大規模修繕で管理組合が勘違いしやすいポイント4選

マンションの大規模修繕は管理組合にとっても大イベントで、これまで貯めてきた大事な修繕積立金を大きく使う場でもあります。また時間がかかる面倒なイベントでもあり、理事会や修繕委員の方の労力も大変なものになります。そんな大規模修繕で誤解されているポイントを4つまとめてみました。今回は、大規模修繕で管理組合が勘違いしやすいポイント4選です。

①大規模修繕は12年ごとに行わなければならない

多くのマンションでは、大規模修繕は12年おきに行われています。築10年目ぐらいに管理会社から話が出始め、12年目を目安に行うのです。以前は10年おきにやっていたのですが、2000年頃から12年周期になりました。なぜ12年ごとに行うかというと、国土交通省の長期修繕計画ガイドラインに記載されているからです。

①-1大規模修繕計画ガイドラインの項目

「5 計画期間の設定」という項目の中に「また、外壁の塗装や屋上防水などを行う大規模修繕工事の周期が12年程度ですので、・・・」と記載されるなど、何度も12年周期で行うことが書かれています。ここに以前は10年周期で書かれていたので大規模修繕は10年周期で行われていました。現在は12年周期と書かれているので12年で行うのが当たり前のように言われています。ここに記載されているのを良いことに「大規模修繕は12年おきにやらなければならない決まりになっています」と言う人もいましたが、そんなことはありません。これは国土交通省が掲げている一例に過ぎないのです。

①-2分譲マンション以外の大規模修繕工事

管理の仕方や責任が変わってくるので一概には比較できませんが、賃貸マンションなどは20年くらい大規模修繕をしないことがよくあります。部分補修を行うことがあっても、大規模修繕はあちこち修理が必要になって、まとめて行なった方が安いと判断できたら行うのです。分譲マンションより賃貸マンションの方が耐久性が高いというわけではありません。管理会社が12年を目処に勧めてくるので、それに従って12年周期で行われているだけなのです。つまり建物の劣化とはあまり関係なく、大規模修繕が行われていることになります。

そのため最近は、18年周期での大規模修繕を提案するケースも出てきました。12年というのは絶対的なものではありませんし、劣化状況はマンションによって異なります。必要な時に必要な工事を行えば良いだけで、それを何年ごとかにやるべきものとまとめるのは意味がないことなのです。

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②大規模修繕は管理会社にお願いするもの

管理会社の提案によって始まることが多いですが、大規模修繕工事を管理会社に発注しなくてはならないというわけではありません。管理会社は工事を提案する業者の1つに過ぎず、管理組合は複数の会社の中から最良の会社を選べば良いのです。しかし普段から管理会社に任せっぱなしにしておくと、大規模修繕工事も管理会社に任せっぱなしにしがちです。

工事費が1億円を超えることも珍しくない大規模修繕工事は、必ず相見積もりをとって他社と比較する必要があります。そしてどのような工事をどのように行うのか、その結果として価格はいくらになるのかを見なくてはいけません。多くの場合は設計監理方式なので、工事の仕様は決まっています。そのため金額だけを見て判断することが多いようですが、見積書の中身もしっかりチェックしておく必要があります。

ともかく、大規模修繕はどこの業者に頼んでも問題はありません。中には他の業者に依頼するなら、その後の責任が持てないというような言い方をする管理会社もあるようです。そんなことは関係なく、管理組合がどの業者に依頼しようが自由です。他の業者に依頼してはいけないと言うような管理会社は、むしろ怪しむぐらいの心構えがあって良いのです。

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③長期修繕計画の内容全てを行わなければならない

長期修繕計画には、さまざまな修繕項目があります。しかしその項目の全てを大規模修繕の際に行う必要はないのです。しかし多くの場合、大規模修繕時にその全てを行ってしまいます。屋上の防水、外廊下の長尺シート張り替え、側溝のウレタン塗布、鉄部の塗装など、そこに記載されている項目の全てを工事するのです。しかしそんな必要は全くありません。修繕は傷んでいる部分だけを工事すれば良いのです。

そのため事前に建物診断を行って建物の傷んでいる箇所とそうでない箇所を見分けるのですが、現実では建物診断を行っていながら、その結果に関係なく長期修繕計画に書いてある内容全てを工事することが多くあります。傷んでいるか古くなっているかに関係なく全部を工事するため、無駄な工事も行われてしまいます。これは完全に無駄な出費です。工事をする側からすると、工事項目が多ければ多いほど工事価格が上がるので、多くの工事を提案してきます。また工事直後に何かあるとクレームにもなりかねないので、少しでも傷んでいる場所は工事を提案する傾向にあります。そのため急いで修理をする必要がない場所でも工事をすることになってしまい、余計なコストがかかってしまいます。

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④建物診断・劣化診断は絶対に必要

先に書いたように建物診断を行なって傷んでいる箇所とそうでない箇所を見分けるのですが、現実に行われている建物診断は多くの問題を含んでいます。必要のない検査を行い、その結果が大規模修繕工事に反映されていないのです。そのため無駄な診断に費用を払っているケースが散見されます。

建物診断・劣化診断で実施される項目の中で、各部の目視検査やタイルの打診検査は有効な検査です。また最近はアンケートを行うケースも多く、これも建物の劣化を知るうえで有効な手法になります。その一方で、建物の中性化試験を行うのは意味がない場合が多いと言えます。コンクリートはアルカリ性の性質を持っていて、酸化しやすい鉄筋を包み込むことで内部の鉄筋をサビから守っています。しかしコンクリートが中性化すると内部の鉄筋がサビてしまい、サビた鉄筋が膨張してコンクリートを破壊します。これは爆裂と呼ばれる現象で、建物の劣化を急速に進める現象です。そのため中性化試験があちこちで行われています。

④-1コンクリート中性化の原因

空気中には酸素や窒素、二酸化炭素が含まれています。この二酸化炭素がコンクリートに触れると、コンクリートに含まれる水酸化カルシウムと化学反応を起こして、炭酸カルシウムと水に変わります。この炭酸カルシウムが中性のため、コンクリートが表面から徐々に中性化していくのです。近年では空気中の二酸化炭素濃度が高くなってあり、中性化の進行に影響を与えると言う人もいます。また酸性雨が問題視された際には、酸性雨がコンクリートの中性化を促進させるといった意見もありました。

この中性化からコンクリートを守るために、コンクリート表面に塗装をしたりタイルを貼ったりしているのです。コンクリート打ちっぱなしの仕上げの場合は、コンクリート表面に撥水剤を塗って保護をしています。

④-2コンクリート中性化の速度

コンクリート表面から鉄筋までの深さは「かぶり」と呼ばれ、部位にもよりますが3cm程度と思ってください。そして中性化はコンクリートの表面から概ね20年で1cm進むと言われています。つまり60年で中性化が鉄筋に届くのです。そのため鉄筋のかぶり厚はマンションの耐久性に大きな影響を与えますし、中性化の心配は築60年近くになってからでも良いと言えます。しかし建物診断・劣化診断では、築10年を過ぎてから中性化試験を行うケースも多く、あまり有用とは言えない実態になっています。

④-3どの部位で中性化試験を行うか

中性化試験を行うには、コア抜きと呼ばれるコンクリートに円形の穴を開けることから始まります。そのためマンションの仕上げを傷つけることになってしまいます。外壁で行うとタイルや吹付面に補修跡ができてしまうため、補修跡が目立たない場所でコア抜きを行うことがほとんどです。

そうなると地下駐車場の打ちっ放しのコンクリート面や、外廊下のパイプスペースなどでコア抜きをすることになります。中には外溝の擁壁でコア抜きをしたいたケースもありました。確かに中性化の主な原因は空気中の二酸化炭素なので、どこで抜いても変わらないような気もします。その一方で、雨に当たることもない壁の中性化を調べても同じ結果なのか?という疑問もあります。外溝の擁壁に至っては、コンクリートの強度が全く違うので試験をする意味がわかりません。

中性化の速度は二酸化炭素だけでなく、コンクリートの通気性,含水率,強度,セメントの種類,配合,施工条件等のほか,温度,湿度に影響を受けることがわかっています。あまりに条件が異なる場所での検査は、さほど意味がないと思うのですがどうなのでしょうか。

まとめ

ここに挙げた4つは、やってはいけないというものではありません。絶対にやらなければならないものではないということです。大規模修繕工事を先延ばししても建物の状態がよければ構いませんし、管理会社に工事を任せても構いません。劣化診断を行って、長期修繕計画の項目全てを大規模修繕工事で実施しても構わないのです。ただ限られた予算の中で行うには、余計な費用をかけないことが重要になってきます。そのためやらなくて良いことまで、絶対にやらなくてはならないと誤解したままではいけないと思います。

管理会社によっては、ここに書いたようなことを言い出すと嫌がるかもしれません。しかし大規模修繕の話し合いが始まるなら、これらのことも頭に置いて進めることをお勧めします。修繕積立金は限られているので、有効な使い方を管理組合で議論してください。

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