表示板)80,000円

養生とは工事をする際に周囲が破損したり汚れたりしないようにするため、シートなどで保護することを言います。この見積書では工事箇所が住民用の歩道のため、カラーコーンを置いて通行規制することも養生として記載されています。10ヶ所を養生するのですが、カラーコーンを設置して「工事中」の表示板を掲載し、歩道の一部をシートで覆う工事になっています。その費用が8万円になっているのです。材料費は含まれず、手間賃だけで8万円というのがポイントです。

最初に10ヶ所全てにカラーコーンを設置するとして、どれだけの時間がかかるでしょうか。図面で工事範囲を見ると、1人で行っても30分ぐらいあればできそうです。「工事中」の表示板の設置には時間がほとんどかかりません。マンホールを外して清掃したりパッキンを交換する程度の作業の養生なので、広範囲には養生する必要はありません。1人で全て行っても1時間から1.5時間程度の作業で8万円は高いと思いました。何人でどのくらい時間が掛かると考えているのか、業者に質問することにしました。

②一般養生資材(通路養生含む)95,000円

上記の養生の材料費が95,000円になっています。これには首を傾げてしまいました。カラーコーンは業者が持っているものを使うでしょう。購入するにしても安いもので数百円、カラーコーンに重石がついているもので2000円から3000円ぐらいです。まさかこの工事のために何十個も買い揃えるとは思えません。

通路養生に何を使うかが書かれていませんが、マンホールの清掃とパッキン交換にベニアなどの養生材が必要とも思えません。ブルーシートかマスカーと呼ばれる養生材を使うと思われますが、どちらも数百円で購入できるものです。養生材に何を使うか業者に質問することにしました。

③マンホールのガタつき補修 192,000円

作業内容はマンホールの取り外し、枠周り清掃、がたつきの調整(ゴミ清掃、パッキン等の差し込み)を6ヶ所で行うと書いてありました。1ヶ所あたり32,000円で、6ヶ所で192,000円となっていました。32,000円といえば作業員1人が1日かけて行う作業の単価です。マンホールを外して清掃するだけで、この金額は流石に高額だと思いました。

マンホールの写真も添付されていましたが、普通のサイズのマンホールでしたし、枠の周囲に泥や落ち葉などがこびり付いている様子が写っていました。これならマンホールの蓋の取り外しと戻す際に2人必要だとしても、それ以外の作業は1人でできますし、6ヶ所やっても1日はかからないでしょう。それが192,000円というのは、ちょっと納得できませんでした。

管理会社によって経費が異なる場合も

管理会社の規模によって、支店経費や本社経費などが加わるので経費の額が変わるのは、上記にリンクした記事でも書きましたが、それ以外にも経費が変わることがあります。実名を挙げるわけにはいきませんが、管理費を安くする代わりに高額な修繕費を請求する管理会社があります。私も何度か見積書をチェックしたことがありますが、笑えない額の見積書が出てきていて、ネットで探した適当な業者でもこんな額の見積書は作らないだろうと思える額でした。

まとめ

修繕工事の見積書については、簡単に修繕費が高いとか安いとは言えません。それは地域性や管理会社の規模、工事を請ける会社の考え方によって金額が大きく変わるからです。相場と言えるものはなく、安易に相場という言葉を使うのは危険だと思っています。見積書を見るには実際に何人で何時間かけて、どんな作業をするかイメージできなければ難しいので、工事に詳しくない人には判断が難しいと思います。私も明らかに変だと思っても、まずは業者に質問することから始めています。ですから見積書を見ただけで高いとか安いと断言する人は、警戒した方が良いと思います。

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